東洋医学を元にした食養生の陰陽論では、ゴボウは体を温める「陽性」の性質を持つと考えます。平熱が低い、くちびるの血色が悪い、手足が冷えるなど、体が冷えやすい陰性体質の人は、酢のなかで最も体を温める作用が強い梅酢、または玄米黒酢や富士酢を用いて酢ゴボウを作るとよいでしょう。【解説】郷美由貴(あくあ美療鍼灸院院長・鍼灸学修士・食養指導師)

解説者のプロフィール

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郷美由貴(ごう・みゆき)

あくあ美療鍼灸院院長・鍼灸学修士・食養指導師。明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科修士課程修了。東洋医学に基づく食養生理論の研究により鍼灸学修士号を取得。全日本鍼灸学会正会員。はり師きゅう師、自然医食フォーラム認定食養指導士、正食協会マクロビオティック料理教室上級 修了。

酢がゴボウの消化を促し栄養の吸収がアップ

私は、これまで10年以上、アトピー性皮膚炎や摂食障害、ガンなどの患者さんに食養生の指導を行ってきました。今回、紹介する「酢ゴボウ」は、そうした患者さんの食薬として、大いに力を発揮する食品です。

酢ゴボウは、食べやすい大きさに切ったゴボウをゆで、酢に漬け込むだけで作れるので、ぜひ皆さんも試してほしいと思います(作り方は下記参照)。 

東洋医学を元にした食養生の陰陽論(万物はすべて陰と陽のエネルギーで構成されるという思想)でいうと、ゴボウはゆっくりと成長し、寒い時期に旬を迎えるため、体を温める「陽性」の性質を持つと考えます。地中深くにまっすぐ伸びるので、生命力の強い食材ともいわれています。

保温作用や滋養に優れ、毎日食べることで、根菜の氣(根氣)を取り入れることができます。病気治しに向き合う「根性」を養いたい人にはお勧めの食材です。

また、ゴボウには現代人が不足しがちな食物繊維フラクトオリゴ糖が豊富に含まれています。これらの成分は、大腸の善玉菌のエサになり、便秘の解消や、腸内環境の改善に優れた効果があります。大腸が元気になると自然治癒力のアップにもつながります。

東洋医学では「肺―大腸―皮膚」は密接な関係にあるとされます。大腸の調子を整えることは、カゼの予防や、ぜんそく、アトピーなどの皮膚疾患の改善にも役立ちます。大腸の美しさが呼吸器や皮膚にも反映されるのです。

一方、酢(梅酢以外)は体を冷やす「陰性」の作用を持つため、陰陽のバランスから、陽性のゴボウと非常に相性がよい調味料です。食物繊維が多いゴボウは、よくかまずに食べると消化不良を起こす可能性があります。酢は消化を促進する働きがあるので、いっしょにとることで、ゴボウの栄養を吸収する手助けをしてくれます。

胃腸の弱い人はすりゴマをかけるとよい

東洋医学の陰陽論では、体質も「陰」と「陽」の二つに分類します。私たちは、この二つを鍼灸や漢方、食事を通して調和させ、自然治癒力を高め、病気になりにくい体づくりを行います。酢ゴボウに使う酢にも、体質の陰陽バランスに合った選び方があります。

陰性体質の人は、体が冷えやすい人です。平熱が低い(35度~36度台前半)、くちびるの血色が悪い、下くちびるが腫れぼったい、舌が白っぽい、手足が冷える、日中に5回以上または夜間に1回以上オシッコをする、などが特徴です。

このような陰性体質の人は、酢のなかで最も体を温める作用(陽の氣)が強い梅酢、またはほかの酢より体を冷やす作用(陰の氣)がやや弱い玄米黒酢や、富士酢(昔ながらの製法で作った純米酢)を用いて、酢ゴボウを作るとよいでしょう。

一方、陰性体質に見られるような特徴がなく、ふだんから活動的で体が温かく感じられる人は、陽性体質と考えられます。そういう人は、陰の氣が強い米酢や穀物酢を用いて、酢ゴボウを作ってください。

アトピーの患者さんには陰性体質が多いので、基本的には梅酢か玄米黒酢を使ってもらいます。また、ゴボウの陽の氣をさらに高めるには、漬け酢を沸騰直前まで加熱して使うといいでしょう。

陽の氣には、体を温める以外に、細胞を引き締める作用(求心性・収縮性)があります。逆に、アトピーなどによる体の炎症は、患部が膨れ上がり、悪化すれば広範囲に広がる、陰の氣の作用(遠心性・拡散性)で起こっています。

食が原因で悪化するアトピーの患者さんには、陰陽のバランスを取り、陽の氣の強い酢ゴボウなどをとってもらいます。そうすることで、炎症が治まり、かゆみや皮膚症状が落ち着いてくるのです。また、こうした食養生を行うことで、「アトピーが再発しない」とよく不思議がられますが、それは陰陽のバランスが取れた証拠なのです。

最後に、酢ゴボウのとり方の注意点をお話ししましょう。

酢ゴボウは、毎日50gを目安に食べてください。しかし、胃腸が弱い人には、酢ゴボウの酸味が刺激となります。そういう人は、胃の粘膜を守るために、すりゴマをかけてください。

食べ方のポイントは、よくかむことです。目安は、ひと口30~50回。そうすることで消化がよくなるうえに、唾液がしっかり出ます。唾液には、殺菌作用や活性酸素を除去する働き、体液のpH(酸性とアルカリ性のバランス)のよい状態を保つ働きなどがあります。

よくかみ、あごを動かせば、脳に適度な刺激が加わり、美容や健康維持に欠かせないホルモンの分泌も促されます。せっかくならよくかんで、酢ゴボウの効能をより高めましょう。

なお、酢はいずれも添加物の入っていない物を選んでください。ゴボウは、できれば無農薬栽培の物がいいでしょう。

郷先生の食薬「酢ゴボウ」の作り方

画像: 郷先生の食薬「酢ゴボウ」の作り方

【材料】
ゴボウ…150g
酢(だしコンブ10gを1時間浸しておく)…1/2カップ
 てんさい糖…大さじ2~3
 天然塩…ひとつまみ
 白すりゴマ…大さじ2

【作り方】
ゴボウを洗い、5cm程度の長さに切る(太い場合は縦に1/2もしくは1/4に切る)。
鍋に湯を沸かして酢(分量外)を数滴入れ、①を入れる。歯ごたえが少し残るくらいを目安に、2~3分下ゆでする。ザルに上げ、水気をよく切る。
平たい保存容器にⒶを混ぜ合わせて入れ、水気をふいた②を温かいうちに入れ、漬け込む。ひと晩おくとおいしく食べられる。

【保存】
冷蔵庫で1週間保存できる。

画像: この記事は『壮快』2020年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年12月号に掲載されています。

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