解説者のプロフィール

村山瑛子(むらやま・えいこ)
料理研究家。新潟県燕市出身。女子栄養大学食文化栄養学科卒。著名料理家のアシスタントを務める傍らで雑誌のレシピ提供、スタイリング、料理番組、映画の製作に携わる。「料理って簡単!食卓って楽しい!」をモットーに、手軽で作りやすいレシピを提供している。著書に『手抜きでサクッと♥イイ女ごはん』(講談社)がある。
初めて食べる食感!味がグレードアップ!
鮮やかなオレンジ色の柿の実がスーパーや八百屋さんの店頭に並び始めるのは、10月から11月にかけて。空気が乾燥してきて、風が冷たく感じられるころです。
皆さん、「焼き柿」をご存じでしょうか。これは文字どおり、柿をオーブントースターやフライパンなどで焼いた物。「焼きリンゴ」なら、ほとんどのかたが知っているでしょうし、食べたことのあるかたも多いでしょう。
一方、焼き柿となると、ネーミングすら初めて聞いたというかたが少なくないかもしれません。実際に食べたことがあるかたはごく少数でしょう。
柿は、生で食べてももちろんおいしいのですが、実は、焼いてもとてもおいしいフルーツです。
私は以前、新潟のテレビ番組で、焼き柿のレシピを紹介したことがありました。使ったのは、佐渡の名産「おけさ柿」。フライパンにバターを広げ、8等分したおけさ柿に砂糖をまぶして焼きました。出来上がった焼き柿に、アイス菓子を添えます。
これを柿の生産者のかたなどに食べてもらったところ、
「初めて食べる食感。おいしいですね」「焼くと、こんな味になるのか、驚きました。目隠しして食べたら、柿とわかりませんね」「やわらかさが増して、味がグレードアップしていますね」
といった具合にたいへん好評でした。
柿を焼くことによって、いろいろなメリットが生じます。そのメリットは三つ。
❶風味が増す
❷欠点がカバーできる
❸幅が広がる
まず第一に、柿自体の風味が増します。
焼くことで、実がやわらかくなり、香りがとてもよくなります。柿の品種によって差がありますが、焼くことで、甘さが増す物も多いのです。
第二に、柿は体を冷やす性質があります。この性質は、冷えに悩む人にとっては欠点ともいえますが、焼くことで、この柿の短所をカバーできます。
第三に、料理に使える幅が広がります。生のままですと、柿はやはり、スイーツに使うことが多いでしょうが、焼くことで、サラダやメインの料理にも気軽に使えるようになります。
まだ熟していないかための柿でも、少し火を通してあげると、やわらかさが増して食感が変わります。サラダなどにも合わせやすくなるのです。
かた過ぎて甘くないときは焼き柿を試すチャンス
柿のレシピをいくつか紹介しましょう。まず下のレシピでも紹介している「焼き柿のマリネ」。そのまま食べてよし、サラダに合わせてよしと、使いやすくてお勧めです。
次にお勧めしたいのが、「焼き柿の白和え」。豆腐を水切りして、みそ、しょうゆ、白すりゴマ、砂糖を加えて練り、白和えの元を作ります。そこに、焼き柿と、シュンギクやミニトマトなどを加えて和えれば完成です。
柿は、焼いてやわらかくなると、白和えのような和風のレシピにピッタリ合います。火を通し過ぎない程度に焼くのがお勧めです。
焼き方は、フライパンやグリルなど、いろいろ考えられますが、フライパンだと、油を使う必要があります。白和えなどにするには、グリルで焼いたほうがいいでしょう。
焼き柿は、和風のレシピだけでなく、洋風のレシピにも使えます。バターやチーズとの相性も悪くありませんし、サラダにも合います。
「焼き柿トースト」もおいしいです。柿を8等分してパンの上に並べ、モッツァレラチーズを散らします。あとは、オーブントースターで焼くだけ。最後に、バジルソースをかけていただきます。
もしもスーパーで買ってきた柿が、あまり甘くないとか、かた過ぎて食べづらい残念な柿だったときは、焼き柿を試すチャンス。ぜひいろいろチャレンジしてみてくださいね。
村山先生お勧め「焼き柿のマリネ」

【材料】
柿(種なし)…1つ
Ⓐオリーブオイル…大さじ1と1/2
白ワインビネガー…大さじ2
塩…2つまみ
黒コショウ…適量
【作り方】
柿は皮をむいて、8等分にする。フライパンやオーブントースター、グリルなどでお好みの加減に焼く。よく混ぜたⒶに柿を和える。


【食べ方】
そのまま食べる。シュンギクや生ハムを加えて、食べるのもお勧め。

この記事は『壮快』2021年1月号に掲載されています。
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