著者のプロフィール

久保 明(くぼ・あきら)
医学博士。医療法人財団百葉の会 銀座医院 院長補佐・抗加齢センター長。東海大学医学部医学科客員教授。元厚生労働省 薬事・食品衛生審議会専門委員。
1979年慶應義塾大学医学部卒業。1988年米国ワシントン州立大学医学部動脈硬化研究部門に留学。帰国後、一貫して生活習慣病診療、予防医療とアンチエイジング医学に取り組む。「高輪メディカルクリニック」を設立し16年間院長を務め、東海大学医学部付属東京病院で「抗加齢ドック」を立ち上げ、現在は医療法人財団百葉の会 銀座医院など都内で診療を行う。『名医が教える!週に1度食べないだけで体の不調はリセットできる』(日東書院本社)、『人気の「これだけ健康法」が寿命を縮める 老化指標を改善する28のステップ』(講談社)など著書・監修書多数。
▼銀座医院(公式サイト)
▼学歴・職歴(久保明事務所)
▼専門分野と研究論文(CiNii)
本稿は『最新医学でわかった新健康常識 カラダに良いこと 悪いこと』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。
寿命は長さより
〝質〟の時代へ
老化の進行を知る6つの指標
老化を数値化して
健康寿命を延ばそう!
ヒトは誕生してから亡くなるまで、常に何らかの変化をしています。ある時点まではそれを「成長」と呼び、成熟期を過ぎると「老化」と呼ぶようになります。これは誰にも起こる変化ですが、そのスピードには個人差があります。
ところで、「老化」とはどんな状態か具体的に説明できますか。「白髪が増える」「シワが深くなる」「腰が曲がってくる」などの外見の変化を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、医学的にはこうした外見の変化以外に、老化レベルを評価するポイントがいくつかあります。それが「老化指標」で、大きく6つの視点があります。
①血管の状態と血液の変化
血管に老化が生じると、酸素や栄養を全身の細胞に届けられず、老廃物の回収もままならなくなります。
老化の指標となるのは、心臓近くの太い血管から末端の毛細血管までのしなやかさや硬さ(動脈硬化)、血中のコレステロールや糖質の量などです。
②体内の酸化と糖化
「活性酸素」による細胞のサビつかせ具合(酸化)も老化指標のひとつです。呼吸をする際に一部の酸素が活性酸素になるほか、車の排気ガス、タバコ、紫外線、激しい運動や心理的ストレスなども体内の活性酸素量を増やします。
一方、体内の糖は通常エネルギーとして使われますが、過剰な糖はタンパク質を劣化させ、老化促進物質(AGEs)を産生します。これを「糖化」と言い、糖化はシワを増やすなど見た目の老化にも大きく影響します。最近では活性酸素による障害の度合いや、糖化の程度を検査することが可能です。
メタボリック・シンドロームと
ロコモティブ・シンドローム
体を動かせなくなる状態を防ぐために、目に見えない体の内面と外面の変化を調べます。
内面は内臓脂肪の量を見るメタボリック・シンドロームチェックのほか、骨や関節、筋肉の状態を確認します。外面は、歩行や運動能力に低下がないかを見るロコモティブ・シンドロームチェックを行います。
④ホルモンの量の変化
ホルモンは100種類以上ありますが、老化に伴って変化するホルモンの量を調べます。具体的には、女性ホルモンのエストラジオール、男性ホルモンのフリーテストステロン、男性&女性におけるDHEA−S、IGF−1などがあります。
⑤認知症
もの忘れと認知症の境目を判断することはなかなか難しいものです。忘れっぽくなったと自覚があったり、家族がおかしいと気づくことがあれば一度早めに受診をしましょう。
アポリポタンパクE遺伝子を解析すると、認知症になりやすい傾向がわかります。高リスクの遺伝子とわかれば、進行を遅らせる対応もとりやすくなります。
⑥不調感
原因がなかなか見つからないけれど、だるさ・こり・痛みなどの「不調感」が続くことがあります。これらは老化や病気のサインのことも。自律神経機能検査などの特殊検査が役立つことがあります。
人生100年時代と言われますが、何歳まで生きるかという〝長さ〟とともに、いかに自分らしく生きるかという〝人生の質〟も大切です。老化を数値化することで自分の体の情報をより具体的に理解し、健康寿命を延ばすために役立ててほしいと思います。

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日本人の「百寿者」の割合が
一番多い血液型は
B型だった!?
「あの人はA型だから真面目で几帳面ね」などと、血液型は性格判断の基準になることもありますが、医学的には〝血液型と性格との関連に根拠はない〟と考えられています。
血液型は、血液中に含まれる抗原や抗体などから判別され、さまざまな分類があります。医療現場では間違って輸血したりするとトラブルの元になる組み合わせもあるため、血液型の判別はとても重要です。
血液型に関してはさまざまな研究が進められ、長寿との関係を調べた興味深い調査結果(2004年)もあります。
東京都在住で100歳を超える長寿者(百寿者)269人を調べたところ、B型の人が多く見られたのです。日本の人口分布ではA型が4割近くを占めるため、単純に数だけ見ればやはりA型が多いのですが、百寿者の割合を調べるとB型が多いという結果に。今のところ、残念ながらその理由まではわかっていません。何が長寿に関係するのかも含め、さらなる調査結果がわかるまで長生きしたいところですね。
100歳以上になるとB型の割合が増える
日本人の血液型の割合は【A型:O型:B型:AB型=4:3:2:1】程度なので、百寿者にA型が少なく、B型が多いことがわかる。

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※出典 Shimizu K, et al. Blood type B might imply longevity. Exp Gerontol. 2004;39(10):1563-5.
加齢に伴って
腸内の悪玉菌が増え、
腸内環境の勢力図が変わる
近年、「腸活」が注目されていますが、加齢によって腸の状態は変化するのでしょうか。
腸内には100兆個を超える腸内細菌が存在していて、その性質から善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類に分類されます。日和見菌は優位な菌の味方をする特長があるため、腸内環境を整えるには善玉菌を優位な状態に保つことが大切です。
新生児から104歳までの健康な日本人367人の腸内環境を調べた研究(2016年)において、年齢による腸内環境の変化が認められています。
腸内細菌は生活習慣などの影響を受けるため、高齢になるほど善玉菌が減って悪玉菌が増える傾向があるのです。若い頃はなかったのに肌荒れやアレルギー症状が起こったり、体質が変わってきたという場合は、腸内細菌の勢力図が変わり、腸内環境が乱れている可能性があると言えます。
40歳を過ぎたらとくに食生活に注意し、腸内環境のバランスを整え、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を増やす食習慣を心がけたいものです。腸内細菌の検査を行える医療機関もありますので、自分の腸内環境の状態を調べてみるのもおすすめです。
※出典 Odamaki T, et al. Age-related changes in gut microbiota composition from newborn to centenarian: a cross-sectional study. BMC Microbiol. 2016;16:90.
更年期障害の
ホルモン補充療法による
乳がんの発症リスクは少ない
更年期症状のつらさを緩和するホルモン補充療法(HRT)にはさまざまなメリットがありますが、乳がんの発症リスクについて心配する人も多いでしょう。
この問題については研究が進み、昨今ではホルモン補充療法による乳がんの発症リスクは少ないとされています。ただし、リスクが全くないわけではなく、日本乳癌学会による「乳癌診療ガイドライン 2018年版(※1)」では、子宮を有する女性が「エストロゲン黄体ホルモン併用療法(EPT)」を行う場合、長期になると乳がんの発症リスクが高まるとし、子宮摘出後の女性が「エストロゲン単独補充療法を短期で行うなら、乳がんの発症リスクは増加しない(※2)」とされています。
ホルモン補充療法をいつまで、どのように行うかは人によって変わります。乳がんの発症リスクも含め、主治医と話し合って決めると良いでしょう。
ちなみに乳がんの治療の一環で行うホルモン療法は、補充ではなく女性ホルモンを抑えるためのものです。その場合、閉経前と閉経後ではホルモンがつくられる場所が違うため治療法も変わります。

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※出典 ※1)日本乳癌学会『乳癌診療ガイドライン 2018年版』. ※2)日本産科婦人科学会/日本女性医学学会『ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版』.
中高年期の男性にも
更年期障害がある
中高年期を迎え、性ホルモンが減少をすることで体に変化が現れるのは女性だけではありません。男性ホルモンのテストステロンが減少し、さまざまな体調変化が見られます。男性の場合、「LOH症候群(late-onset hypogonadism)」などで、「加齢性腺機能低下症」とも呼ばれます。
日本泌尿器科学会などによる「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き」では、この症状は女性の更年期障害と似たものが多く、イライラや無気力、めまい、ほてり、不眠、性機能の低下など多岐にわたります。治療は女性と同様に、ホルモン補充療法が多く行われています。ただし、注意したいのは症状はうつ病と似ているものが多く、うつ病と診断されてしまうケースが多いことです。ご自身を含め、まわりの人にこれらの兆候が見られたら、安易な自己判断は避けましょう。まずは血中の男性ホルモン量を測ることが、うつ病と間違えないための大切な第一歩です。
※出典 日本泌尿器科学会/日本Men’s Health医学会 『加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き』
果物をたくさん食べる
女性ほどシワが少なく
若々しい肌を
キープしやすい
加齢とともに気になってしまう、顔のシワ。老化のサインであるシワを少なく保つために最適な食習慣とはどんなものでしょうか。
オランダのエラスムス大学医療センターが、高齢者2753人(女性59%)を対象に食事と顔のシワとの関連調査を実施。健康的な食事をしていた人は、そうでない人に比べて4.19%シワの数が少ないという結果になりました(2019年)。食事の内容に注目すると、とくに赤身肉やスナック菓子を多く食べていた女性ほどシワが多く、果物を多く食べていた女性にシワが少ない傾向がありました。男性ではあまり差は見られませんでした。
シワの状態は皮膚の乾燥や紫外線を浴びた量などで変わってきます。シワの数と食習慣の因果関係はまだ証明されていませんが、健康な食事を心がけている人ほど肌のお手入れや紫外線ケアにも気をつけていると考えられ、食事を含めた生活習慣の違いが顔のシワにも現れるということかもしれません。
※出典 Selma M, et al. A healthy diet in women is associated with less facial wrinkles in a large Dutch population-based cohort. J Am Acad Dermatol. 2019;80(5):1358-1363.e2.
体重を3〜4㎏落とすと、
見た目で「痩せたね」と
気づいてもらえる!?
痩せているのが良いわけではありませんが、実際のところダイエットに取り組んだ結果を人から認められたら嬉しいものです。見た目で「痩せたね」と言われるには、何㎏ぐらい減量したら良いのでしょうか。
カナダの研究で、20~40歳の白人の男女の顔をコンピュータ上で変化させ、他人が気づくかを調べた実験(2015年)があります。対象となる男女の顔を、BMI(体格指数)分類で「肥満」とされる数値である30から、「痩せ(低体重)」とされる18.5まで段階的に加工しました。その中からランダムに2枚を選んで被験者100人に見せ、どちらが太って見えるかを質問したところ、男性で平均4㎏、女性で平均3.5㎏減量すると「痩せた」と認識されやすくなり、「魅力的になった」という印象を与えるにはさらに倍の減量が必要となることがわかりました。
ただし、外見の印象は骨格や筋肉、皮膚の状態も関わっているため、体が痩せても顔ではそれほど変化が現れない人や、痩せたことでやつれた印象になってしまう人もいます。また、これは白人をモデルに行った実験調査であるため、小柄な体格が多いアジア人の場合において、単純に当てはまるものとは言えません。
※出典 Daniel ER, et al. Heavy Matters: The Relationship Between Just Noticeable Differences in Perceptions of Facial Adiposity and Facial Attractiveness. Social Psychological and Personality Science. 2015;7(1):69-76.
フェイシャルエクササイズを
続ければ平均3歳若返り、
理想の小顔が手に入る!
男女問わず〝美〟は永遠のテーマ。そこで、顔のエクササイズを継続して行うことと、老化の関連についてアメリカのノースウェスタン大学で検証が行われました(2018年)。
40~65歳の参加者27人がフェイシャルエクササイズのインストラクターから指導を受け、自宅で8週間、毎日30分のエクササイズを行い、その後9〜20週は1日おき(週3〜4回)にエクササイズを続けました。顔にも筋肉があるため、エクササイズによって刺激することで頬のまわりやフェイスラインを引き締めることができます。
実験結果では、頬のまわりなどのふくよかさが改善、つまりリフトアップ効果が見られ、見た目の年齢も平均3歳若返ったそうです。1日30分、または1日おきにエクササイズを行うことがより効果的で、フェイスラインの改善傾向が見られるようです。
見た目の問題については主観的な要素も大きいですが、参加者の満足感も高いものだったということは効果の証明となるのかもしれません。フェイシャルエクササイズを継続して行うことは、アンチエイジングに役立つと言えるようです。
※出典 Murad A, et al. Association of Facial Exercise With the Appearance of Aging. JAMA Dermatol. 2018;154(3):365-7.
高齢者のフレイルのリスクは
太りすぎでも、
痩せすぎでも上昇する
フレイル(虚弱)とは加齢によって心身に衰えが見られ、歩行速度や活動量が低下した状態のことです。自分の意思で動ける体を保ち健康寿命を延ばすために、どのように体型を維持していくことが理想なのでしょうか。
日本で行われた大規模な調査「JACC Study」で、体格と病気や死亡リスクの関連について調べた報告があります(※1)(2010年)。調査対象は65~79歳の男女2万6747人で、BMI(体格指数)でグループ分けを行い、平均11年間の追跡調査を行いました。結果は、男女ともにBMIが標準グループ(20~22.9)で死亡リスクが最も低く、BMIが標準より低いグループ(16未満)で死亡リスクが上昇し、痩せているほどその傾向が高まりました。
また、京都府亀岡市で行われたコホート研究(※2)(2020年)では、高齢者7191人(平均年齢73.4歳)を対象に調べたところ、フレイルと判定された人の割合は、BMIが低くても高くても上昇する(フレイル有病率が最も低いBMIは24.7〜25.7)という結果も得られています。つまり、高齢者のフレイルのリスクは、太りすぎでも上昇するのです。
生活習慣病の予防のために食べすぎには気をつけたいところですが、とくに高齢者においては低栄養の状態に注意する必要があります。
厚生労働省が発表した「平成30年国民健康・栄養調査報告(※3)」によると、65歳以上の高齢者の低栄養傾向(BMIが20以下)の割合は男性で10.3%、女性で20.3%に上ります。毎日の食事でタンパク質をしっかりととり、栄養バランスを整えて健康維持&フレイル予防に努めましょう。

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※出典 ※1)Tamakoshi A, et al. BMI and all-cause mortality among Japanese older adults: findings from the Japan collaborative cohort study. Obesity (Silver Spring). 2010;18(2):362-9. ※2)Watanabe D, et al. A U-Shaped Relationship between the Prevalence of Frailty and Body Mass Index in Community-Dwelling Japanese Older Adults: The Kyoto–Kameoka Study. J Clin Med. 2020;9(5):1367. ※3)厚生労働省「平成30年国民健康・栄養調査報告」
「年をとると、もの忘れが
増える」という思い込みが
あなたの記憶力を
低下させている!?
最近、「人の名前が出てこない……」「ど忘れが増えた……」と感じているあなた。年をとると記憶力が落ち、もの忘れが多くなるのは仕方ないと思い込んでいませんか? 年をとっても記憶力が衰えるとは限らないことを示す興味深い報告(2011年)があります。
アメリカのタフツ大学の研究グループが、18〜22歳の若者と60〜74歳の高齢者を集めて単語の記憶力テストを行いました。ひとつのグループには「加齢による記憶力の衰えを調べるテストです」と伝えてから実施。もうひとつのグループには「言語能力を調べるテストです」と伝えてから実施しました。すると前者の正答率は若者48%、高齢者29%と高齢者の正答率が低くなりました。しかし、同じ問題にもかかわらず、後者の正答率は若者49%、高齢者50%と、高齢者の正答率が大幅に高かったのです。この実験によって、一概に「もの忘れが増えるのは年のせい」だけとは言えないことが裏付けられたと言えます。
年のせいにして、覚えること、思い出すことを諦めてはいけませんね。
※出典 Ayanna KT, et al. Reducing the Burden of Stereotype Threat Eliminates Age Differences in Memory Distortion. Psychol Sci. 2011;22(12):1515-7.
つらい経験が
ひとつ増えるに従って
脳年齢は約4.4カ月分上がる
悲しい出来事、つらい経験……人生にはいろいろなことがあるものです。経験が人としての幅を広げてくれるとも言えますが、健康状態に影響することはあるのでしょうか。
加齢に関する双生児研究(VETSA)に参加している平均年齢62歳の男性359人(ベトナム軍の双生児登録所から募集)に、離婚や身近な人の死亡、解雇や病気など人生が大きく変化したつらい出来事を尋ね、過去の経験と脳の状態を調べた調査があります(2018年)。被験者に脳MRI検査を行い、脳の画像を特殊な解析ソフトで分析したところ、過去のつらい経験が多いほど脳年齢が高いことがわかりました。つらい経験がひとつ増えると、経験がない場合に比べて平均0.37年分(約4.4カ月)だけ脳年齢が上がるのです。
だからといって人生に起こるさまざまな出来事を避けて通ることはできません。また、つらい出来事と脳の老化に因果関係を見いだせるわけではありませんが、過去の失敗や嫌な経験がもたらす生活環境の変化が脳の老化に関与しているかもしれません。
※出典 Sean NH, et al. Negative fateful life events in midlife and advanced predicted brain aging. Neurobiol Aging. 2018;67:1-9.
食べる食材の種類が
多い人のほうが
認知症のリスクが低くなる
食習慣の改善で認知症が予防できるなら、ぜひ取り組みたいという人も多いでしょう。
食事のとり方と認知症の発症リスクの関係を調べた2つの調査があります。
ひとつは九州大学の研究チームが長年疫学調査を行っている「久山町研究(※1)」(2013年)で、野菜や海藻、魚、卵、乳製品などを多く摂取し、米やアルコールなどを減らした人に認知症の発症リスクの低下が見られたと言います。もうひとつは国立長寿医療研究センターの報告(※2)(2017年)で、愛知県大府市の60〜81歳の住民570人を対象に食の多様性をスコア化して調べたところ、多種類の食品をとる人ほど認知症リスクが低いという結果にいたっています。両者に共通するのは〝食材の豊富さ〟という点です。
多くの食材を使った献立づくりから調理にいたるまでには、頭と手を使う多くの作業を行うため、認知症予防に効果的です。ただ、食べる食材の種類を多くすると、多彩な栄養がとれるメリットも当然ありますが、品数に比例して食べる量が増えて肥満になりやすいというデメリットもあるので注意が必要です。
※出典 ※1)Ozawa M, et al. Dietary patterns and risk of dementia in an elderly Japanese population: the Hisayama Study. Am J Clin Nutr. 2013;97(5):1076-82. ※2)Otsuka R, et al. Dietary diversity decreases the risk of cognitive decline among Japanese older adults. Geriatr Gerontol Int. 2017;17(6):937-44.
老化は一定のペースではなく
34歳、60歳、78歳で
急激に進む!
年齢はひとつずつ重ねていくものですが、老化とはどのように進んでいくのでしょうか。
アメリカのスタンフォード大学の研究チームが、18~95歳まで4263人の血液サンプルから血漿タンパク質を分析したところ、血中のタンパク質レベルは全身の細胞の状態を反映し、年齢によって異なることがわかってきました(2019年)。また、老化とは一定のペースで徐々に進行するものではなく、34歳、60歳、78歳の3段階で急激に加速することも明らかにされたのです。
人体には多種多様なタンパク質があり、タンパク質は体を構成する各細胞からの指示を実行します。つまり、ミトコンドリアなど重要な器官に関わるタンパク質レベルの変化は、体の老化と密接に結びついているのです。血中のタンパク質の研究がさらに進めば、アンチエイジングのあり方も変わってくることでしょう。
※出典 Benoit L, et al. Undulating changes in human plasma proteome profiles across the lifespan. Nat Med. 2019;25(12):1843-50.
なお、本稿は『最新医学でわかった新健康常識 カラダに良いこと 悪いこと』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※㉓「ストレスや疲労と健康の関係」はこちら