血糖値を下げるインスリンの分泌を高めると同時に、血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑える「GLP-1」というホルモンは、EPA、DHA、短鎖脂肪酸をたっぷり補給すれば、腸内のL細胞から十分に分泌されます。そこでお勧めなのが「サバ缶タマネギ」です。【解説】小田原雅人(東京医科大学特任教授)

解説者のプロフィール

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小田原雅人(おだわら・まさと)

東京医科大学特任教授。1980年、東京大学医学部医学科卒業。96年に英国オックスフォード大学医学部に講師として赴任。東京医科大学内科学第三講座主任教授。東京医科大学病院副病院長を経て、2014年、東京医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授。20年より現職。

肥満や生活習慣病改善に著効の「やせホルモン」

脂のたっぷりのったサバを見て、「太るかも」と心配になる人がいるかもしれません。しかし、実はこのサバの脂こそ、肥満の予防・解消に役立つ成分なのです。

サバの脂には、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)という「n-3系脂肪酸」が豊富に含まれています。EPAやDHAは、以前から血液をサラサラにして、血栓(血の塊)や動脈硬化を防いだり、中性脂肪を減らしたりする働きがあることがわかっていました。

加えて、近年注目されているのが、「GLP-1」というホルモンの分泌促進作用です。

GLP-1は、もともと私たちの体内で作られているホルモンです。肥満や生活習慣病の改善に著効があるため、糖尿病の治療薬(GLP-1受容体作動薬)としても活用されるようになりました。

食事から得られるブドウ糖は、私たちの生命活動の重要なエネルギー源です。しかし、そのとき必要となる以上の余分な血糖は、中性脂肪に変えられて脂肪細胞に蓄積され、肥満に繋がります。

GLP-1は、血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の分泌を高めると同時に、血糖値を上げる「グルカゴン」というホルモンの分泌を抑えるという二重の働きで、血糖値の上昇をコントロールします。

また、脳の食欲中枢に働きかけ、速やかに満腹感を覚えるようにしてくれるため、無理なく過食を防ぐことができます。

GLP-1は胃での消化と小腸からの血糖吸収をゆるやかにして、急激に血糖が高くなるのを抑える働きもあります。血糖がエネルギーとして消費され、余剰とならなければ脂肪には変わりません。

こうした働きから、GLP-1は「やせホルモン」とも呼ばれています。

実際、一部のクリニックでは、糖尿病の薬剤であるGLP-1受容体作動薬をダイエット目的に使用しています。しかし、これは薬剤の適正使用や、健康な人への副作用の観点から、決してお勧めできません。

では、薬に頼らず、GLP-1をうまく役立てるにはどうすればよいでしょうか。

GLP-1を分泌しているのは、小腸の下部や大腸にある「L細胞」です。このL細胞は、EPAやDHA、短鎖脂肪酸(後述)の受容体(物質の結合場所)を持ちます。

EPA、DHA、短鎖脂肪酸をたっぷり補給すれば、これらがL細胞に結合して刺激し、GLP-1が十分に分泌されるというわけです。

やせホルモンの分泌をおいしく手軽に促す

そこでお勧めなのが「サバ缶タマネギ」です。 

EPAやDHAの供給源とするには、旬の時期の脂ののったサバを、新鮮なうちに、脂を無駄にしない料理法で食べることが大切です。

その点、サバ缶は、旬に捕れた脂ののったサバを、そのまま缶詰にしてありますから、旬以外の時期にもEPAやDHAを補給するのにもってこいです。私もよく晩酌のおつまみに利用しています。

もう一つの短鎖脂肪酸は、食物繊維が大腸内で、腸内細菌によって発酵されることで生み出されます。

食物繊維は、人間の小腸で分解・吸収されずに大腸に到達して、そのまま便に出る、栄養とならない成分だと以前は考えられていました。それが、ここに来てGLP-1の分泌を促す短鎖脂肪酸の原料として、見直されているのです。

タマネギは、サッパリした味わいで、サバ缶との味の相性も抜群。しかも、食物繊維とともに腸内細菌のエサとなるオリゴ糖も多く含みますから、短鎖脂肪酸を作り出すのに最適です。

よりおいしく手軽に、やせホルモンであるGLP-1の分泌を増やせる、黄金コンビの「サバ缶タマネギ」。皆さんも、ぜひご活用ください。

画像: 肥満や生活習慣病を改善するGLP-1

肥満や生活習慣病を改善するGLP-1

「サバ缶タマネギ」基本の作り方(安心編集部・編)

【材料】(1人分)
サバ水煮缶…1/2缶(1缶約200g)
タマネギ…1/2個

画像: 1日に食べる量の目安

1日に食べる量の目安

【作り方】
タマネギは薄切りにし、器に盛る。
※繊維に沿って縦に切るとシャキシャキした歯応えが楽しめる。
※繊維を断つように横に切ると歯触りがやわらかく、辛味が飛びやすくなる。

画像: シャキシャキ食感重視なら縦切り

シャキシャキ食感重視なら縦切り

画像: ソフトな食感が好みなら横切り

ソフトな食感が好みなら横切り

サバ缶を汁ごと①のタマネギにのせて完成。食べるときにポン酢(またはしょうゆ)をかける。

画像: 出来上がり!

出来上がり!

味付けは、マヨネーズやゴマ油、オリーブ油、七味トウガラシなどをお好みで加えてもおいしい。

画像: 「サバ缶タマネギ」基本の作り方(安心編集部・編)

「サバ缶タマネギ」Q&A

Q1. タマネギを水にさらして辛味を抜いてもよいですか?

A1. タマネギの有効成分は独特のにおいと辛味成分の中に含まれています。これらの成分は水溶性のため、短時間さっと水にさらす程度にとどめる方が有効成分が残りやすいです。おいしく感じられる範囲で、辛味を抜き過ぎないようにするのがお勧めです。

また時間があるなら、切った後、空気にさらすのもよいでしょう。タマネギは切った後で空気に20~30分程度触れさせると、含有成分が反応して、辛味が少なく、かつ、より血液サラサラ効果の高い成分に変わります。

画像: タマネギの辛味が苦手な場合は、スライスしてから30分空気にさらすか、30秒ほど水にさらす。

タマネギの辛味が苦手な場合は、スライスしてから30分空気にさらすか、30秒ほど水にさらす。

Q2. みそ煮やしょうゆ煮のサバ缶を使ってもいいですか?

A2. みそ煮やしょうゆ煮のサバ缶は、水煮缶に比べると塩分が多くなります。水煮缶で作って、自分でしょうゆやみそを足して味付けをしたほうが、塩分をコントロールできるのでお勧めです。

Q3. サバ缶は汁ごと食べたほうがいいのでしょうか?

A3. サバ缶の汁にはさまざまな健康効果を持つDHAやEPAが豊富に含まれるので、ぜひ召し上がってください。塩分の気になる人は、少量にするとよいでしょう。

Q4. 煮たり炒めたりして加熱したら、栄養価は下がりますか?

A4. 熱を加えても、サバ缶もタマネギも、どちらも血液サラサラ効果をもたらす成分が損なわれることはありません。

Q5. まとめて作りおきしておくことはできますか?

A5. サバの脂が酸化するので、2日をめどに、なるべく早く食べ切ったほうがよいでしょう。保存する場合は、ふたのできる保存瓶に入れ、冷蔵庫で保存してください。

画像: 「サバ缶タマネギ」Q&A
画像: この記事は『安心』2020年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年12月号に掲載されています。

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