「食べ合わせ」は、私自身が長年、研究し続けてきたテーマです。、「柿が赤くなれば、医者が青くなる」といわれますが、ここでは特に貧血、セキやのどの痛み、血圧降下に効果のある食べ合わせを中心に、柿の効能についてお話ししたいと思います。【解説】松本浩彦(松本クリニック院長)

解説者のプロフィール

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松本浩彦(まつもと・ひろひこ)

松本クリニック院長。1999年神戸市東灘区に「松本クリニック」を開業(後に芦屋市へ移転)。小児から高齢者まで分け隔てなく、プライマリー・ケア(初期治療)に重点をおいた総合診療科を目指す。その独自の診療内容から日本全国から患者が訪れ、多くのプロ野球球団の著名OB、現役選手、俳優・タレントの主治医として信頼を得ている。

食べ合わせの工夫で健康効果がさらに高まる

昔から、「柿が赤くなれば、医者が青くなる」といわれてきました。確かに柿は、ビタミン・ミネラルなどが豊富で、多くの健康効果が期待できる食材です。ここでは特に、柿とほかの食材との食べ合わせを中心に、柿の効能についてお話ししたいと思います。

「食べ合わせ」は、私自身が長年、研究し続けてきたテーマです。医学的な根拠に基づき、さまざまな食品の食べ合わせを検討し、自分のブログや新聞・雑誌などに発表してきました。代表的なものをいくつか取り上げましょう。まずは、よい食べ合わせです。

きな粉と柿

きな粉は大豆の粉で、植物性たんぱく質、鉄分、カルシウム、カリウムなどを多量に含んでいます。一方、柿にも、ビタミンCと、カリウムが含まれています。この二つを食べ合わせると、貧血に効くのです。

貧血に悩むかたの多くは、鉄分不足が原因です。日本人は、欧米人と比べて、特に鉄の摂取量が少ない傾向があります。このため、貧血に悩む日本人が多いのですが、「きな粉と柿」は、その足りない鉄分を効果的に補ってくれます。そして、柿のビタミンCとカリウムが、きな粉の鉄分の吸収をよりいっそう高めてくれます。

画像: きな粉との組み合わせは貧血に有効。

きな粉との組み合わせは貧血に有効。

酒と柿

柿の渋み成分であるタンニンは、ポリフェノールの一つ。アルコールを分解する働きがあります。また、柿に含まれる果糖が、二日酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解します。柿には、利尿作用のあるカリウムも含まれているため、これらの相乗作用で、柿は二日酔いに有効なのです。

また、柿のビタミンCは、肝臓の働きを助けてくれます。柿は、お酒好きの人に進んで食べてほしい食材です。

ショウガと柿

柿は、体を冷やすという欠点があります。一方、ショウガは、体を温める力の強い食品です。二つを組み合わせると、ショウガが柿の欠点を補ってくれることになります。「ショウガ+柿」で、肺の機能を高めたり、セキやのどの痛みを改善したりする効果が期待できます。

では、ショウガと柿は、どのように食べればよいでしょうか。池波正太郎の名作『鬼平犯科帳』(文春文庫19巻「おかね新五郎」)に、「柿のみりんがけ」という料理が出てきます。ある寺を訪れた主人公の平蔵に、寺の小坊主が出す料理です。

江戸時代の柿ですから、品種改良もされておらず、そんなに甘くはなかったのでしょう。小坊主は、その柿に、煮切ったみりんをとろりとかけて出すのです。平蔵は、「これはオツな食べ物だ」と感心します。

ショウガを薄くそぎ切りにして、同じく少し薄めに切った柿と合わせ、そこに、煮きったみりんをかけてみましょう。ちょっと小洒落たレシピの出来上がりです。

大根おろしと(渋)柿

渋柿をすり潰した物と大根おろしを混ぜて飲むと、血圧を下げる効果があるとされています。柿のタンニンには、血圧降下作用があります。しかも、甘柿よりも渋柿のほうが、その作用が強いのです。渋柿の渋みを大根おろしで和らげ、食べやすくしてみましょう。

カルシウムが豊富な食材には要注意

続いて不適当な食べ合わせを紹介しましょう。

×コンブと柿

この食べ合わせは、タンニンが、コンブのカルシウムの吸収を阻害して、胃腸障害が起こるおそれがあります。柿のタンニンは、ほかの食品のカルシウムの吸収を阻害することがあるのです。同様に、ノリと柿の食べ合わせもよくありません。

×カニと柿

海の物と山の物の両方をいっしょに食べようとすると、昔は食材を調達するまでに時間を要して、どちらかが傷んでしまう場合があったのではないでしょうか。このため、食中毒を起こす人が少なくなかったのでしょう。

しかも、柿には体を冷やす性質がありますから、食中毒などが起こった場合、その冷やす性質が症状をより悪化させる要因ともなりかねません。

しかし、例えば、メインの料理で温かいカニ料理を食べたあと、デザートとして柿を食べるなら、「そんなに悪いことはないかな?」と思います。要は、食べ合わせも、食材の調理の仕方により、身心に与える影響が大きく変わってきます。

以上、柿とさまざまな食材との食べ合わせを紹介してきました。もし興味を持ったレシピがあれば、皆さんも、お試しになってみてはいかがでしょうか。

ただし、いくらおいしくても、何事も過ぎたるは及ばざるがごとし、食べ過ぎには注意してください。

画像: この記事は『壮快』2021年1月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年1月号に掲載されています。

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