解説者のプロフィール

笠井美貴子(かさい・みきこ)
シロノクリニック銀座副院長。2009年、東京女子医科大学医学部卒業、同年大森赤十字病院(内科、外科、皮膚科)研修。11年、東京女子医科大学病院皮膚科、12年三井記念病院皮膚科、14年都内美容クリニックを経て、15年よりシロノクリニック入職。患者とのコミュニケーションを大切にした治療をモットーに、たるみ治療を特に多く手がける。丁寧なカウンセリングと豊富な知識に基づく確かな治療で、多くの患者から厚い信頼を得ている。
満腹感が得やすく老廃物がたまりにくい
リンゴにはさまざまな健康効果がありますが、美容面でもメリットの多い果物です。
まず、食物繊維が豊富です。食物繊維は大きく二つに分けると、水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維があります。リンゴには、その両方の食物繊維が含まれているのです。
不溶性食物繊維は、大腸の中の消化されなかった食べ物などを絡めながら便となり、排出されます。また、腸の調子を整え、乳酸菌などの善玉菌の繁殖を助けるのです。
水溶性食物繊維(ペクチン)は、水に溶けやすくドロドロしている繊維で、胃腸内をゆっくり移動するため、食欲が抑えられます。満腹感が得やすいので、食事量を抑えたいダイエットにもお勧めです。
また、腸の中でコレステロールに吸着して排出されることで、血中コレステロールが減り、血液をサラサラにする効果もあります。
このような食物繊維の働きのおかげで、腸が整い、便が排出されやすくなり、老廃物が体にたまりにくくなります。その結果、肌荒れの予防にもなるでしょう。
また、皮に多く含まれるポリフェノールの主成分プロシアニジンも注目すべき成分です。
プロシアニジンには強い抗酸化作用があり、体内の活性酸素の除去や血流の改善、アトピー性皮膚炎の改善も期待できます。
そのほかにも、シミの元であるメラニン色素の過剰生成を抑えるなど、美肌効果も得られるので、リンゴは皮ごといただくことをお勧めします。
さらにカリウムも豊富で、体内の余分な塩分を排出し、むくみの改善や、高血圧・動脈硬化・高コレステロール血症など、生活習慣病の予防にも役立ちます。
リンゴに含まれるビタミンCは、コラーゲンの生成や美白をサポートします。シワやシミを予防し、肌のハリを保ってくれるのです。
ほかにも血管壁を強くしたり、鉄分を吸収しやすくしたりするという作用もあります。
ビタミンCは加熱しても壊れにくいのが特長ですので、「焼きリンゴ」にしても、ビタミンCをしっかりとることができるでしょう。
朝食に取り入れるのがおすすめ
リンゴは加熱することで、美容効果をさらに引き出してくれます。加熱されたリンゴは、ペクチン由来のオリゴ糖が増え、吸収率も高くなります。
腸内の善玉菌はオリゴ糖をエサにして腸内で増えるので、整腸作用が期待できます。また、高血圧を抑制する効果も得られます。
ペクチンは、果肉と皮の間に多く含まれます。温めて、皮もいっしょに食べることで、ペクチン由来のオリゴ糖をより多く得られます。
また、リンゴを加熱すると、皮がやわらかくなるため、皮ごとでも食べやすくなります。前述した、皮に含まれるポリフェノールもしっかりとることができるでしょう。
焼きリンゴを食べるのは、朝がお勧めです。朝は忙しくて、パンと牛乳、ご飯とみそ汁など、手軽に食べられる物で済ます人が多いと思います。
そこに、焼きリンゴを加えることで、食物繊維、ビタミン、ミネラルが摂取でき、栄養バランスが整いやすくなります。
また、リンゴの食物繊維によって朝から腸の蠕動運動(便を送り出す動き)が活発になり、快便ですっきりした1日を過ごすのにも役立つでしょう。

朝に皮ごと食べるのがポイント!
ただし、リンゴには糖質が多く含まれるため、ダイエット中の人や糖質制限が必要な人は食べ過ぎに注意してください。
焼きリンゴの食べる量の目安は、食事でパンやご飯を食べる人なら、糖質のバランスを考えて、4分の1〜2分の1個で十分です。
焼きリンゴの作り方はさまざまですが、電子レンジでも簡単に作れます。リンゴを4等分か8等分にし、2~3分加熱すればOK。
温めると甘みが増すので、無糖のヨーグルトと合わせてもおいしくいただけます。すりつぶしても十分に効果が得られるので、工夫ができますし、いろいろなレシピも作れます。飽きずに続けられるでしょう。
腸や肌の調子を整えたい人、コレステロールが気になる人は、朝の焼きリンゴを取り入れてみてはいかがでしょうか。

この記事は『壮快』2021年1月号に掲載されています。
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