ニンニクは血圧を下げるのにまさにうってつけの食品です。ニンニク硫黄成分の分解物である硫化水素により、血管平滑筋が緩んで、血管が拡張する直接的効果。におい成分のアリシンにより、血液中の血小板が、血管壁にへばりつくのを防ぐ間接的効果。どちらの効果も発揮します。【解説】有賀豊彦(日本大学名誉教授)

解説者のプロフィール

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有賀豊彦(ありが・とよひこ)

日本大学名誉教授。長野県出身。昭和39年日本大学農獣医学部農芸化学科卒業。昭和44年日本大学医学部助手、昭和49年医学博士。ニンニク研究を1980年より行い、1981年にはニンニクオイル中から抗血小板成分としてMATSを発見。以後も抗ガン作用の解明などを行い、多数の学術論文を発表したニンニク研究の第一人者。主な著書に『最先端!ニンニク健康法』(リヨン社)などがある。

調理法を問わず血圧を降下

心臓・血管系への負担を軽減し、健康寿命をできるだけ長く延ばすうえで、血圧の管理は大変重要です。

血圧は、若いときは低いのに、20歳を過ぎると70歳まで上昇し続けることが、厚生労働省の調査で示されています。歳を取ると血圧は高くなるのです。これは、日々の生活が全身の血管に負担をかけているためで、その積み重ねの結果だと、私は考えています。

血圧が上がる原因の一つに、動脈硬化があります。これは、血液中のたんぱく質や脂質などのいろいろな成分が毎日、血液の圧力により血管壁に染み込んでいくためです(浸透説)。

血液成分の日々の蓄積というと、不可避の運命説になってしまいますが、そこで登場するのが毎日の食事です。医薬品による治療と違い、食事に気をつけて血圧の上昇を抑える生活は、無理なく継続することができます。必ずや、より長い健康寿命を与えてくれることでしょう。

毎日の食事で私が特にお勧めしたいのは、ニンニクを積極的に取り入れることです。ニンニクは血圧を下げるのにまさにうってつけの食品です。その血圧低下作用は、鱗茎が持つ硫黄成分によって直接的に、加えて間接的にも効果を発揮します。

直接的効果

ニンニク硫黄成分の分解物である硫化水素による作用です。血管平滑筋が緩んで、血管が拡張します。すると、血液の流れが緩やかになり、血圧も下がるのです。

硫化水素というと、温泉地の有毒ガスを思い出すかたも多いでしょう。私たちの体内にも、硫化水素は微量にあり、脳や心臓筋肉内で細胞保護のために働いていることがわかっています。ニンニクを食べることで、体内の硫化水素が増え、血圧を下げるほか、全身の活力が高まると考えられます。

間接的効果

ニンニクを細かく切ると、におい成分のアリシンが生成され、料理の過程でスルフィドに変化します。これを摂取すると、素早く体内に吸収されて、血液中の血小板に作用し、血管壁にへばりつくのを防ぎます。その結果、血流がよくなり、血圧が下がるのです。

アリシンは、生のニンニクを切ったりつぶしたりしないと作られません。しかし、そのままゆでたり揚げたりしても、血圧低下につながります。アリシンのもとの成分アリインや、無臭成分グルタミル・アリルシステインの形で吸収され、脂肪が燃焼します。プラーク(血管の壁にできる塊)の原因の脂質や血中コレステロールも減り、血管がやわらかくなるのです。

このほかに、フルクタン(水溶性食物繊維)により、お通じがよくなり、塩分排泄を促して血圧を下げる効果もあります。

毎日少しずつ食べるのが効果的

ニンニクは鱗片の3分の1でも、少しずつ継続してとるのが効果的です。私の経験では、1日おき(2日に1片)でも、効果がありました。ニンニク2~3g相当の粉末カプセルを毎日飲むと、効果が増大することが確認されています。中2日空けても効果が消えないので、隔日でも期待できるでしょう。

降圧剤を服用している場合でも、特別に注意することはないでしょう。私は降圧剤を服用しつつ、自分たちで作ったニンニク卵黄カプセルを毎日2個とっていますが、血圧は130/80mmHgと正常値を保っています。

ただし、もし降圧剤と併用で毎日ニンニクを食べて、めまい、ふらつきなどの症状が現れたときは、控えてください。また、空腹時にニンニクだけを食べるのは控えましょう。消化器官が荒れる恐れがあります。

料理では、肉や魚との組み合わせがお勧めです。アリシンが肉や魚の臭みを抑え、消化管への刺激を軽減してくれます。

一例として、イタリアのニンニク産地ボギエラ市の農家で頂戴したニンニク料理をご紹介しましょう。ニンニクのアリシンのにおいが、オリーブオイルでみごとに消え去り、おいしさだけが浮かび上がる一品です。作り方は下記をご参照ください。

ニンニクの機能性が栄養学の分野で注目されるようになったのは、1980年初頭のことです。インドの研究者たちによって、ニンニクの成分が血小板の凝集を抑えることが見出され、その後、日本とスペインの研究者たちにより、血小板の凝集を抑える硫黄成分が発見されました。

ニンニクが血液の流れをよくして血圧を下げ、血栓(血の塊)を防ぐことが科学的に確認されたのです。

2000年から現在まで、ニンニクによる血圧低下作用について報告された世界の科学論文は70編に達します。いずれも血圧低下作用を確認しており、私はここに自信を持ってニンニクをお勧めします。

有賀先生お勧めのブルスケッタの作り方

画像: 有賀先生お勧めのブルスケッタの作り方

【材料】(1食分)
ニンニク…1/2片
トマト(大)…1/2個
バジル(乾燥でも可)…適量
オリーブオイル…大さじ1

【作り方】
ニンニクは薄切り、トマトは1cmほどの角切りにする。バジルは細かく刻む。
①をボウルに入れ、トマトが潰れるまでしっかりと混ぜる。
②にオリーブオイルを加えさらに混ぜる。
フランスパンやトーストなどにのせていただく。

画像: この記事は『壮快』2020年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年12月号に掲載されています。

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