解説者のプロフィール

石原新菜(いしはら・にいな)
イシハラクリニック副院長。医師。帝京大学医学部卒業後、大学病院での勤務を経て、現在、自然医学の泰斗で医学博士の父、石原結實氏が院長を務めるイシハラクリニックで、漢方医学、自然療法、食事療法により、さまざまな病気の治療にあたっている。『女のキレイは30分で作れる』(マキノ出版)、『酢ショウガで体すっきり!ずっと健康!』(宝島社)など、ショウガや健康に関する著書、監修書多数。テレビやラジオへの登場も多い。
ショウガは漢方でも重宝される食材
ショウガは、漢方薬の約7割に配合されているほど、漢方で重用されている生薬(漢方薬の原材料となる、動植物や鉱物などの天然物)です。
その作用は、実に多彩。体を温める、血流を改善する、免疫力(病気に対する抵抗力)を高める、コレステロールや血圧、血糖値を下げる、アレルギーを改善する、胃を元気にする、めまいを抑えるなど、数え切れないくらいあります。
実は私も学生時代、ショウガで体質が改善した経験があります。当時は今よりずっと太っており、低体温で花粉症がひどく、絶不調でした。
ところが、ショウガをとるようになってからは、それらの不調が全て改善。以来、毎日いろいろな形で、ショウガをとるようにしています。
発酵させることでより効能がアップ
さて、そのショウガの新しい食べ方としてお勧めしたいのが、「発酵ショウガ」です。
これは、すりおろしたり、刻んだりしたショウガを、2週間瓶に詰めて発酵させたもの。発酵させることによって乳酸菌が増え、ショウガの健康効果が、さらに高まります。
発酵食品が健康によいのは、腸の善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌)を増やすからです。乳酸菌は胃酸で死んでしまい、腸まで届かないといわれていますが、発酵ショウガのような植物系の乳酸菌は胃酸に強く、腸まで届くことがわかっています。
ショウガに含まれる食物繊維も、腸内細菌のエサになって善玉菌を増やします。発酵ショウガは、ダブルの作用で善玉菌を増やすのです。
善玉菌が増えて、腸内環境がよくなれば、下痢や便秘が改善し、免疫力がアップします。
腸には、全身の7割の免疫細胞がいます。乳酸菌は免疫を増強する因子を分泌して、それらの免疫細胞を活性化します。
その結果、感染症やアレルギーをはじめ、さまざまな病気の予防に役立つのです。
また、ビフィズス菌が増えると、ビフィズス菌が作る短鎖脂肪酸が増えます。この短鎖脂肪酸は、粘膜免疫であるIgA抗体を作る手助けもするので、免疫力アップの効果が、より高まります。さらに、エネルギー代謝も上がるので、やせやすい体質になります。
このように発酵ショウガは、ショウガの薬効に乳酸菌の作用がプラスされて、万能薬のような効能を期待できるのです。

◎腸内環境がよくなり、下痢や便秘が改善!
◎免疫細胞が活性化し、免疫力アップ!感染症やアレルギーの予防に!
◎短鎖脂肪酸が増え、代謝がよくなりやせやすくなる!
紅茶に入れれば感染症予防にも
発酵ショウガのもう一つのよさは、飲み物にも食べ物にも、スイーツにも合うことです。
特に手軽なのが、ドリンクに入れること。その中でも、コロナ禍の今こそお勧めなのが、ショウガ紅茶です。
インフルエンザや新型コロナのウイルスは、表面のスパイク(突起)を使って細胞の中に入り、増殖します。「テアフラビン」と呼ばれる紅茶ポリフェノールは、そのスパイクにくっついて、ウイルスが細胞の中に入るのを防ぐのです。
また、紅茶はわずか15秒で、インフルエンザウイルスの99.9%を無力化するというデータもあります(国立感染症研究所協力研究員・中山幹男氏)。
さらに、ショウガ自体も、殺菌・抗ウイルス作用を持っています。この二つのパワーが合わさることで、感染症の予防効果が、より期待できます。
なお、発酵ショウガを加える温度は、乳酸菌が生きていられる60℃以下がお勧めです。そうすることで、ショウガの薬効成分「ショウガオール」と、乳酸菌の両方をとり入れることができます。
発酵ショウガは、1日20g(親指2本分)を目安にとるといいでしょう。とり過ぎても害はありませんが、ショウガには代謝を上げる効果があるので、まれに汗が出たり、脈が速くなったりすることがあります。
また、ショウガの刺激に弱い人は、少量から始めてみるといいでしょう。
発酵ショウガ活用ドリンク
ショウガ紅茶
紅茶には、ウイルスが細胞の中に入るのを防ぐ働きがあります。さらに、ショウガの殺菌・抗ウイルス作用も働くので、感染症予防にもお勧めです。発酵ショウガには乳酸菌が含まれているので、免疫力(病気に対する抵抗力)もアップします。

【作り方】
紅茶をコップに注ぎ、発酵ショウガを小さじ1程度加える。好みで黒砂糖を加えてもよい。
ショウガココア
ココアは、最も体を温める作用が強い飲み物で、効果が長続きするのも特徴。そこにショウガが加われば、体を温める最強のドリンクになります。ココアには女性に不足しがちな鉄も多いので、冷え症や貧血気味の女性にもピッタリです。

【作り方】
コップに純ココア(ピュアココア)を5g入れ、お湯を少量加えてダマにならないよう混ぜる。お湯の量が200mlになるよう、残りを加えたら、発酵ショウガを小さじ1程度加えてかき混ぜる。
ショウガ甘酒
甘酒には、アミノ酸の一種である「エルゴチオネイン」という成分が含まれています。これは、「最強の抗酸化物質」と呼ばれるほど高い抗酸化作用を持っており、美肌効果が期待できます。さらに、甘酒の麹菌と、発酵ショウガの乳酸菌を同時にとれるので、腸内環境を整えるのにも役立ちます。

【作り方】
甘酒をコップに注ぎ、発酵ショウガを小さじ1程度加える。温めて飲んでもよい。
ショウガくず湯
発酵ショウガ考案者のマスジマトモコさんが、 カゼのひき始めに飲んでいるというドリンクです。ショウガはもちろん、くず湯にも体を温める効果があるので、体調をくずしたときにお勧めです。また、肩こりや頭痛の改善も期待できます。
【作り方】
くず粉5g、100%リンゴジュース60g、水60gを鍋に入れて煮立てる。仕上げに発酵ショウガを3g加える。

この記事は『安心』2021年1月号に掲載されています。
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