屈筋に沿ってシールをはると、日常動作の振動で皮膚の表面がわずかにずれます。その弱い刺激が屈筋に伝わることで、屈筋がゆるみ、伸筋の負担が軽くなります。また、筋肉のポンプ機能で周辺の血液やリンパの流れがよくなり、痛みやこり、冷え、むくみなどの不調の改善に役立ちます。【解説】北裕二(パーソナルトレーナー)

解説者のプロフィール

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北裕二(きた・ゆうじ)

ポイントテーピング考案者。大手フィットネスクラブでチーフトレーナー、店舗責任者、スーパーバイザーなどを歴任。運動指導だけではよくならない事例を多く見たことで、さまざまな手法を学び、独自メソッド「からだコネクト」を考案。プライベートトレーニングサロンki-ta(キータ)で、パーソナルトレーニング・加圧トレーニングをはじめ、古今東西の整体を組み合わせた独自の施術で、トレーニング初心者からプロスポーツ選手などのトップアスリートまで、幅広くサポートしている。全国各地での講座・講演も積極的に行っている。
▼プライベートトレーニングサロン ki-ta(公式サイト)

体の数ヵ所に小さなシールをはるだけ

「体の痛みやこりがつらい」「背すじが曲がっている」「体のゆがみやむくみがある」

そんな方はぜひ「耳の裏シール」(正式には「ポイントテーピング」)をお試しください。

耳の裏シールは、耳の裏をはじめとする体の数ヵ所に、2cm角程度の小さなシールをはる健康法です。たったこれだけで、先に述べた不調が改善し、小顔やウエスト引き締めなどの美容効果まで期待できるのです。

では、耳の裏シールがなぜこれほど多彩な効果を生み出すのかについてご説明しましょう。

体は筋肉によって支えられています。関節では、曲げるときに縮む筋肉「屈筋」と、伸ばすときに縮む筋肉「伸筋」の2種類がセットで働いています。

筋肉は力を入れると収縮し、ゆるめると膨らみます。これまでは、姿勢を維持する際には、脊柱起立筋などの背中側の伸筋に力が入って縮み、背中を引っ張って伸ばしていると考えられていましたが、実際には、胸やおなかにある屈筋がゆるんで膨らみ、突っかい棒のように背骨を支えているのです。

しかし屈筋は、ストレスや生活習慣などの影響によって硬く縮みやすい筋肉です。屈筋が常に緊張して縮んでいると、ゆるめたいときにゆるみ切れず、膨らみません。

そうすると、伸筋だけで姿勢を維持しなければならなくなります。その結果、腰や背中に負担がかかり、こりや痛みが起こったり、背すじが曲がったりしてしまうのです。

屈筋は、耳周辺→首の前側→胸→胴の深部→太ももの裏→ふくらはぎ→足の裏の母趾球というラインを構成しています。

全身の屈筋のライン

画像: 耳の周辺から始まり、上半身は前側、下半身は後ろ側をつないでいる

耳の周辺から始まり、上半身は前側、下半身は後ろ側をつないでいる

そのラインの起点となる耳周辺の屈筋は、無意識の食いしばりなどのため、特に収縮して硬くなりがちです。

屈筋のラインは、折り畳み提灯のように連動しています。ですから、耳周辺の屈筋が収縮すると、上から提灯を押さえてつぶしたときのように、他の屈筋も上から縮んでしまうのです。

屈筋の緊張チェック法
①~③が当てはまらない場合、耳周辺の屈筋が緊張している可能性が高くなります。耳の裏シールで、緊張をゆるめましょう!

耳たぶの後ろ側にあるくぼみを押したとき、痛みやこり、腫れぼったさはないか

画像1: 体の数ヵ所に小さなシールをはるだけ

縦に指3本分が入るほど、口を開けられるか

画像2: 体の数ヵ所に小さなシールをはるだけ

普通に口を閉じているとき、舌が上あごにくっついているか

画像3: 体の数ヵ所に小さなシールをはるだけ

必須ポイントは耳の裏と足の裏

その状態を手軽に改善できるのが、耳の裏シールです。

筋肉は、強い刺激を与えると、かえって緊張して硬くなってしまいます。筋肉をゆるめるためには、ごく弱い力で刺激してやるのが一番です。

耳の裏シールでは、屈筋に沿ってシールをはります。すると日常動作の振動で、皮膚の表面がわずかにずれます。その弱い刺激が屈筋に伝わることで、屈筋はゆるみます。屈筋がゆるむと、関節では膨らんだ屈筋が突っかい棒の役目を果たすため、伸筋の負担が軽くなります。

また、常に縮んでいた屈筋がゆるめば、きちんと膨らむようになるため、筋肉のポンプ機能で周辺の血液やリンパ(体内の余分な水分や老廃物、毒素などを運び出す体液)の流れがよくなります。これが、痛みやこり、冷え、むくみなどの不調の改善に役立ちます。

また、おなかの深部にある大腰筋という屈筋が縮んで周辺が冷えると、頻尿が起こりやすくなると言われています。耳の裏シールで頻尿が改善するのは、この大腰筋の緊張が取れるためだと考えられます。

耳の裏シールでは、本来は屈筋ラインの始点と終点だけでなく、途中にも数ヵ所シールをはりますが、必須ポイントは、耳の裏足の裏の母趾球です。

屈筋群の始点である耳の裏と、終点である母趾球に微弱な刺激を与えることで、屈筋ライン全体がゆるみます。ですから、まずはこの2ヵ所にシールをはってみてください。

使用するシールは、100円均一ショップやドラッグストアなどで購入できる、磁気治療粒やゲルマニウム粒の「はり替え用シール」が、手軽でお勧めです。

「耳の裏シール」基本のやり方

【ポイント】
シールは最低1日1回はり替える。
かゆみ、かぶれ、発疹など、肌に異常が出た場合は、すぐにはがして使用を中止する。傷や炎症がある場所にははらないこと。
一番最初は、体の片側だけにシールをはってみて、はった側とはらない側の変化を自分で実感してみるのがお勧め。
体のゆがみが解消し、体が整ってきたら、中1日、中2日とシールをはらない日を増やしていくとよい。

【用意するもの】
2cm角程度の大きさの肌用シール 4枚

画像: 磁気治療粒やゲルマニウム粒の「はり替え用シール」を使用するのが、手軽でお勧め。100円均一ショップでも購入できる。「貼り替え用シール」などの商品名で売られている。

磁気治療粒やゲルマニウム粒の「はり替え用シール」を使用するのが、手軽でお勧め。100円均一ショップでも購入できる。「貼り替え用シール」などの商品名で売られている。

画像: キネシオロジーテープや布ばんそうこうなど、肌用テープを2cm角に切ってはるのでもOK!

キネシオロジーテープや布ばんそうこうなど、肌用テープを2cm角に切ってはるのでもOK!

基本のはり方

【はる位置】
両方の耳の裏と、足の裏の母趾球にそれぞれシールをはる

画像1: 基本のはり方

耳たぶの後ろ側にあるくぼみの部分

画像2: 基本のはり方

足の裏の親指の付け根の膨らみ(母趾球)の中央

より効果を高めるお勧めのマッサージ

基本の場所にシールをはった上で、以下のポイントをマッサージすると、より効果が高まります。行う回数や時間に決まりはないので、気がついたときにこまめに行いましょう。

【ポイント1】
手を自然に下ろしたときの、ひじの高さの背骨部分。ちょうど胸椎12番の辺り。ここを刺激すると、上半身の屈筋がゆるむだけでなく、横隔膜の働きがよくなり、呼吸がらくになる。

画像1: より効果を高めるお勧めのマッサージ

【刺激のしかた】
手の側面で左右にこするようにして刺激する。服の上からでOK。

画像2: より効果を高めるお勧めのマッサージ

【ポイント2】
お尻と足の境目辺り。ここを刺激すると、腰周囲や下半身の屈筋がよりゆるみやすくなる。

画像3: より効果を高めるお勧めのマッサージ

【刺激のしかた】
手の側面で左右にこするようにして刺激する。服の上からでOK。

画像4: より効果を高めるお勧めのマッサージ

もっと効果を高めたい人にお勧めのシールのはり方

基本の場所に加え、以下の7ヵ所にもシールをはると、より効率的に屈筋がゆるみ、効果を実感しやすくなります。効果を高めたい場合や、基本の場所だけでは効果を感じにくい場合は、あわせてお試しください。

画像: もっと効果を高めたい人にお勧めのシールのはり方

【はる位置】
鎖骨の下
鎖骨の下側を内から外に向けて指でたどったとき、肩の近くで指が止まるくぼみ

胸骨
握りこぶしで胸骨をこすってみて、圧痛を一番強く感じるポイント

おなか
へそから45度斜め上に指2本分(約2~3cm)上がったポイント

足の裏
内くるぶしを足の裏に向かってたどり、かかとの膨らみとぶつかったところ

画像: この記事は『安心』2021年1月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年1月号に掲載されています。

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