怒りの感情と上手に付き合うテクニックを2つご紹介します。怒りを感じてから6秒程度経てば、再度理性が働き出すことから考えられた方法「6秒ルール」、そして、怒りのパターンを客観的に認識するために行う「アンガーログ」です。【解説】安藤俊介(日本アンガーマネジメント協会代表理事)

解説者のプロフィール

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安藤俊介(あんどう・しゅんすけ)

2003年に米国のナショナルアンガーマネジメント協会にてアンガーマネジメントを学び、日本に導入。同協会で1500名以上在籍するアンガーマネジメントファシリテーターの中でも15名しか選ばれていない最高ランクの「トレーニングプロフェッショナル」に、米国人以外で唯一選出されている国内の第一人者。企業、官公庁、教育委員会、医療機関などで数多くの講演、研修などを行う。厚生労働省「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」の委員も務める。『あなたの怒りは武器になる』(河出書房新社)、『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(飛鳥新社)など著書多数。

怒りに任せた反射的な言動はトラブルの元

怒りの衝動に突き動かされた後に、「失敗した」「やり過ぎた」と後悔した経験は、誰しもあるのではないでしょうか。

そんなときに役立つ「怒りの感情と上手に付き合う」テクニックを二つ、ご紹介します。

① 6秒ルール

カーッと頭に血が上ると、私たちは後先考えられなくなり、売り言葉に買い言葉で反射的にひどく罵倒したり、暴力的な行動を取ったりしがちです。

この反射による怒りの言動が、よい結果に結びつくことは、ほぼありません。

「6秒ルール」は、「怒りが湧いても、とにかく6秒待つ」というもの。ほとんどの人が怒りを感じてから6秒程度経てば、再度、理性が働き出すことから考えられた方法です。

とはいえ、感情に翻弄されているときに、6秒ですらじっと待つのは難しいこと。そこで、次に挙げる方法の中から、あらかじめ自分に合ったものを探しておき、「魔の6秒」を乗り切りましょう。

6まで数える

ゆっくりと1から6まで数えます。心の中で数えても、声に出しても構いません。

言葉で気持ちを落ち着かせる

「大丈夫、大丈夫」「このこともすぐ忘れる」など、自分の気持ちを落ち着かせる言葉を事前に考えておきましょう。ムカッとした気持ちが湧いたら、すぐ心の中か声に出して唱えます。

怒りの程度を数値化する

そのときの怒りがどの程度のものなのか、数値に置き替えて考えます。「ムッとする程度=1」「人生最大級の怒り=10」というように、怒りの強さを10段階で評価してみましょう。

その場から離れる

「考えがまとまらないから、いったんトイレに行く。続きはその後で」などと断って、その場を離れるのも、余計な摩擦を生まない有効な方法です。

怒りの記録をつけて対策を立てる

②アンガーログ(怒りの記録)をつける

人には「怒りのパターン」があります。それを客観的に認識すると、怒りをコントロールしやすくなります。

そのために行うのが、怒りの状況を記録する「アンガーログ」です。

怒りを感じたら、できるだけすぐその場で、手帳やスマホのメモ機能アプリなどに「日時」「怒りを覚えた出来事」を記入します。

可能であれば、先の「6秒ルール」で紹介した「怒りの程度を数値化する」で、評価した数値も追加しましょう。記録するときに、分析や反省をする必要はありません。

ある程度の期間、記録を続けたら、次の3点に注目して、自分が怒りを感じた状況を振り返りましょう。

時間帯、場所
反応した言葉、行動、出来事
「~こうするべき」「~する のが常識」という、自分の持っている期待や理想

例えば、相手の遅刻にイライラしやすい人は、「時間・約束は守るべき」という理想を持っていて、それが裏切られると強く怒りを覚えます。

それを踏まえて、自分の許容範囲(何分までなら待てるのか)を認識したり、それ以上待たされないようにする方法を考えたり、待たされてもいいように時間の余裕を持って動くなどの対策を立てたりしましょう。

そうした対策を取ることで、今後、不要な怒りを感じる場面を避けられる可能性が高くなります。

画像: 自分が何に腹を立てやすいのか、傾向がわかれば対策が立てられる

自分が何に腹を立てやすいのか、傾向がわかれば対策が立てられる

見方を変えれば、怒りは、相手に対して「今(次は)、こうしてほしい」というリクエストなのです。感情的に相手をやり込めて、一時的に自分がスッキリしたように感じても、根本のリクエストが通じていなければ意味がありません。

「上手に怒る」ことは、自分の人生を、より建設的にするために必要なスキルでもあります。

■イラスト/高橋陽子

画像: この記事は『安心』2021年1月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年1月号に掲載されています。

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