肥満、糖尿病、高血圧といった生活習慣病の患者さんの健康状態を調べていくうちに判明したのが、「動物性たんぱく質の摂取不足」という問題でした。この問題を解消するために提唱するようになったのがMEC食です。酢漬け卵では、卵の健康効果に、酢の効果が加わることになります。【解説】渡辺信幸(こくらクリニック院長)

解説者のプロフィール

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渡辺信幸(わたなべ・のぶゆき)

こくらクリニック院長。 名古屋大学医学部卒業後、沖縄県の総合病院勤務を経て、伊良部島や宮古島などの離島医療に従事。予防医学に注目し、5000人以上の患者のダイエットを成功させた。肉・卵・チーズを食事の中心にする「MEC食」を提唱。『肉・卵・チーズで人は生まれ変わる』(主婦の友社)など、著書多数。地元コミュニティーFM局でパーソナリティーも務める。

認知症や要介護を招く「フレイル」の予防に最適

酢漬け卵」は、「酢+卵」という最強の組み合わせからなる健康食です。酢漬け卵を継続して食べることで、多くの健康効果がもたらされます。

私は、日ごろから、少なくとも1日3個以上の卵をとることをお勧めしています。これは、私が十年来推奨している、「MEC食」の考えに基づいています。MECは、肉(Meat)・卵(Egg)・チーズ(Cheese)の英語の頭文字をとって名付けています。

MEC食は、私の離島医療の経験から生まれました。私が赴任した沖縄の離島では、人口6500人に対し、医師は私一人。それなのに、肥満、糖尿病、高血圧といった生活習慣病の患者さんが多く、診療が追いつきません。

私は、予防医療の重要性を痛感するようになりました。そして、患者さんの健康状態を調べていくうちに判明したのが、「動物性たんぱく質の摂取不足」という問題でした。

ふだんエネルギー摂取を糖質に頼り、動物性たんぱく質をしっかりとっていないことが、多くの症状や疾患とかかわっていることがわかってきたのです。

この問題を解消するために提唱するようになったのがMEC食です。肉、卵、チーズ中心の食事で動物性たんぱく質をしっかりと摂取すれば、無理な節制なしで自然に肥満が解消し、生活習慣病の改善・予防につながるとわかったのです。

MEC食で重要視する三つの食材のなかでも、卵は重要な役割を果たしています。卵には、ビタミンC以外のすべてのビタミンが含まれており、栄養豊富で優秀な食品だからです。

卵をたっぷり食べていると、目に見えて肌ツヤがよくなり、髪の質もアップします。さらには、質のいい動物性たんぱく質をとることで、活力がわき、元気になります。血管も丈夫になるため、血圧を下げる効果も期待できます。

また、卵黄には、脂溶性ビタミンであるビタミンA、E、D、Kや、水溶性ビタミンのビタミンB1、ミネラルとして鉄が含まれています。卵白には、ビタミンB2やカルシウムが多く含まれます。卵は、これらのビタミン、ミネラルの補給に役立つのです。

そのほか、卵に含有されるレシチンには、神経伝達物質を生成する働きがあります。記憶力を高める作用があり、アルツハイマー型認知症の予防にも有効です。

もしかしたら、「卵を多く食べると、コレステロールのとり過ぎになるのでは?」と心配するかたがおいでかもしれません。しかし、心配はありません。

2015年に厚生労働省が発表した『日本人の食事摂取基準』で、食事によるコレステロールの摂取基準値の上限が撤廃されました。食事によるコレステロール摂取が、血中コレステロール値に直接反映するわけではないのです。

さらに、2020年の同じ食事基準の指針では、フレイル(心身の虚弱状態)予防のため、たんぱく質をより積極的に摂取することが勧められるようになりました(50歳以上のたんぱく質の摂取目標量の下限値が引き上げ)。

フレイルは、放置すれば、認知症や要介護へと進行していく危険な状態。フレイルの予防のためにも、卵は率先して食べるべき食品なのです。

ただし、すでに脂質異常症をお持ちのかた、心臓病のかたは、主治医に相談をしたうえで食べるようにしてください

酢の効果がプラスされ健康維持により役立つ

画像: 「酢+卵」は生活習慣病に効く!

「酢+卵」は生活習慣病に効く!

酢漬け卵では、これらの卵の効果に、酢の効果が加わることになります。

酢についても、多くの健康効果が知られています。血圧や血糖値の降下や、酢酸による腸内環境改善、クエン酸による疲労回復なども報告されています。

「酢+卵」の相乗効果もあります。例えば、卵のたんぱく質で血管が強化されれば、酢の降圧効果はより確かなものとなるでしょう。

また、酢漬け卵を活用して糖質制限を行えば、ダイエットにも大変有効です。糖質ゼロの卵は糖質制限に最適な食品であるだけではなく、酢には、よけいな脂肪の蓄積を抑える効果があるからです。酢漬け卵は、生活習慣病の改善・予防が期待できる食品といえます。

また私は、新型コロナの影響が続く状況のなかで、感染症予防に1日6個の卵を食べるようお勧めしています。人体の生体防御に働く免疫グロブリンは、動物性たんぱく質から作られるからです。

6個というと食べるのが大変そうですが、酢漬け卵があれば、味にも変化がつき、楽しく食べられるでしょう。また、酢漬けにすれば、作りおきが可能で保存がききます。職場や学校へも持って行きやすいので、いつでも手軽に食べられます。

卵をたくさん摂取するためにも、ぜひ、酢漬け卵をフル活用し、健康維持に大いに役立てていただければと思います。

酢漬け卵の作り方

画像1: 酢漬け卵の作り方

【材料】(作りやすい分量)
卵…5個
[漬け酢]
酢…200ml
きび砂糖(白砂糖でも可)…大さじ1
塩…小さじ1/2

【作り方】
卵をかためにゆで、殻をむく。

画像2: 酢漬け卵の作り方

漬け酢の材料を小鍋に入れて火にかけ、調味料が溶けたら火を止める。

画像3: 酢漬け卵の作り方

清潔な保存瓶に①、②を入れ、半日ほどおく。

画像4: 酢漬け卵の作り方

【完成】
※冷蔵庫で保存。5日ほどで食べきる。
※酢の刺激が好きな場合は、漬け酢を加熱しなくてもよい。

画像: この記事は『壮快』2020年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年12月号に掲載されています。

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