解説者のプロフィール

髙品昇平(たかしな・しょうへい)
姿勢改善サロンRoots院長。鍼灸師、あん摩マッサージ師、マニュアルセラピスト。東洋大学健康スポーツ学科卒業後、鍼灸マッサージ専門学校で国家資格取得。スポーツ系整骨院、フィットネスクラブ内治療院で延べ10000人以上の臨床経験を経て独立。施術のほか、セルフケアの指導も熱心に行っている。
▼姿勢改善サロンRoots(公式サイト)
簡単にできて効果の高いセルフケア
腰痛やひざ痛、肩こり、座骨神経痛などで、さまざまな治療院に行っている人は多いでしょう。しかし、「治療を受けたときは調子がよくても、また悪くなってしまう」というケースが大半ではないでしょうか。
重大な病気によるものや、急性のものは別として、ほとんどの人が悩んでいる慢性的な痛みやこりは、普段の姿勢や生活習慣に根本的な原因があります。そこに働きかけず、施術だけ行うのでは、どうしても一時的な効果にとどまってしまうのです。
日々の診療を通じてそのことを痛感した私は、もっと根本的な治療をしたいと考えました。そこで、数年前から、治療院としてはちょっと変わった手法を取っています。
それぞれの痛みや不快症状の根本原因と、それを改善する方法をつきとめた上で、ご自身で主体的に治療していただくのです。
といっても、難しいことは何一つありません。数分程度でできる簡単なセルフケアをお教えし、生活の中でやっていただくだけです。そのケアは、症状の根本に働きかけるので、数分程度でも非常によく効きます。
ほとんどの方は、長く悩んできた腰痛、ひざ痛、首や肩のこり・痛み、座骨神経痛、股関節痛などを、確実に改善できています。手術が必要と言われた椎間板ヘルニアによる腰痛が改善でき、手術が回避できた例もあります。
お勧めするセルフケアは、症状によってさまざまですが、中でも基本的かつ重要で、全員にお勧めしているのが、「テニスボールを使って、目的の部位を刺激する方法」です。
刺激具としてテニスボールを選んだのは、大きさと硬さがちょうどよく、セルフケアの器具として最適だからです。
テニスボールが1個あれば、体のいろいろな部位を刺激でき、硬くなった筋肉を自分でうまくほぐせます。しかも、即効性があるのも大きな特徴です。
来院した患者さんに、テニスボール刺激を体験していただくと、その場で症状が和らぐので驚かれます。その体験が、続ける意欲にもつながります。

こんな姿勢になっていませんか?
お尻が後ろに突き出た「反り腰」の姿勢。特に女性に多い。
腰に負担がかかるので、腰痛を引き起こしやすくなるだけでなく、姿勢のバランスがくずれることでひざ痛や肩こり、首こりを招くことも。
テニスボール刺激を続けていくと、股関節が柔軟になり、反り腰も改善してくる。
股関節を柔らかくするお尻の刺激
今回は、特に効果が高く、腰痛、ひざ痛、肩こり、座骨神経痛、股関節痛などに効くテニスボール刺激3種をご紹介します。
具体的なやり方は下項の通りですが、ここでは、それぞれの目的、特徴、注意点などを挙げておきましょう。
テニスボールが家になければ、あらかじめ用意しておいてください。スポーツ用品店などで、2〜3個で数百円で入手できます。テニスボールは、100円ショップでも売られていますが、比較的劣化が早いので、習慣的に使うには、本格的なテニスボールをお勧めします。
①お尻の刺激
あおむけに寝て、お尻の上部の効くポイントをテニスボールで刺激する方法です。
この付近の筋肉のこわばりをテニスボールでほぐすと、硬くなった股関節が柔らかくなり、動きがよくなります。
股関節が硬いと、正しい姿勢を維持しにくくなり、お尻が後ろに突き出た「反り腰」の姿勢になりがちです。その姿勢が、腰痛やひざ痛、首や肩のこりを引き起こしたり、悪化させたりします。
その元を絶つのに、テニスボールを使ったお尻の刺激が、とても効果的です。まずは、これだけでもやってみてください。行う前より足がよく動くようになるのを、すぐ実感できるはずです。
刺激するためにひざを倒すとき、無理に床に近づける必要はありません。股関節が硬い人ほどひざが浮きますが、そのまま脱力するだけでOKです。
やっていると自然にひざが下がってきて、それとともに股関節も柔らかくなってきます。
②太もも裏の刺激
いすに座って、テニスボールで太ももの裏をほぐす方法です。
股関節が硬いと、同時に太ももの裏側もこわばりやすくなります。それをほぐして、股関節の動きをさらによくするのに効果的です。床に長座(足を前に伸ばして座る)して行っても構いません。
いずれの場合も、テニスボールにグイグイ足を押しつける必要はありません。脱力し、上体を少し前に傾けるだけで、十分刺激できます。
③足裏の刺激
立ち姿勢でテニスボールを踏んで、足の裏をほぐす方法です。立ち姿勢が安定しない人は、壁などに手をついて行いましょう。
現代人は、足の裏もこわばっている人が多く、同時に足の後ろ側が硬く突っ張って、腰痛やひざ痛の要因になっています。
テニスボールで足裏を刺激すると、足の後ろ側がゆるみます。それが、足腰の痛みに効果を発揮します。
以上のほか、がんこな腰痛・ひざ痛のある人は、これらのテニスボール刺激に加えて、太ももの前面を伸ばすストレッチを行うと、より効果的です。
グイグイは禁物!脱力して行うこと
テニスボール刺激は、目安の時間、回数の範囲内で行い、やり過ぎないようにしてください。
一番重要なことは、「脱力して行う」ということです。
「テニスボールで体を刺激する」というと、ついつい力を入れてグイグイやってしまいがちですが、それは逆効果です。「痛気持ちいい」感覚を目安に、無理な力は加えず、脱力して行いましょう。
もしもやっている間に、痛みが増したり、強く不快な痛みが出たりしたら、いったん中断して、専門家の治療を受けてください。
テニスボール刺激は、1日1回でも効きますが、少なくとも最初のうちは、朝と晩の2回行うと、さらに効果的です。
続けていると、自然に姿勢がよくなり、若々しくなってきます。それと同時進行で、腰痛、ひざ痛、肩こりなどが改善されていきます。
簡単で効果的なテニスボール刺激で、ご自分の体をぜひご自分でケアしてみてください。
以下のアドレスより、テニスボール刺激のやり方の動画が見られます。
https://www.youtube.com/channel/UCulvwKTlo4psnP0K11pg7_A
またはYouTubeで「姿勢改善サロンRoots」と検索
テニスボール刺激のやり方
【用意するもの】
テニスボール1個

①お尻の刺激
【刺激ポイント】
お尻の上部で、腰の左右前方に触れる腰骨の出っ張りの真裏付近。指で押すと痛気持ちいい刺激を感じる。

【やり方】
❶ヨガマットや畳、布団の上などにあおむけに寝て、両ひざを立てる。
❷左右一方の刺激ポイントに、テニスボールを挟む。

❸テニスボールを挟んだ側のひざを、外側に倒す。そのまま20~30秒キープする。
※このとき、無理にひざを倒さないこと。脱力して自然にひざが倒れる感じでOK。

❹テニスボールの位置を上下左右に少しずつずらして、5~10ヵ所ほど、同様に刺激する。
❺反対側も同様に行う。
②太もも裏の刺激
【刺激ポイント】
太もも裏の中央付近で、押すと痛気持ちよさを感じるところ。

【やり方】
❶安定した座面の平たいいすに、深めに腰かける。

❷左右一方の太ももを少し持ち上げ、刺激ポイントにテニスボールを挟んで足を下ろす。

❸テニスボールの位置を調整し、痛気持ちいいと感じるところを見つけたら、そこで足の力を抜き、ボールを挟んだ側の太ももの上に両手を軽く当て、上体を軽く前に倒す。そのまま20~30秒キープする。

❹テニスボールの位置を上下左右に少しずつずらして、5~10ヵ所ほど、同様に刺激する。
❺反対側も同様に行う。
③足裏の刺激
【刺激ポイント】
足裏の内側、中央、外側のライン。

【やり方】
❶床に立ち、左右一方の足をテニスボールに乗せ、刺激ポイント①を、少し圧をかけながら、ボールをゆっくり転がして刺激する。

❷痛いところがあったらそこで止め、テニスボールを踏む。そのまま20秒ほどキープする。

❸同様に、刺激ポイント②と③も同様にして行う。刺激ポイント③はボールが外れやすいので気をつけながら行う。
❹反対側も同様に行う。
太ももストレッチ
※転倒しないよう十分に気をつける。
※無理をせず、できる範囲で行う。
【やり方】
❶立って壁などに手をつく。
❷左右一方のひざを深く曲げ、同じ側の手で足首を持つ。
❸上体が前に倒れないようにしながら、曲げたほうのひざを後ろに引いて、反対側のひざに近づける。曲げたほうの太ももの前面が伸びるのを感じながら、20~30秒キープする。
❹反対側も同様に行う。


この記事は『安心』2020年11月号に掲載されています。
www.makino-g.jp