欧米には「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」という格言があります。実際の研究からも、習慣的にリンゴを適量食べることは、健康に役立つといえそうです。リンゴの健康成分は皮に多く含まれており、健康効果を生かすには皮ごと食べるのがポイントとなります。そこでお勧めなのが、「焼きリンゴ」です。【解説】石原藤樹(北品川藤クリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)

北品川藤クリニック院長。1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科大学院卒業。医学博士。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、98年より六号通り診療所所長。2015年、北品川藤クリニックを開設し現在に至る。主な著書に『コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?』(PHP研究所)、『誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方』(総合医学社)などがある。

リンゴの効能は世界中で検証されている

欧米には「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」という格言があります。格言ですから、これ自体に科学的な根拠はありませんが、欧米では昔から「リンゴは健康によい」という考え方があります。

実際、リンゴを毎日食べると、どのような健康上のメリットがあるかを調べた医学論文は多く発表されています。

例えば、フィンランドで約1万人を20年以上にわたって追跡した研究では、リンゴを1日に47g以上食べている人は、食べない人と比べて、肺ガン、ぜんそく、白内障、糖尿病、虚血性心疾患による死亡などのリスクが、有意に低いという結果が出ています。

画像: ●はリンゴを1日47gより多く食べる人のリスク比を表す。リンゴを食べる習慣がない人のリスクを1とする。(Paul Knekt, et al., Flavonoid intake and risk of chronic diseases, Am J Clin Nutr 2002;76:560–8.をもとに作図)

はリンゴを1日47gより多く食べる人のリスク比を表す。リンゴを食べる習慣がない人のリスクを1とする。(Paul Knekt, et al., Flavonoid intake and risk of chronic diseases, Am J Clin Nutr 2002;76:560–8.をもとに作図)

イギリスの医学誌でも、リンゴと薬を比較したユニークな論文があります。この研究では、50歳以上の人に1日1錠のスタチン(コレステロール降下剤で動脈硬化性疾患を予防する)か、1個のリンゴを処方したときの、各心血管疾患による推定死亡回避人数を分析しました。

解析の結果、スタチンは推定年間9400人、死亡を回避できることがわかりました。一方、リンゴの推定死亡回避人数は年間8500人でした。効果はスタチンに軍配が上がりましたが、リンゴは薬と違い副作用がなく、この結果はあなどれないという結論になっています。

リンゴを食べる習慣と医者のかかり方との関連を検証した、ちょっと肩の力が抜けるような論文もあります。アメリカの全国健康栄養調査のデータを活用した調査では、1日1個リンゴを食べる人と食べない人の、1年間の医療機関の受診や投薬治療などの有無を比較しました。

すると、リンゴを常食している人のほうが薬の処方頻度が少ないことがわかりました。

また実験レベルですが、リンゴはガン遺伝子の抑制や、ガン細胞の増加、転移を防ぐという報告もあります。こうした研究からも、習慣的にリンゴを適量食べることは、健康に役立つといえそうです。

焼きリンゴにして皮ごと食べよう

リンゴには、果物のなかでも特に含有量が多いポリフェノールをはじめ、不溶性・水溶性の食物繊維、カリウム、ビタミンA、B1、B2、Cなど多くの栄養成分が含まれています。

そして、糖や脂質の吸収を抑える作用や、それに伴う肥満防止、血圧降下などの作用、整腸作用がわかっています。特にコレステロールを下げる作用は明確です。

こうした働きは、主にポリフェノールや食物繊維が腸内細菌のエサとなり、腸内細菌叢を改善するためと考えられます。腸内でビフィズス菌が増え、悪玉菌が減るのです。

肥満や高血圧、高血糖、脂質異常症などの生活習慣病が気になる人には、特に効果が期待できるでしょう。

ポリフェノールや食物繊維など、リンゴの健康成分は皮に多く含まれています。ですから、健康効果を生かすには皮ごと食べるのがポイントとなります。

そこでお勧めなのが、「焼きリンゴ」です。

生のリンゴを皮をむいて食べる人もいますが、丸ごと加熱した焼きリンゴなら、皮ごとおいしく食べられます。やわらかくなるので、生のリンゴはかたくて食べにくいという人や、高齢者も無理なく食べることができます。加熱により、皮を滅菌できて、栄養素を効率よくとれるという利点もあります。

日本のリンゴはサイズが大きく、前述の研究論文にあるような、海外の一般的なリンゴの倍近くもあります。

ですから、1日に食べる量は、3分の1から半分くらいにしてください。丸々1個では多いほどです。いいかえれば、少ない量で健康効果が期待できるということです。

余分な糖や脂肪の吸収を抑えるという観点では、焼きリンゴは、食事の最初に食べるのが効果的といえますが、お菓子のかわりに食べるのもいいでしょう。

サラダに混ぜたり、ナッツをトッピングしたりするのもお勧めです。これらは抗酸化作用があり、健康面でもいい組み合わせです。

なお、リンゴに豊富に含まれるカリウムは、体内の余分な塩分を排出して血圧を下げる半面、腎機能が低下していると十分に排泄されず、体内に蓄積して不整脈を招く恐れがあります。腎臓病の人は、主治医とよく相談してくださいアレルギーのある人も、控えるようにしましょう

焼きリンゴの作り方

画像: 【焼きリンゴの健康効果】皮の成分が腸内環境を改善して肥満を予防 生活習慣病のリスクも下げる

リンゴはポリフェノール、水溶性および不溶性食物繊維、ビタミンなどが豊富です。主に腸内細菌によい影響を与え、肥満防止やコレステロール降下などに働くと考えられます。皮ごと食べるのがポイントですが、焼くことでより食べやすく、おいしくいただけます。

【材料】
リンゴ…1個

画像1: 焼きリンゴの作り方

【作り方】
皮つきのままよく洗い、水気をふく。
芯抜きやナイフなどで、ヘタと芯をくり抜く。このとき、底は貫通しないようにする。
フォークや竹串などを刺して、5ヵ所ほど穴をあける。

画像2: 焼きリンゴの作り方

200度に予熱したオーブンで20~40分程度焼く。

画像3: 焼きリンゴの作り方

【食べ方】
1日に1/2個を目安に皮ごと食べる。

画像: 甘酸っぱくていい香り!

甘酸っぱくていい香り!

画像: この記事は『壮快』2021年1月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年1月号に掲載されています。

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