酢も甘酒も、発酵食品です。微生物の働きにより作られた発酵食品は、善玉菌を増やして腸内の環境を整えるので、免疫力アップに役立ちます。また、腸内環境が改善して代謝がよくなることで、肌のシミやシワ、爪のトラブル、白髪や薄毛などの予防・改善に効果を発揮します。【解説】柴亜伊子(あいこ皮フ科クリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

柴亜伊子(しば・あいこ)

あいこ皮フ科クリニック院長。皮膚科医。奈良県立医科大学医学部卒業。同大学皮膚科助手、美容皮膚科クリニック院長などを経て、2010年から現職。体の内側から健康を取り戻す栄養療法を皮膚科・美容皮膚科の治療に取り入れ、オーソモレキュラー実践医療機関では数少ない特薦クリニックに認定されている。著書に『きれいな肌をつくるなら「赤いお肉」を食べなさい』(青春出版社)がある。
▼あいこ皮フ科クリニック(公式サイト)

手作り甘酒は患者さんにも勧めている

米こうじを発酵させて作った甘酒に、酢を入れたのが「酢甘酒」。酢と甘酒という、優れた効能を持つ食品どうしを組み合わせたレシピです。

酢を飲用する健康法は昔からよく知られています。ただ、そのままでは酸が強過ぎて胃を傷めるため、何かで割らないと飲むことはできません。さらに、甘みをつけたほうが飲みやすいので、最近は希釈して飲むタイプの「お酢ドリンク」市場が活況のようです。

けれども、こうした商品には人工甘味料や、果糖ブドウ糖液糖、香料などが添加されています。果糖ブドウ糖液糖は、デンプンから安く大量に作られるため食品メーカーなどで重宝されていますが、砂糖より血糖値を上げやすい、中性脂肪として蓄えられやすいなどの、リスクが懸念されています。

酢は確かに健康に有益です。しかし、飲みやすくするためにさまざまな物が添加されている商品となると、もろ手を挙げてお勧めすることはできません。

そこで活用したいのが、酢甘酒です。酢と甘酒は、いずれも伝統的な発酵食品。安全なうえそれぞれを単独でとるよりもおいしく、さらに健康効果を高められます。

こうじの甘酒は、今は市販品もたくさん出ていますが、流通させるために加熱処理してある品も多く、購入する場合は見極めが肝心です。自分でも簡単に作れるので、私は患者さんに、手作りをお勧めしています(作り方は下記参照)。

私も自宅で、ヨーグルトメーカーを用いて、よく作っています。冷凍もできるので、好きなときに好きな量を飲むことができます。

米こうじと水だけで作る甘酒の作り方

画像1: 米こうじと水だけで作る甘酒の作り方

【材料】
・乾燥(もしくは生) 米こうじ…200g
・水…400ml(生米こうじの場合は250ml)
※炊飯器で作る場合は、水ではなくお湯を用意する。

【炊飯器を使う作り方】

画像2: 米こうじと水だけで作る甘酒の作り方

手でよくほぐした米こうじを内釜に入れ、約60度のお湯を注ぐ。

画像3: 米こうじと水だけで作る甘酒の作り方

炊飯器のふたを開けて上からふきんをかぶせ、保温モードで約6時間保温する。途中、温度が下がったらふたを閉めて温度を調整する。黄色みを帯び、甘みが出ていたら完成。

【ヨーグルトメーカーを使う作り方】

画像4: 米こうじと水だけで作る甘酒の作り方

手でよくほぐした米こうじを専用容器に入れ、水を注いでふたを閉める。

画像5: 米こうじと水だけで作る甘酒の作り方

温度を60度、タイマーを6時間にセットして、スタートボタンを押す。黄色みを帯び、甘みが出ていたら完成。

【食べ方】

画像6: 米こうじと水だけで作る甘酒の作り方

出来上がったら清潔な容器に移して粗熱を取り、冷蔵庫か冷凍庫で保存。1週間で食べきるのが目安。1日大さじ4杯程度をとるのがお勧め。
※酵素が失活するため、60度を超えるまで温めないこと。

血糖値上昇を抑制しつつおいしさも栄養価も増す

酢と甘酒を組み合わせることで、具体的にどのようなメリットが期待できるでしょうか。まず注目したいのは、酢も甘酒も、発酵食品であるということです。

体内の免疫細胞の多くが腸に存在するため、腸は人体最大の免疫器官といわれます。そこに棲息する腸内細菌は多種多様。悪玉菌が抑制され、善玉菌が多くなれば、腸内環境がよくなり免疫力も高まります。

微生物の働きにより作られた発酵食品は、善玉菌を増やして腸内の環境を整えるので、免疫力アップに役立ちます。腸がきれいになれば、栄養の吸収も、排出、つまりお通じも改善。体の土台をつくるうえでこれも大事な要素です。

腸内環境がよくなると、細菌の働きによりビタミンB群ビタミンKが産生されます。ビタミンB群は甘酒に豊富ですが、私はむしろ、腸内で産生されるビタミン類の恩恵のほうが大きいのではと考えています。

ビタミンB群は、すべての細胞のエネルギー産生に必要な栄養素。強力な抗酸化作用があり、老化を促進するAGEという物質を分解する働きもあります。

また、腸内環境が改善すると代謝がよくなります。ビタミンB群の働きも手伝い、皮膚や毛髪の代謝が促されることで、肌のシミやシワ爪のトラブル、白髪や薄毛などの予防・改善に効果を発揮します。

「腸皮膚相関」という言葉がありますが、そのとおり、腸の状態は、皮膚とも密接な関係があるのです。

さらに甘酒には、ビタミンB群以外にも、グルコシルセラミドフェルラ酸など美肌に役立つ成分も豊富。健康と美容に役立つ天然のサプリメントといっても過言ではありません。

ちなみに、腸内環境がよくなることで生まれるビタミンKは動脈硬化や心血管疾患の予防に有効です。骨にカルシウムを定着させる作用もあります。酢には、カルシウムの吸収を高める作用もあるので、酢甘酒は骨粗鬆症予防に期待大といえます。

画像: 血糖値上昇を抑制しつつおいしさも栄養価も増す

このように、腸内環境の改善により多くの健康・美容効果が生まれますが、酢甘酒をとるメリットは、ほかにもあります。

それは、甘酒の摂取による「血糖値の上昇」という短所を、酢が抑制する点です。

甘酒の甘さは、こうじ菌による発酵の過程で、酵素がデンプンをブドウ糖に変えることで生じます。ブドウ糖は体に吸収されるスピードが速く、即エネルギーになるのが利点です。

甘酒には血糖値の上昇を抑制する食物繊維も含まれるので、単純にその上昇ぐあいをブドウ糖単体と比較するわけにはいきません。とはいえ、体への吸収が速いということは、血糖値を上げやすいとも考えられます。

私はこれまで、「甘酒は1日に60ml程度まで、それも食後にとるほうがよい」と患者さんに勧めてきました。血糖値の急上昇を少しでも避けるためです。

酢甘酒も、基本的には食後のデザートとしてとることをお勧めしますが、酢を味方につければ、より安心です。大さじ1杯の酢を食事といっしょにとると食後の血糖値上昇が緩やかになることが、研究により判明しています。

酢は、体の代謝を高め、血液中の糖を体内に取り込みやすくします。酢と甘酒を同時にとることで、糖の消費が促され、甘酒による血糖値の上昇が抑えられるのです。

一方、併せてとることで、酢の短所を甘酒が補うといった面もあります。

酢は代謝アップや疲労回復、血圧や総コレステロール値の降下、内臓脂肪の減少など、多くの効能が認められています。ただ、冒頭で述べたとおり、何かで希釈しないと飲めません。

少量の甘酒に酢を加えるか、水で薄めた酢に甘酒を少量加えるといった方法なら、よりおいしさも栄養価も増し、効能を手軽に得られるというわけです。

例えば酢甘酒は、胃もたれや胃痛があるかたにお勧めです。胃の出口に、幽門という、十二指腸につながる部位があります。ここの弁が緩んでいると、食べ物が胃の中にとどまらず、きちんと消化されないまま、小腸に送られてしまうのです。

酢を食前にとると、胃酸の分泌が促進されることにより胃の中の酸度が上昇。㏗値が下がることで、幽門が閉じられます。食べ物が入ってきても、胃の中にとどまるので、しっかり消化できるというわけです。

酢には、胃の粘膜を保護する作用もあるので、特に胃の消化力を上げたい人は、酢甘酒を食前にとるといいでしょう。

酢甘酒はこのように、胃から腸までを広くカバーして、生活習慣病の予防・改善はもちろん美容面にまで、効果を発揮します。ぜひ皆さんも、手作りして酢甘酒を、お試しください。

酢甘酒の作り方

画像1: 酢甘酒の作り方

【材料】(1日にとる目安量)
甘酒(米こうじで作った物。市販品も可)…適量(好みで調整)
酢…大さじ1
※甘酒の作り方は上記参照。

画像2: 酢甘酒の作り方

【作り方】
甘酒に酢を加え、よく混ぜる。

画像3: 酢甘酒の作り方

■酢甘酒で撃退!
⃝高血圧、動脈硬化、心血管疾患 ⃝血糖値の急上昇 ⃝内臓脂肪の減少 ⃝老化(肌のシミやシワ、白髪や薄毛) ⃝胃もたれ、胃痛など胃の症状 ⃝骨粗鬆症 ⃝便秘 ⃝疲労

画像: この記事は『壮快』2020年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年12月号に掲載されています。

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