人体のたんぱく質を構成するアミノ酸のうち、体内で十分に合成できない9種類のアミノ酸を必須アミノ酸といいますが、卵はそのすべてを含んでいます。また、黒酢は、ほかの酢よりアミノ酸含有量が多く、20種類のアミノ酸が全部入っています。卵と黒酢で、アミノ酸をたっぷり補給すれば、体の状態を整えることができるでしょう。【解説】村上祥子(福岡女子大学客員教授・管理栄養士)

解説者のプロフィール

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村上祥子(むらかみ・さちこ)

福岡女子大学国際文理学部客員教授。管理栄養士。料理研究家。電子レンジ調理の第一人者として知られる。「ちゃんと食べてちゃんと生きる」をモット-に生活習慣病の予防・改善に役立ち、栄養バランスの取れたカロリー・塩分控えめのレシピを多数考案。福岡を拠点に、国内外で実践的な食育指導に情熱を注ぐ。
▼空飛ぶ料理家 村上祥子のホームページ(公式サイト)

卵と黒酢でアミノ酸をたっぷり補給できる

これまで、私はさまざまな酢漬けレシピを提案してきました。近年、発表した物のなかで、特に皆さんから好評なのが「黒酢漬け卵」です。これは、ゆで卵を黒酢に漬け込んだ一品。簡単に作れてとてもおいしく、しかも、優れた健康効果が期待できます。

卵はビタミン、ミネラルなどの栄養素を豊富に含んでいます。また、良質なたんぱく質をとるのにも最適な食品です。

人体のたんぱく質を構成するのは、20種類のアミノ酸です。そのうち体内で十分に合成できない9種類のアミノ酸を必須アミノ酸といいますが、卵はこの必須アミノ酸をすべて含んでいます。食品に含まれるアミノ酸のバランスを示すアミノ酸スコアも、最高値の100です。

さらに、注目したいのが、卵黄に含まれるレシチン(もしくは卵黄コリン、正式には、ホスファジチルコリン)という物質です。

高知医科大学(現・高知大学医学部)の元学長で、アルツハイマー型認知症の権威であった池田久男博士は、ラットにレシチンを与えることで、認知症が劇的に改善したというデータを報告しています。

レシチンは、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの材料となるため、脳の栄養とも呼ばれます。また、血管を強化したり、血中コレステロール値を下げたりする効果もあります。

ところで、黒酢漬け卵をお勧めすると、料理教室の生徒さんたちのなかには、卵の食べ過ぎでコレステロール値が上昇しないかと心配なさるかたがいらっしゃいます。

しかし、その点も問題ありません。食事でとったコレステロールが、血中のコレステロール値に直接影響することはないためです。厚生労働省の食事基準を見ても、コレステロールの摂取上限値は、2015年に撤廃されています。

また、卵を黒酢漬けにすることで、卵の効能に加えて、黒酢の効能がプラスされることはいうまでもありません。黒酢は、ほかの酢よりアミノ酸含有量が多く、20種類のアミノ酸が全部入っています。卵と黒酢で、アミノ酸をたっぷり補給すれば、体の状態を整えることができるでしょう。

また、黒酢の酢酸は体内でクエン酸となり、エネルギーを作り出すクエン酸回路を活性化して、疲れにくい体をつくってくれます。酢は、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の改善にも役立ちます。

めんつゆを使うと酢の酸っぱさが和らぐ

さて、どんなに健康によいメニューでも、継続的に食べるためには、おいしくて、作り方が簡単でなければいけません。そこでこのレシピでは、めんつゆを使っています。

卵を酢漬けにすると、酢の酸っぱさが際立ち、食べにくいと感じることがあります。それを補うのが、めんつゆです。めんつゆの塩分と旨みが、酢の酸っぱさを和らげてくれます。味つけも楽々きまります。

また、私は卵をゆでる際、半熟で止めて黒酢に漬け込むこともあります。酢に漬け込むと、時間が経つにつれ、卵(特に白身)がどんどんかたくなります。半熟にすれば、かたくなるのを遅らせることができます。食感のやわらかさを大事にしたいかたには、半熟卵はお勧めです。

黒酢漬けの卵は、「毎朝1個食べるといいですよ」と皆さんにお勧めしています。

もちろん、おやつや、昼食・夕食のおかずの1品としてとってもいいのですが、朝を逃すと、忙しい現代人はついつい食べ忘れてしまいがち。ならば、朝1個食べると決めて、習慣づけるといいでしょう。卵は、こうして毎日続けて食べるだけの値打ちがある食品なのです。

私自身、毎朝の定番メニューとして、もう何十年も、卵と納豆、チーズを食べています。最近は、黒酢漬けの卵が、朝の食卓にのるようになりました。卵を漬け込んだ黒酢も、大さじ1をとり、納豆にかけていただきます。70代も終わりにさしかかり、今も現役で働き続けていられるのも、卵の力のおかげです。

健康によくて、とてもおいしい黒酢漬け卵。皆さんも、ぜひお試しください。

村上祥子先生の「黒酢漬け卵」の作り方

【材料】
卵…6個
黒酢…100ml
 めんつゆ(2倍濃縮)…50ml

【作り方】
ゆで卵を作る。
500mlの容器にⒶを入れて混ぜる。ゆで卵を加え、ラップをじかにかぶせ、ふたをして冷蔵する。好みでひと口大に切った水ナスや、へたを取ったミニトマトを卵の上にのせて漬けてもよい。

画像: 村上先生の黒酢漬け卵

村上先生の黒酢漬け卵

【完成】
※4時間後からおいしく食べられる。
※卵を食べるときに漬け汁も大さじ1ほどとると、健康効果が上がる。
※冷蔵で1週間保存できる。
※漬け汁は3回まで使える。

画像: この記事は『壮快』2020年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年12月号に掲載されています。

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