妄想とは、不安や心配など、頭の中にある余計な考えごとのこと。そんなことばかりに心を費やしていては、せっかくの人生を無駄に過ごしてしまいます。「不安を消す練習」で、現実を正しく理解しながら楽しく元気に生きていきましょう!【解説】草薙龍瞬(僧侶・興道乃里代表)【マンガ】おがたちえ

解説者のプロフィール

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草薙龍瞬(くさなぎ・りゅうしゅん)

僧侶・興道乃里代表。1969年、奈良県生まれ。中学中退後、16歳で家出・上京。1人放浪の後、高校卒業程度認定試験(大検)を経て、東京大学法学部卒業。政策シンクタンクなどで働きながら「生き方」を探求し続け、30代半ばでインドに渡り得度出家。現在は宗派に属さず、家族・仕事・生き方に役立つ、実用的な仏教を伝える活動を行う。『反応しない練習』(KADOKAWA)、『小説・自分をゆるせばラクになる』(宝島社)、『こころを洗う技術 思考がクリアになれば人生は思いのまま』(SBクリエイティブ)など、著書多数。
▼「もっとわかりやすくて役に立つ仏教を」(公式ブログ)

マンガでわかる「不安を消す練習」

画像1: マンガでわかる「不安を消す練習」
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おがたちえ
マンガ家。葬儀屋や編集者を経て、雑誌やウェブで活動を開始。4コママンガやルポマンガを中心に執筆する他、日本人向けの台湾旅行ウェブサイト「台北ナビ」のキャラクターデザインなどを担当。著書に『汚部屋掃除人が語る命が危ない部屋』(竹書房)、『繊細すぎて生きづらい~私はHSP漫画家~」(ぶんか社)などがある。

「心の体調」をくずす人が増えている

皆さま、初めまして。草薙龍瞬と申します。インドの賢者、ブッダの教え(原始仏教)をお伝えする活動をしています。

今、世の中は「新型コロナウイルス感染症」で騒然としています。中には、こんな心の不調を訴える人も出てきました。

テレビやインターネットでコロナのニュースを目にするたび、「いつまで続くのだろう」と気がめいる。
家にいる時間が長くなり、イライラや不安感に襲われる。

これらは、いわゆる「コロナうつ」。身に覚えはありませんか。

ブッダは、「人が苦しむ最大の原因は、妄想にある」とハッキリ言っています。妄想とは、不安や心配など、頭の中にある余計な考えごと。これが気分をめいらせる最大の原因だ、と言うのです。

もしブッダが、人々のコロナうつを診断すれば、「それは過剰な妄想ですよ」と、言うかもしれません。

不安になる情報には関わらない

コロナうつの最大の原因は、テレビなどの情報でしょう。連日「何名が感染した、死亡した」という情報に、どれほど意味があるか考えてみましょう。

まず気をつけたいのは、その情報の背後にある「動機」、つまり、本当の狙いです。

例えば、視聴率を上げたいテレビ番組なら、「コロナは怖い」と、人々をあおるような情報を流します。

また、自分が注目されたり、人をコントロールしたりすることを喜ぶ人は、「コロナをもっと怖がりなさい」と、深刻な顔をして、ワイドショーでコメントしたりします。

こうした言葉は、皆さんの幸せや健康を願っているわけではありません。別の動機を持っているのかもしれないのです。

仏教では、「全ての物事は、心から始まっている」と理解します。もし、その心に別の動機、特に人を苦しめる意図があるのなら、「関わる価値がない」と判断します。

人をあおって不安にさせるだけの情報に、関わる価値があるのでしょうか。「見ない・近づかない」方が正解かもしれません。

コロナうつの正体は「過剰な妄想」

次に気をつけたいのは、「コロナが怖い」という妄想と客観的事実は、かなり異なるということです。

コロナといえども、日本の場合、感染する確率がかなり低いことは確か。仮に1日1000人の感染者が出ても、「10万人に1人」未満の確率です。

しかも、「ウイルスが付着しても、その98%の人々は、自然免疫(ウイルスや細菌などが体内に入ったことをいち早く感知して抵抗する体本来の働き)で治癒し、無症状か軽症で済んでいる」というデータもあります。

重症化する人の割合は、いっそう少ないことが明らかになっています。70代でも重症に至るのは、1000人のうちわずか3人。日本でのコロナの死亡者数は、2020年9月時点で1500人程度。これは、例年のインフルエンザ死亡者数の半分です。こうしたデータを上回る勢いは、今のところ出ていません。

となると、冷静に考えてみてください。「コロナうつは過剰な妄想」と思えてきませんか。

もちろん、感染防止をする努力は必要です。人との距離を十分にとる、マスクをつける、手を洗う。これらは、すでにやっていますよね。

できることはやっている。しかも客観的には、過剰に不安になる状況でもない。

だとすれば、「妄想する人たちが騒ぐほど、コロナは怖くない」「コロナにかからない人の方が圧倒的に多い。できることをしていれば、とりあえず大丈夫」。そう受け止めても、おかしくないのです。

妄想を抜く練習をしよう

不安に流されず、今日を元気に生きることは、人間にとって一番大事なテーマです。その練習を、さっそく始めましょう。

まず、目を閉じて、手をギュッと握ったり、開いたりをくり返します。そして、目を閉じたまま、手の感覚を「見つめて」ください。

それと同じように、床を踏んでいる足の裏の感覚も、目を閉じたまま見つめます。「これは足の感覚だ」と、確認します。

こうして、体の感覚に心を使うほど、妄想に流されなくなり心が元気になっていきます。

これらは、お寺の修行の基本メニューですが、日々の暮らしの中でも実践できます。それは、前項のマンガでも紹介した、「散歩禅」「開眼禅」「シャワー禅」です。

下記で、具体的な方法を紹介しているので、ぜひお試しください。

今、私たちに必要なのは、「コロナうつの克服」です。

不安という名の妄想を増やさない。世の中に溢れる「妄想まみれの情報」にお付き合いしない。心をしっかり、正しく持ちましょう。

そうすれば、コロナうつだけでなく、後悔や孤独感、しつこいイライラさえも、軽やかに乗り越えていけるはずです。

暗い妄想を抜け出すだけで、元気だった自分が戻ってきます。そんな自分を、取り戻そうではないですか。いざ!

プチ修行のやり方

「散歩禅」

一歩一歩、しっかり踏みしめて、大地を感じ取るつもりで歩きます。

「私は歩いている」「右、左、右」と、言葉で確認しながら歩くと、集中できます。

お勧めするのは、「歩数を数える」やり方です。1、2と歩数を数えて、10歩、100歩──。

途中で考えごとをしたり、外の景色に気をとられたりして、歩数を忘れたら、「妄想に流された」ということです。

歩数を忘れたら、また1から数え直し、歩き始めてください。
 

「開眼禅」

いったん目を閉じて、目の前の暗がりをじっと見てください。

そのまま30秒──もし絵が思い浮かんだり、言葉で考えてしまったりしたら、「これが妄想なんだ」と気づいてください。

そして、パッチリ目を開きます。外の光をよく見て「妄想が消えた!」と確認します。

この「開眼禅」をやると、妄想をうまく消せるようになります。
 

「シャワー禅」

毎日浴びるシャワーも、「プチ修行」になります。

まず、シャワーを浴びる前に、「今からシャワー禅をするぞ!」と、強く心に念じてください。

そして、シャワーからほとばしる湯の様子を見たり、湯水が肌をたたく刺激を感じたりしながら、ひたすら感覚に集中します。

皮膚をたたくシャワーの感覚を、実際に見つめながら行うとよいでしょう。
 

悩み・不安別 思考のポイント

1. 新型コロナウイルス関連の情報が気になる

画像: 1. 新型コロナウイルス関連の情報が気になる

妄想に満ちた情報は聞くにおよびません。心配ばかり増える情報は遠ざけましょう。

暗くなる考えごとは全部〝妄想〟。実際には存在しません。

不安をあおるだけの情報も、無駄な妄想です。心配ばかり増える情報は、遠ざけましょう。

「見ざる・聞かざる」は、仏教の教え。見ていて暗くなるニュースやワイドショーは、もう見ない・聞かないと決めましょう。

仏教では、相手の性格や思いを最初に見ます。人を怖がらせ、怒らせることで、視聴率を上げようとするテレビ番組もあります。

もし、近所の人が、「怖い!」「許せない!」と大騒ぎしていたら、あなたは近づきたいと思いますか?

テレビも同じ。付き合う価値が本当にあるか?「ああ、この番組は怖がらせたいだけなんだ」とわかったら、近づかないことです。

趣味、食事、散歩など、もっと楽しい時間を過ごしましょう。

画像: 不安をあおるだけの情報はシャットアウト。

不安をあおるだけの情報はシャットアウト。


2. 将来・仕事などの先行きが不安

画像: 2. 将来・仕事などの先行きが不安

未来を考えて不安になるのも、仏教では「妄想」。 今日できることを考え、丁寧に実行しましょう。

「先のことを考えると不安になる」のも、仏教的には〝妄想〟です。

考えてもわからないことを考えるのは、完全に無駄ですよね。

「仕事がなくなるかも」「生きていけるか不安だ」「独りになるのが恐い」……。気持ちはわかりますが、「考えても意味がない」のは確かです。

では「考える意味がある」ことは?

それは、「今日できることは何か?」です。何ができるか考えて、1つずつ丁寧にやりましょう。

体を使ってできることだけが「確かなこと」であり、「生きる意味」なのです。

未来への妄想を消す方法としては、前項でご紹介している「開眼禅」がお勧めです。

思考を今・ここに戻して、妄想から来る不安に負けないようにしましょう。

画像: 不確かな未来を考えて不安になるより、今確実にできることを。

不確かな未来を考えて不安になるより、今確実にできることを。


3. 他人の言葉に反応してしまう

画像: 3. 他人の言葉に反応してしまう

他人の言葉は、自分の妄想を語っているだけ。自分の体の感覚を意識し、反応しないように。

他人はみんな、自分の〝妄想〟を気ままに語っているだけです。

うわさ話や、悪口、嫌み、不安など──。「この人、ずいぶん妄想しているなあ」と、距離を置いて観察しましょう。

昔の修行者は、誰かが叫ぶ声を「空気の振動にすぎない」と片づけていたそう。いわば、「風が吹いている」状態ですね。

風にムキになるのは、バカバカしいでしょう? 他人の言葉も、実は同じです。

もし相手の言葉に反応して怒ってしまったら、「ああ、私は反応している」と、客観的に観察しましょう。

そして、地面を踏みしめている〝足の裏の感覚〟を意識してください。体の感覚のほうが〝現実〟なのです。

画像: 他人の言葉と自分の心の間に境界線を引こう。

他人の言葉と自分の心の間に境界線を引こう。


4. 「たら・れば」を考えてしまう

画像: 4. 「たら・れば」を考えてしまう

「もしも」を考えても、つらくなるだけ。あえて妄想せず、今できるベストの選択を。

「もし、コロナがなければ」「もし、アレがうまく行っていたら」というのは、妄想です。

考えてもつらくなるだけで、現実は変わりませんよね。

これまでも、不安や後悔、もしも……など、たくさん妄想してきたはず。でも、今ちゃんと生きている──。

つまり、妄想の大半は外れるのです。

「妄想しない!」と決意して、今からできることに時間を使いましょう。

世の中は、自分が妄想するほど、悪いことばかりではありません。「大丈夫、なんとかなる」と自分に言い聞かせて、未来だけを見て、がんばっていきましょう。

画像: 未来を変える行動は「今確実にできる」こと。

未来を変える行動は「今確実にできる」こと。


5. 家族みんながギスギス

画像1: 5. 家族みんながギスギス

人間関係の基本は、お互いを理解し合うこと!相手の気持ちに"ちゃちゃ"を入れず、受け止めましょう。

多くの家族に、「余計なことを言い過ぎる」傾向があります。

ケチをつけない、茶化さない、お説教しない──。うまくいくこつは、「相手をそのまま理解する」ことです。

だから、「そうなんだね」「そうだったんだ」「そう思うんだ」と、必ず肯定することから入りましょう。

「つい言いたくなる」その癖が、家族同士で敬遠し合っている理由かもしれません。

もう1つ大事なことは、「精神的に自立する」こと。

夫婦・親子といえども、「自分は自分、相手は相手」です。

「自分がやりたいこと」「自分が今できること」。まずは、「自分」の物事をしっかりやりましょう。

相手に依存してはいけないし、依存させてもいけないのです。

画像: 何か言いたくなっても、まずは相手を肯定しよう。

何か言いたくなっても、まずは相手を肯定しよう。


「今考えていることは、妄想かもしれない!」そう気づくことが、不安から抜け出す第一歩です。

目を開いて妄想から脱出する、しっかり作業する、自分に今できることをやる。ご近所の人もテレビ番組も、語っているのはただの妄想。

「コロナうつ」は、そんな妄想に負けてしまった結果です。

「私は妄想に負けないぞ。こんな不安に流されないぞ」と、はっきり念じて、強い心を保ちましょう。

妄想を抜け出して、しっかり今を生きること──。それが、元気で若くて健康な"ココロ"なのです。

さあ、あなたも、「いざ、精進」!

画像2: 5. 家族みんながギスギス
画像: この記事は『安心』2020年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年12月号に掲載されています。

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