解説者のプロフィール

周東寛(しゅうとう・ひろし)
南越谷健身会クリニック院長。医学博士。専門はガンとアレルギー。食事療法や運動療法を指導するとともに、自ら実践。心身医学療法なども加え、トータルヘルスの確立に注力している。テレビや新聞、雑誌などのメディアでも活躍。『医師がすすめる! 酢タマネギ薬食術』(村上祥子氏と共著。マキノ出版)など、著書多数。
▼南越谷健身会クリニック(公式サイト)
酢と豆乳のダブル効果で若者にも人気
「酢」は、健康によい優れた発酵調味料として知られています。ふだんの食生活に酢を上手に取り入れられれば、さまざまな健康効果が得られるでしょう。
大切なことは、継続的に摂取すること。そのために、いろいろな食材と組み合わせたり、調理方法を変えたりして、無理なく習慣的にとる工夫が肝心です。
そこで今回、私は、酢と豆乳を組み合わせた、「酢豆乳」をご紹介したいと思います。
この酢豆乳、実は最近、若者の間で流行中。なんと、私の母国、台湾の定番朝食メニュー、「鹹豆漿(シェントウジャン)」がブームの源なのです。
鹹豆漿は、温めた豆乳に酢を加えて作る、おぼろ豆腐のような食感のスープです。干しエビやザーサイ、ネギなどをトッピングしていただきます。日本語でいうなら「酢豆乳スープ」といったところでしょうか。ヘルシーでおいしいということで、都内では、鹹豆漿の専門店がいくつもできるなど、人気だそうです。

台湾の酢豆乳、鹹豆漿
「酢+豆乳」には、実にさまざまな健康効果があります。
まず、酢の効果です。酢の主要成分である酢酸には、血液をサラサラにする作用があります。それにより、血流改善、血栓(血の塊)ができるのを予防する、コレステロール値を下げる、動脈硬化を予防する、といった効果があります。また、カルシウム吸収率を高める作用もあるため、骨粗鬆症が気になるかたにもぴったりです。
ほかにも、酢には血圧上昇に関係するホルモンを抑制させる働きや、内臓脂肪を減らす効果、疲労回復効果も期待できます。
また、酢が胃の粘膜を刺激すると、グレリンというホルモンが分泌されます。それにより、元気がでないときでも食欲を増進してくれます。
同時に、酢は唾液の分泌を促し、口腔内の乾燥を防ぎます。唾液には、抗菌・抗ウイルス物質も含まれるため、免疫力が高まります。これはコロナ禍の今、特にうれしい効果です。
豆乳も負けていません。豆乳の原料となる大豆には、ポリフェノールの一種で、抗酸化作用のあるイソフラボンが含まれています。
イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと似た作用を発揮しますので、こちらも骨粗鬆症の予防に役立ちます。また、肌や髪のツヤ、ハリを保つ作用があります。
さらには近年、イソフラボンを豊富に含む大豆食品を食べることは、糖尿病のリスク低減に役立つという研究も発表されています。
大豆を食べることで、コレステロール値や血糖値が下がり、耐糖能異常(空腹時血糖値が正常値と異常値の間の状態で、糖尿病予備軍ともいわれる)の改善が期待できるのです。
また、豆乳には、動脈硬化予防に役立ち、血管を強くして高血圧を防ぐレシチンや、整腸作用があり、便秘を解消する大豆由来のオリゴ糖が含まれます。
このオリゴ糖は、腸内環境を整える乳酸菌などのエサになりますから、大腸に善玉菌が増え、免疫力アップも期待できます。
そのほかに、特に注目したいのは、肥満予防効果です。大豆には、植物性たんぱく質が豊富に含まれています。植物性たんぱく質を含む食品は、動物性の食品よりもカロリー(エネルギー)を抑えられ、代謝を活発にする水溶性ビタミンを含むことが多いので、ダイエットに効果的なのです。
糖尿病へのリスク低減、肥満予防効果や、免疫アップなどは、酢と豆乳に共通した健康効果でもあります。ダブルの効果が得られるので、大変頼もしいメニューだといえます。
身近な食品で簡単に作れる
ここまで、酢+豆乳の健康効果をお話してきました。鹹豆漿は簡単に作れますし(下記参照)、豆乳に酢を加えるだけなら、より手軽です。
酢豆乳に期待できる健康効果をまとめると、次のとおりです。
❶高血圧、糖尿病など生活習慣病の予防・改善
❷血管の強化、血流改善、血栓 予防、動脈硬化予防
❸骨の強化、骨粗鬆症予防
❹ダイエット効果
❺免疫力アップ
健康で長生きするためには、日々の食事が何よりも大切です。身近な食品で簡単に作れる、栄養たっぷりの酢豆乳を食事に取り入れ、不調の改善や病気の予防に役立ててください。
酢豆乳の作り方

【材料】(1日に飲む目安量)
豆乳…200ml(好みで調整)
酢…大さじ1

酢はお好みでどんな種類でもOK!

【作り方】
豆乳に酢を加え、よく混ぜる。
※好みでハチミツなどを少量加えてもよい。

[別記事:きじまりゅうたさん考案!酢豆乳美味レシピ→]

この記事は『壮快』2020年12月号に掲載されています。
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