解説者のプロフィール

本橋登(もとはし・のぼる)
薬学博士・インド国立大学博士論文審査官。1966年、東北大学大学院薬学研究科修了。アメリカ州立カンザス大学客員教授、明治薬科大学教授・理事を経て、現職。野菜やフルーツの健康効果や効能に詳しく、『フルーツ博士』として有名。テレビや新聞、雑誌などでも、解説者として活躍している。フルーツの著書・研究論文も多数。
豊富なビタミンCが血流をよくする
レモンは、数あるかんきつ類の中でも、栄養成分や機能性成分を豊富に含むフルーツです。果肉や果汁はもちろん、皮にも健康に役立つ機能性豊富な成分が、ぎっしり含まれています。
そんなレモンの成分を、余すところなくとれるのが「レモン酢」です。このレモン酢には、ダイエットや肥満予防などの他、高血圧の改善にも効果が期待できます。
[別記事:レモン酢の作り方→]
その理由について、これからお話ししましょう。
血圧の上昇をはじめ、耳鳴りや冷え症といった不調の多くは、血流の目詰まりなどが招いていることがほとんどです。
万病の元となる血流を改善させるには、過剰な有害活性酸素と、過剰な血中コレステロールを、血中から減らす必要があります。この「活性酸素」とは、体内で増え過ぎると、健康な正常細胞を酸化して傷つけ、老化などを早める一因となる生体成分です。
ここで鍵となるのが、レモンの代名詞ともいえる機能性成分「ビタミンC」。ビタミンCは、別名「抗酸化ビタミン」とも呼ばれるほど、高い抗酸化作用があります。
このビタミンCの作用が体内で働くことで、余分に増えてしまった有害活性酸素が減ります。さらにビタミンCは、過剰な活性酸素による体内への攻撃も防いでくれるのです。
また、抗酸化作用が体内で発揮されると、血中の過剰なコレステロールも減少します。その結果、血流がよくなり、高血圧症などの改善につながる、というわけです。
この抗酸化成分は、レモンの果肉はもちろん、皮にも豊富に含まれます。ですから、レモンの果肉と皮を丸ごと同時にとれるレモン酢は、より強力な抗酸化作用が期待できるのです。
酢がレモンの薬効を高める
抗酸化作用がある機能性成分は、前述のビタミンCだけではありません。
レモンの皮には、ポリフェノールの仲間のパラ‐クマル酸や、フラボノイドの仲間のヘスペリジンという抗酸化成分も、豊富に含まれています。
この二つの機能性成分には、抗酸化作用の他に、肝臓を保護する働きもあります。肝臓は、脂肪の合成と分解を行う大切な器官ですから、レモンの果肉だけでなく、皮までとることで、血中コレステロールの過剰な上昇を抑えられます。
さらに、皮つきレモンと酢の組み合わせにも、相乗効果が期待できます。酢には、レモンの機能性成分の吸収をより高め、薬効をアップする効果があります。
また、ビタミンCは、体内に吸収されると壊れやすい性質を持っていますが、酢に含まれるアミノ酸には、この破壊を減らす効果があります。
そのため、レモンと酢を同時にとることで、ビタミンCが途中で壊れてしまうリスクを軽減することができるのです。

レモンを切ったらすぐ酢に漬ける
レモン酢を作るときには、次の1点だけ、気をつけてほしいことがあります。
それは、レモンを輪切りにしたら、時間を置かず、直ちに酢に漬けること。果肉の断面が空気に触れる時間が長くなるほど、せっかくの抗酸化作用が失われてしまうからです。
また、海外産のレモンを使う場合は、洗い方にも少々注意が必要です。
海外から輸入されるレモンは、通常、生産国から1ヵ月程度の時間をかけて、船便で運ばれてきます。そのため、保存剤やツヤ出しワックスなどが使用されていることが多いのです。
しかし、タワシなどでしっかりと洗えば、レモンの表面についている農薬などは落とせますから、過度に心配する必要はありません。
それでも気になる方は、中性洗剤でレモンを洗って水で流すか、50℃のお湯に5~10分ほどつけることをお勧めします。
[別記事:レモン酢の作り方→]

この記事は『安心』2020年12月号に掲載されています。
www.makino-g.jp