練り物などの具材には塩分が含まれているので、市販のおでんつゆで煮ると塩分過剰になるうえ、含まれる化学調味料はさまざまな疾患の一因になります。甘酒おでんには、大きく二つのメリットがあります。①甘酒の健康効果が得られる、②塩分控えめでも味が決まるという点です。【解説】島袋史(ゆいクリニック院長)

解説者のプロフィール

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島袋史(しまぶくろ・ふみ)

ゆいクリニック院長。日本産婦人科学会専門医、日本ホメオパシー医学会認定医。1995年、琉球大学医学部卒業。浦添総合病院産婦人科勤務を経て、2011年より現職。産婦人科医として多くの女性の出産・育児を支援するほか、女性と子供の健康サポートのため、さまざまな診療を行っている。また、小麦や砂糖、食品添加物などをいっさい使わない食事をクリニック内で提供するなど、食事療法の重要性も説いている。

クリニックでは甘酒を砂糖のかわりに活用

寒い日に温かい鍋を囲むと、それだけで心がほっとします。鍋物は、さまざまな具材を一度にとれるのが、栄養学的に見てもいいところです。

最近は各種の「鍋の素(スープ)」が市販されており、多彩な鍋料理を楽しむことができます。おでんにしても同様です。つゆとおでん種がセットになった商品を、活用するご家庭もあるでしょう。

ただ、市販品で気になるのはやはり塩分と化学調味料です。練り物などの具材には塩分が含まれているので、市販のおでんつゆで煮ると塩分過剰になるうえ、含まれる化学調味料はさまざまな疾患の一因になります。

当院は産婦人科と小児科が専門ですが、食事療法に力を入れており、妊婦さんはもちろん、すべての患者さんに食の重要性をお伝えしています。せっかく食べるなら、塩分控えめで体に優しく、しかもおいしいおでんを、手作りしたいもの。

そこで私が提案するのが、「甘酒おでん」です(作り方は下項を参照)。「甘酒がおでんの旨みを引き出し、おいしい」と人気を得ています。

米こうじから作られた甘酒は「飲む点滴」といわれるほど栄養満点な発酵食品。クリニックでは、玄米から手作りした甘酒を提供し、料理にも、砂糖のかわりに使っています。

甘酒は、腸内環境を整えるので、便秘解消はもちろん、アレルギー性の疾患の改善や、美肌づくりに役立ちます。また、血液中の中性脂肪を減らしたり、血圧の上昇を抑制したりといった作用も認められています。

私自身も、甘酒の健康効果を実感する一人です。数年前から乳製品や添加物を避け、砂糖のかわりに甘酒を使うようにしたところ、血糖値が高くなったときに正常値まで下げる機能(耐糖能)が改善したのです。

耐糖能を調べる「75gブドウ糖負荷試験(空腹時に75gのブドウ糖液を飲み血糖値や血中インスリン濃度を調べる検査)」で、以前は230mg/dlもあった食後1時間値が、甘酒をとるようになってから140mg/dlまで改善しました(基準値は180mg/dl未満)。悪化すれば糖尿病に突き進むリスクを、回避できたわけです。

また、長年悩まされた頭痛も解消。体が明らかに疲れにくくなり、イライラが減るなど、精神的にも落ち着きました。

だしの風味をきかせて甘酒を加えるのがコツ

甘酒おでんには、大きく二つのメリットがあります。

甘酒の健康効果が得られる
塩分控えめでも味が決まる

という点です。

①の健康効果については、先に述べたような作用が期待できますが、気をつけたいのは、甘酒を入れるタイミングです。

甘酒の発酵に最適な温度は60度前後で、高温の状態が続くと、菌が死んでしまいます。そのため、腸への作用を期待するなら、熱々のおでんに入れるのはNG。ある程度冷めてから加えるのがお勧めです。

また、高温による調理は、たんぱく質と糖が結びつくことでできるAGE(終末糖化産物)の産生を促進させます。AGEは老化の元凶なので、そうした面からも注意が必要です。

②の調味については、下項の「基本の甘酒おでん」でも、私のお勧めの作り方でも、コンブやカツオ節、干しシイタケなどのだしの風味をきかせるのがポイント。しょうゆの使用量が少なくて済みます。

そこへ甘酒を入れると、発酵食品独特のコクや旨みが加わり、酒やみりんを入れて調味しなくても、簡単に味が決まるのです。肉が好きな人は鶏手羽肉などを入れると、濃厚な味わいになるので、より減塩に役立つでしょう。

私の甘酒おでんは、具材にもこだわりがあります。干しシイタケは、ビタミンDの多い「天日干し」を選ぶのがカギ。戻し汁もいっしょに、おでんに入れてください。また、豆腐は、カルシウムをはじめ栄養がギュッと凝縮された、高野豆腐(凍り豆腐)がお勧めです。

おでんの具といえば、魚肉の練り物が欠かせません。ただ、市販品には添加物が多いのが難点です。練り物を入れる場合は極力添加物の少ない、質のよい物を選びましょう。

体を温め、腸の機能を高める甘酒おでんを、皆さんの健康維持に役立ててください。

基本の甘酒おでんの作り方

画像1: 基本の甘酒おでんの作り方

【材料】(2人分)
甘酒…50~100ml(好みで調整)
だし…500ml
しょうゆ…大さじ1
好みのおでん種…適量
※大根やコンニャク、卵などはゆでて、下ごしらえしておく。

画像: 甘酒は手作りでも市販品でも、米粒があってもなくてもOK!

甘酒は手作りでも市販品でも、米粒があってもなくてもOK!

【作り方】
だしにしょうゆを加え、ひと煮立ちさせ、おでんのつゆを作る。

画像2: 基本の甘酒おでんの作り方

①に好みのおでん種を入れ、弱火で20分ほど煮る。

画像3: 基本の甘酒おでんの作り方

火を止めて甘酒を回しかけ、味をなじませたら出来上がり。

画像: 器に取り分けてから甘酒を入れても!

器に取り分けてから甘酒を入れても!

画像: コンビニおでんにも甘酒をイン!

コンビニおでんにも甘酒をイン!

島袋先生流 甘酒おでんの作り方

画像: 島袋先生流 甘酒おでんの作り方

【材料】(4人分)
甘酒…300ml
水…1L
しょうゆ…70ml(好みで減らしてもよい)
結びコンブ、干しシイタケ、干しエリンギ、ニンジン、高野豆腐、パパイヤ
※干しエリンギはなくても可。パパイヤはトウガンや大根で代用可。
※鶏手羽肉、ゆで卵、コンニャクなどを入れるのもお勧め。

【作り方】
水としょうゆ、おでん種を鍋に入れて火にかける。
沸騰したら火を止め、鍋を毛布などでくるみ、数時間保温する。
※高温で調理しないよう、あれば保温調理鍋を使う。保温性の高い圧力鍋で作り、ふたをして、圧力をかけずに放置してもよい。
具材がやわらかくなったら、軽く温め直し、甘酒を入れていただく。

おいしさいろいろ!ご当地おでん

ひと口におでんといっても、土地それぞれの味があります。今回は、つゆや具材の特徴が際立つ三つの「ご当地おでん」を紹介します!

画像1: おいしさいろいろ!ご当地おでん

ご当地おでんにも甘酒を加えるだけで腸が喜ぶ発酵鍋に大変身!

画像2: おいしさいろいろ!ご当地おでん

静岡黒おでん
煮詰めただしと黒はんぺん。カツオ節と青ノリの「だし粉」をトッピング!

画像3: おいしさいろいろ!ご当地おでん

名古屋みそおでん
赤い八丁みそで煮込むおでんは「どて焼き」とも呼ばれ、 豚モツが入ることも。

画像4: おいしさいろいろ!ご当地おでん

関西風おでん
関西なのに別名「関東炊き」?! 薄口しょうゆで淡い色。牛スジやタコ串が定番!

画像: この記事は『壮快』2021年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年2月号に掲載されています。

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