解説者のプロフィール

田中友也(たなか・ともや)
漢方相談薬局CoCo美漢方(神戸市垂水区)鍼灸師・国際中医専門員。関西学院大学法学部卒業後、「イスクラ中医薬研修塾」にて中医薬の基礎を学び、その後、北京中医薬大学で現場の医療を研修。帰国後、小島薬局漢方堂にて恩師・小島晃氏のもと、4年間勉強。現在は店舗で日々健康相談にのる傍ら、鍼灸師として施術も行う。著書に『12か月のおいしい漢方』(扶桑社)、『おうち養生きほんの100』(KADOKAWA)がある。
▼漢方相談薬局CoCo美漢方(公式サイト)
生で食べるより優れた健康効果が得られる
中医学(中国を中心に発展してきた伝統医学)や薬膳の世界では、食材には、体を温めたり、冷やしたりする性質があると考えます。そして、その作用の強弱によって、食材を五つのグループ(五性)に分類しています。
五性のなかでも、体を冷やす作用が最も強いとされているグループが「寒性」。その代表的な食材は、スイカやトマト、キュウリ、そして南国のフルーツであるバナナです。
中医学におけるバナナの主な作用は、「清熱」「潤腸」「解毒」の三つです。
清熱は、体のよけいな熱を取る働きのこと。ほてりやのぼせを緩和し、炎症を取り去る作用もあるので、口内炎や目の充血、のどの腫れの改善などにも効果が期待できます。
潤腸は、文字どおり、腸を潤す働きのこと。便がやわらかくなって通じがよくなるので、便秘の改善に役立ちます。
解毒は、毒を排出(デトックス)すること。便通がよくなると、体内の毒素が排出でき、ダイエット効果も得られます。
このように、バナナには多くの健康効果があるのです。中国ではこれらの効果を利用し、痔の治療や、二日酔いの解消のためにバナナを用いることがあるそうです。
とはいえ、万人にバナナをお勧めできるかといえば、そうではありません。バナナは寒性の食材であるために、体を冷やす作用が強いというデメリットがあるからです。
冷え症の人や、冷えが原因の頭痛や肩こり、生理痛を抱えている人、下痢をしている人などがバナナを食べ過ぎると、症状が悪化する可能性があります。
また、冬も本番の寒い時季にバナナを食べ過ぎると、ますます体が冷えてしまい、体調悪化につながりかねないのです。
では、こうしたデメリットを考えると、バナナは食べないほうがよいのでしょうか。
そんなことはありません。前述したような多くの健康効果を、みすみす捨てるのはもったいない! デメリットについては、とても簡単な解決策があります。
それは、バナナを加熱して、「焼きバナナ」として食べることです。
バナナを加熱すると、もともとあった体を冷やす作用が弱まります。それにより、冷え症の人でも安心して食べることができるのです。
さらに焼きバナナにすることで、生の状態よりも優れた効果が生まれます。
それは何かというと、熱を加えることで「甘み」がアップするのです。実際、加熱すると、バナナに含まれている「フラクトオリゴ糖」が増加することがわかっています。フラクトオリゴ糖は、腸内細菌のエサになる成分で、腸内環境を整える効果が期待できるのです。
腸内環境が整えば、美肌や免疫力のアップといった効果が期待できます。さらに、気持ちが穏やかになるなど心の安定にもつながります。
また薬膳では、甘みには胃腸を元気にする作用があり、疲労回復、食欲増進などに役立つとされています。焼きバナナにすることで、甘みがアップすれば、こうした作用の増強にもなります。
つまり、焼きバナナは、生のバナナが持つデメリットを消し去り、逆に効能をアップさせるわけです。
1日1本朝食時に食べるのがおすすめ
焼きバナナの作り方は、とても簡単。バナナをそのままオーブントースターに入れて、5〜10分ほど加熱すれば完成です。
ご自宅にオーブントースターがない人や、もっと手軽に作りたいという人は、電子レンジを利用するといいでしょう。電子レンジ(500W)にバナナを入れて、1分ほど加熱すれば、焼きバナナと同じ効能を持つ、ホットバナナが作れます。また、皮をむいてフライパンで焼いてもかまいません。
焼きバナナを作ってみると、皮が真っ黒になるので驚かれるかもしれませんが、中身には問題ありません。
加熱することでトロッとした食感になって、生のバナナよりも食べやすいと感じる人が多いのではないでしょうか。甘みがグンと増して、「おいしい!」と驚かれることでしょう。
食べるタイミングは、朝食時がお勧めです。胃腸を元気にする、疲労を回復する、といった作用が強まった焼きバナナを、朝食べることで、1日を元気にスタートすることができるはずです。1日1本食べれば、その健康効果を十分に得られます。
私自身も、食欲がないときや、元気が出ないときに焼きバナナを食べています。どんなときでも、甘くておいしい焼きバナナならペロリと食べられるので重宝しています。
漢方相談や、鍼灸治療に訪れる患者さんにもお勧めしていますが、多くのかたから「効果があったよ」と喜ばれます。ぜひ、皆さんも一度試してみてください。
焼きバナナの作り方

バナナに含まれているフラクトオリゴ糖は、加熱により増加することが分かっています。フラクトオリゴ糖は、腸内の善玉菌のエサとなる成分で、腸内環境を整えてくれるため、免疫力アップや、美肌などの効果が期待できます。
【材料】
バナナ…1本

【作り方】
オーブントースターで5〜10分、皮全体が黒くなるまで焼く。皮から汁がにじみ出てきたら加熱を止める。
【食べ方】
1日に1本程度を目安に食べる。

トロッとおいし〜い!

この記事は『壮快』2021年1月号に掲載されています。
www.makino-g.jp