動きの悪い椎骨があると、負担が蓄積していき、椎間関節や仙腸関節がどんどんずれ、あるとき「突然の激痛」が起こってしまいます。腰椎のねじれは、「回旋筋」と「多裂筋」いう筋肉が硬くこわばっていることが多くの原因です。その筋肉をほぐすのに効果を発揮するのが「お尻たたき」です。【解説】白井天道(西住之江整体院院長)

解説者のプロフィール

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白井天道(しらい・てんどう)

西住之江整体院院長。YouTube再生回数600万回の超人気整体師。鍼灸師。自身も苦しんだ腰痛・座骨神経痛の経験から、脊柱管狭窄症専門の治療に特化。著書に『寝ながら1分! 脊柱管狭窄症を自分で治す本』(SBクリエイティブ)がある。2021年1月には脊柱管狭窄症のセルフケアの新刊を発売予定。

手術で治らない激痛が突然現れる

「少し歩くと、足に痛みやしびれが出て歩けなくなる。でも少し休めば、また歩ける」

これが、脊柱管狭窄症の代表的な症状で、「間欠性跛行」と呼ばれます。歩ける時間は、ケースによって異なりますが、多くは数分です。

少し休めば再び歩けることから、このような間欠性跛行の症状は、なんとかやり過ごしている人も多いものです。ところが、脊柱管狭窄症の患者さんの中には、こうした間欠性跛行の症状が何年か続いた後に、やり過ごすことのできない重度な症状に悪化してしまう方が多くおられます。

その症状とは、「朝起きたときや動き始めたとたんに、腰の激痛に襲われる」というものです。

この激痛は、ある日、ある朝、突然現れます。そして、そのまま立ち上がることすらままならなくなるのです。間欠性跛行とは違い、3分どころか10秒歩くのも難しく、苦痛も伴うため、お困りの方が大勢います。

さらに困るのが、この激痛は「脊柱管狭窄症の手術では治らない」ということです。

脊柱管狭窄症が悪化して、尿もれなどの膀胱障害、重い便秘などの直腸障害、下半身のマヒ、筋肉の萎縮といった症状が出ると、手術が検討されます。このような症状は、脊柱管の狭窄がさらにひどくなることが原因の症状なので、脊柱管を広げる手術で改善できます。

ところが、脊柱管狭窄症の方が突然襲われる激痛は、厳密に言うと脊柱管の狭窄そのものが原因でないことも多いのです。

実際に、脊柱管狭窄症の手術をしても痛みが治らないケースが多発しています。それにも関わらず、突然起こった激痛を治めるために手術を選択される方が多くいます。当然、そういった方々は、術後に痛みが改善することはありません。

では、この痛みは、何が原因で、どうすれば改善できるのでしょうか。

負担が蓄積して一気に激痛が出ることも

この脊柱管狭窄症と思わせる痛みは、「腰椎のねじれ」から起こっています。

腰椎とは、腰の部分の背骨のことです。腰椎に限らず、背骨はもともと生理的に「ねじれる」性質を持っています。

一つ一つの椎骨(背骨を構成している骨)の間が、わずかな可動域を持っていることで、腰をねじる動作を可能にしているのです。

ところが、その動きの中で、1~2ヵ所、動きの悪い椎骨があると、そこが「抵抗勢力」になり、日常、わずかでも腰をひねるたびに、その部分に大きな負担がかかります。

知らず知らずのうちに、その負担が蓄積していき、椎間関節(椎骨と椎骨が重なった関節)や仙腸関節(骨盤の仙骨と腸骨の間にある関節)がどんどんずれ、あるとき一気に爆発するかのように「突然の激痛」が起こってしまいます。

画像: 負担が蓄積して一気に激痛が出ることも

腰椎のねじれは、背骨のすぐわきにある「回旋筋」と「多裂筋」いう筋肉が硬くこわばっていることが多くの原因です。これが、腰椎の「抵抗勢力」を生みます。

脊柱管狭窄症があると、このような筋肉のこわばりや、それによる腰椎のねじれを引き起こしやすくなります。

その筋肉をほぐすのに、優れた効果を発揮するのが、私の考案した「お尻たたき」です(詳しいやり方は下項参照)。

回旋筋と多裂筋は、いわゆるインナーマッスルで、体の深いところにあります。ですから、普通の体操やストレッチでは、ほぐせません。

しかし、お尻たたきを行えば、効果的にほぐすことができます。

お尻たたきのやり方

まずは腰のねじれをチェック

あおむけに寝てひざを立て、両ひざと足先をくっつける。手のひらは上に向け、肩と同じ高さまで上げる。

画像1: お尻たたきのやり方

①の姿勢のまま、ひざを右に倒す。

画像2: お尻たたきのやり方

続いて、同じ姿勢のままでひざを左に倒す。

画像3: お尻たたきのやり方

右側に倒したときの痛みが大きければ、右ねじれ。
左側に倒したときの痛みが大きければ、左ねじれ。

右ねじれの場合

体の左側を床につけて横向きに寝る
左手を枕にして横向きに寝る。左足をほんの少し曲げて、その上に直角に曲げた右足を重ねてのせる。右のひざ頭内側を床につけ、甲を左ひざの裏に絡ませる。

画像: 右ねじれの場合

右手でお尻をたたく
右手の手のひらで「パンパン」と右のお尻をたたく。側面ではなく、背面からたたくこと。20回たたいたら、次は体の右側を下にしてお尻たたきを行う。朝と夜の1日2~3セット行う。

左ねじれの場合

左ねじれの人は右ねじれと左右反対の順序でお尻たたきを行う。

画像: 左ねじれの場合

その場で痛みやしびれが改善するケースもある

実際に、起床時や動き始め、寝返り時の激痛で悩んでいる人がお尻たたきを行うと、最も早い人ではその場で症状が改善し始め、3~5日くらいでかなりらくになります。

長くても2週間行えば、日常生活を支障なく送れる程度には改善します。

脊柱管狭窄症そのものにも、腰椎のねじれが影響しているため、お尻たたきで、同時に間欠性跛行がある程度改善できる人も少なくありません。

自分で簡単にできるので、皆さんもぜひお試しください。

画像: この記事は『安心』2021年1月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年1月号に掲載されています。

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