加熱して胃腸を守る薬膳ならではの食べ方
薬局を営む両親のもとに生まれた私は、大学卒業後、薬剤師として実家の薬局を継ぎ、調剤業務に取り組んできました。
一方で、薬だけに頼らず、食事や、心のメンテナンスを通して自然治癒力を高める中医学(中国を中心に発展してきた伝統医学)に、しだいに興味を持つようになりました。漢方や、鍼灸の勉強に取り組み、鍼灸師の資格も取得。現在では、店を漢方相談専門薬局に切り替え、鍼灸院も開業しています。
そんな私が「焼きバナナ」を食べるようになったのは 、薬局仲間の田中友也先生のツイッターがきっかけです。田中先生は、日ごろからさまざまな健康情報を発信していますが、あるとき、食養生の一つとして、ブドウなどのフルーツを焼いて食べることを提案していたのです。
一見して、私は興味を惹かれました。薬膳ならではの方法だと思ったからです。
薬膳では、食品を「体を冷やす物」、「体を温める物」、「どちらでもない平性の物」の三つに分けています。体を冷やす物は、冷やして食べると胃腸の負担になってしまうというマイナス面があります。それを補ってくれるのが、加熱することです。熱を加えることによって、胃腸を直接冷やさないよう、守ることができます。
フルーツは「体を冷やす」とされる物も多く、焼くというのはよい方法だと感じました。2020年8月の終わり、ふとこの焼きフルーツのことを思い出し、「『焼きバナナ』ならおいしそうだから試してみよう」とひらめきました。
バナナは、滋養に富み、健康効果も高い食品です。私は、漢方相談にいらした患者さんの健康維持のため、食事についてもアドバイスをしています。そのなかでも、バナナはよくお勧めしています。
しかし、薬膳においては、バナナは「体を冷やす食品」。冷たい状態で食べ過ぎると、胃腸の負担となることも考えられます。焼いて食べれば、その特徴は弱まり、バナナがもともと持っている健康効果を十分に享受できます。早速焼いてみると、味も抜群。これはいい! と思いました。
疲れにくくなって毎日元気に過ごせる

便通が改善したという生出さん
焼きバナナの作り方はとても簡単です。バナナ1本を、皮ごとオーブントースターで焼くだけ。バナナの大きさにもよりますが、だいたい6~7分くらい。大きい物なら、10分くらいかかるでしょうか。
真っ黒になった皮をナイフでむけば、中は白いバナナのまま。よく焼けていると、トロッととろけるようになっていて、甘みもぐんと増しています。
私は、朝食で、もう少し食べたいかな? と感じたときのもう一品として焼きバナナを添えています。夕方、小腹が空いたときに食べることもあります。
こうして焼きバナナをよく食べるようになってから、まず感じたのは、便通がよくなったことです。私は昔から、お通じはいいほうでしたが、焼きバナナを食べるようになってからは、さらに快便になりました。毎日1回だった便通が2回になることもしばしばです。
疲労回復効果も感じています。疲れにくくなり、毎日元気に過ごせています。
バナナは、ただちにエネルギー源となる糖質を多く含み、ビタミン、ミネラルも豊富。栄養補給に最適です。このため、我が家では子供たちにも焼きバナナを食べさせています。
特に、まだ1歳の子は、焼きバナナにオートミールを合わせたものがお気に入りです。小皿一杯のオートミールに牛乳を注ぎ、電子レンジで温めます。そこに、焼きバナナをくずして混ぜれば出来上がり。これを食べさせていたところ、子供の便通も非常にスムーズになりました。
これからも、自分や家族の健康維持のため、焼きバナナを食べ続けたいと思います。また焼きバナナの効果が必要と思われる患者さんにも、お勧めしていくつもりです。
家族皆で安心して食べられる
(CoCo美漢方 鍼灸師 田中友也)
便通の改善は、焼きバナナを食べたかたが最初に実感される効果の一つです。薬膳におけるバナナの作用である潤腸(腸を潤し、便をやわらかくする)によるものでしょう。また、甘みに元気を補う作用があるので、疲労回復につながったと思われます。
焼くことで、バナナの体を冷やす作用が弱まるため、これからの寒い季節でも、安心して食べることができ、お子さんにもお勧めできます。
[別記事:腸内環境を整える成分が増加!疲れも取れる焼きバナナ→]

この記事は『壮快』2021年1月号に掲載されています。
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