調査では、性格を「外向性」「神経質」「開放性」「勤勉性」「協調性」の五つの因子に分け、それぞれの強弱と、心理的不安や予防行動が、どのくらい関連するかを分析しました。その結果、コロナうつと関連性があった性格の因子は、「神経質」と「開放性」の二つでした。【解説】錢琨(九州大学・持続可能な社会のための決断科学センター助教)

解説者のプロフィール

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錢琨(せん・こん)

一般社団法人九州オープンユニバーシティ理事。2012年より九州大学・持続可能な社会のための決断科学センター助教を務める。専門は心理学。実験や質問紙調査などの手法を使い、知覚(錯視)から感情・性格まで、幅広い心理学的事象について研究している。

コロナうつになりやすい性格を調査

「感染が怖くて仕方ない」「外出できずイライラする」──。新型コロナウイルスの感染拡大により、メンタル面での不調を訴える人が急増しています。さらには、こういった状況を指す「コロナうつ」という言葉も誕生しました。

「うつ」は主に、気分が沈んでいる状態を指します。一方、コロナうつの場合は、「ストレスを感じる」「不安感が強い」など、ネガティブな心理状態を広く含む言葉として用いられているようです。

では、コロナうつになりやすいのはどんな性格なのか。私たちの研究チームで実施した「市民の予防行動・心理状態と、性格因子との関係」の研究結果から、考察したいと思います。

この調査を実施したのは、日本政府が緊急事態宣言を出した翌日の、2020年4月8日。調査はオンラインで行われ、日本全国から、1856名の有効回答が得られました。

この調査では、性格を「外向性」「神経質」「開放性」「勤勉性」「協調性」の5つの因子に分け、それぞれの強弱と、心理的不安や予防行動が、どのくらい関連するかを分析しました。

ちなみにこれら5つは、誰もがあわせ持っている性格傾向です。その人ごとに因子の強弱があり、それが「外向性が強く、勤勉性は弱い」というように、個性の違いとして表れます。

① 外向性
社交性を表す因子。この傾向が強いほど、人とのつながりを重視し、自己主張が強くなる。

② 神経質
刺激への敏感さや、不安や緊張の強さを表す因子。この傾向が強いほど、ストレスや不安を感じやすく、安定を好む。

③ 開放性
チャレンジ精神を表す因子。この傾向が強いほど、外での活動を好む。

④ 勤勉性
物事に対する取り組みを表す因子。この傾向が強いほど、仕事や自分の役割に熱心になる。

⑤ 協調性
人との同調を表す因子。この傾向が強いほど、周りの反応を重視し、自己を抑え込もうとする。

「細やかな人」と「アウトドア派」は特につらい

さて、その結果ですが、コロナうつと関連性があった性格の因子は、「神経質」と「開放性」の二つでした。それぞれの、コロナうつになりやすい理由と軽減策は、次の通りです。

1. 神経質

神経質は、刺激に対する敏感さ、不安や緊張の強さを表す因子です。調査では、この傾向が強い人ほど、ストレスや不安、抑うつを強く感じていました。

神経質傾向が強い人は、もともと不安やストレスを感じやすいので、これはある意味、当然の結果といえます。

一方で、神経質傾向が強い人は、「危険回避力が高い」というメリットがあります。今回の調査でも、神経質傾向の強さと、感染予防行動レベルの高さには、関連性がありました。

ですから、神経質傾向が強い、という自覚がある人は「私が気をつけているから、皆の感染が抑制されているのだ」くらいに考えて、自分の行動に自信を持ちましょう。それが、心の安定につながります。

2. 開放性

開放性は、知的好奇心の強さ、独創性を表す因子です。この因子が強い人も、ストレスを強く感じていました。

開放性の強い人は、好奇心ゆえに、あちこちに出かけることを好みます。しかし、今回は自粛を余儀なくされたために、ストレスが高まったのでしょう。

しかし、自粛が必要と言っても、精神状態が悪くなれば、肝心の体調にも影響します。ですから、人がいない場所に1人で出かけるなど、感染予防を考慮しながら、好奇心を満たせる活動を行うとよいでしょう。

人と会話する時間を大切に

今回の調査では、性格以外に、家庭環境もコロナうつに関連していると示唆されました。同居人数が「1人」と「2人」を比較すると、2人の方が、ストレス、不安、抑うつの全てが低かったのです。

このことから、コミュニケーションが不安を軽減するとわかります。2人以上で暮らしている方は、家族間で積極的に会話をするようにしてください。

一人暮らしの人は電話やインターネットを活用し、家族や知人と話す時間を持ちましょう。

家に引きこもり、毎日同じことをくり返していると、うつ状態に陥りやすくなります。そんなときは、コーヒーをハンドドリップにしたり、好きなお菓子を作ってみたりと、生活にちょっとした変化を加えることをお勧めします。

画像: この記事は『安心』2020年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年12月号に掲載されています。

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