リンゴは胃腸の働きを整える、ほてりを取る、潤いを補う、イライラやソワソワを鎮める、さらに、熱中症、下痢や消化不良、のどや粘膜の乾燥、高血圧などにもよいとされています。体を冷やす性質がありますので、冷える季節や胃腸が弱っている人には「焼きリンゴ」がお勧めです。【解説】柳沢侑子(女性の中医学普及会代表理事・薬剤師)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

柳沢侑子(やなぎさわ・ゆうこ)

女性の中医学普及会代表理事。薬剤師、国際中医専門員、国際中医薬膳管理師。製薬会社に勤務していたときに体調を崩したことがきっかけで、漢方などに興味を持つ。その後、中医学と出合い、本格的に中医学・漢方・薬膳の勉強を開始。中国北京での研修などを経て、2011年に国際中医専門員を取得。漢方薬局で勤務後、独立。youtube「やなゆう漢方ちゃんねる」やtwitterなどのメディアも利用し、家庭でできる漢方・薬膳の知恵を幅広く普及する活動も積極的に行っている。

冷える季節や胃腸が弱っている人におすすめ

リンゴは栄養価の高い果物として知られています。食物繊維やカリウム、ビタミンCなどが含まれ、抗酸化物質として注目されているポリフェノールやペクチンも豊富です。内臓脂肪を低減させる働きも明らかになっています。

今回は、中医学・薬膳の観点から、「焼きリンゴ」の優れた効能をご紹介します。

中医学では、リンゴは甘味・微酸味があり、涼性(余分な熱を冷ましてくれる)の作用や、五臓の「心」=精神・心と、「脾」=消化器系に作用することが知られています。

具体的な働きとして、胃腸の働きを整える、消化を助ける、ほてりを取る、二日酔いを解消する、潤いを補う、イライラやソワソワを鎮める、といった効能が期待できるのです。

また、熱中症、下痢や消化不良、のどや粘膜の乾燥、高血圧などにもよいとされています。カゼのときにリンゴをすりおろして食べることが多いのは、これらの効能からみても理にかなっているといえるでしょう。

さらに薬膳には「酸甘化陰(さんかんかいん)」という言葉があります。酸味と甘味を合わせてとると、陰液(「血」と「水」)を補って、体を潤すとされています。酸味と甘味を併せ持ったリンゴにも、その力が備わっています。

リンゴは前述のとおり、ほてりを取ったり熱中症に効果的だったりと、体を冷やす性質があります。

そこで、冷える季節や胃腸が弱っている人にお勧めしたいのが、「焼きリンゴ」です。薬膳でも、煮リンゴのように温めたリンゴ料理がよく勧められます。加熱することで、リンゴの体を冷やす性質が緩和されるのです。

ハチミツでのどを潤しシナモンで体を温める

焼きリンゴの作り方はさまざまですが、私のお勧めを下項に紹介します。とてもジューシーで、生のリンゴとは違う、やわらかな食感が楽しめます。

バターのかわりに、ココナッツオイルを使うのもお勧めです。ココナッツオイルは酸化しにくく、中性脂肪の蓄積を防ぐ働きがあります。

ハチミツは、抗酸化作用があり、エネルギーを補ってくれます。のどや粘膜の乾燥も潤してくれるので、カゼの予防にもなるでしょう。ただし、熱には弱くて、加熱すると効果が弱まってしまうので、食べる直前にかけてください。

ハチミツのかわりに、おなかを温める作用がある黒糖を使うのもいいでしょう。

シナモンにも体を温める作用があります。おなかの冷えを取り、体の奥からじんわりと温めてくれるので、リンゴの体を冷やす性質をさらにカバーしてくれます。特に、冷えによる月経痛、腰痛といったトラブルを解消してくれる力があります。

逆に、更年期障害などでほてりが強い人、のぼせやすい人、皮膚に炎症がある人、妊娠中の人は、症状が強まる可能性があるので、シナモンは控えめにしたほうがよいでしょう。

焼きリンゴにはトッピングを加えるのもお勧めです。松の実やレーズンなどと相性がよく、ビタミンやミネラルなどの栄養価をプラスできます。

焼きリンゴを食べる時間帯は、疲れぎみの人は朝に、潤いを補いたい人は夜に食べるのがお勧めです。体を冷やさず、おいしく胃腸や心の不調の改善に役立ちます。ぜひジューシーで香り豊かな焼きリンゴを試してはいかがでしょうか。

柳沢先生お勧めの焼きリンゴの作り方

画像: 柳沢先生お勧めの焼きリンゴの作り方

【材料】(1食分)
・リンゴ…1/2個
・バター…10g
・ハチミツ…適量
・シナモン(⾁桂)…適量(※ほてりが強い、のぼせやすい、アトピー性皮膚炎の人は控える)
[あれば以下のトッピングを加える]
・松の実…適量
・ドライフルーツ…適量

【作り方】
リンゴは洗い、⽪のままくし切りにする。
フライパンでバターを熱してリンゴを並べて入れ、軽く焼き色がつく程度に中⽕で両⾯焼く。
お⽫に盛り、ハチミツ、シナモンをかける。
松の実やレーズンなどのドライフルーツを、好みで添える。

トッピングについて

松の実は滋養強壮や潤いを補う働きがあり、
・⽼化防⽌ ・からセキ ・コロコロ便 などの解消にお勧め。

レーズン類は⾎を補う働きがあり、
・貧⾎気味 ・⽖が割れやすい ・枝⽑が多い ・髪の⽑がパサつく など、⾎液不⾜の人にお勧め。

画像: この記事は『壮快』2021年1月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年1月号に掲載されています。

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