糖尿病の基本的な対策は、食事療法と適度な運動、さらに必要に応じて薬を用いるのが原則ですが、それでも検査値が改善できないケースも少なくありません。そんなとき、当院では、「脾経ストレッチ」と「広背筋ストレッチ」を勧めています。【解説】福辻鋭記(アスカ鍼灸治療院院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

福辻鋭記(ふくつじ・としき)
アスカ鍼灸治療院院長。日中治療医学研究会員。日本東方医学会会員。東洋鍼灸専門学校を卒業後、鍼灸が美容に効果的であるという一面に興味を持ち、美容術の技術と理論について研究。日本の名医50人にも選ばれた、鍼灸の第一人者。カイロプラクティック、整体などの技術も学び、昭和60年にアスカ鍼灸治療院を開設。幅広い症状への治療を行っている。女性雑誌・健康雑誌・テレビ等でも活躍中。https://asuka-sinkyu.com/

ストレッチを加えると改善する場合が多い

今や国民病といわれる糖尿病。当院にも、糖尿病の悩みを抱えた方が多く訪れます。中でもよく聞かれるのが、「食事療法や運動をがんばっても検査値が改善しない」「薬に頼らないで改善したい」といった訴えです。

そんなとき、当院では、鍼治療を行うとともに、自分でできるケアとして、「脾経ストレッチ」と「広背筋ストレッチ」を勧めています(やり方は下項参照)。

このストレッチは、東洋医学やカイロプラクティックの理論に基づいて考案したものです。といっても、難しい方法ではなく、簡単にでき、糖尿病の改善にとても役立ちます。

糖尿病の基本的な対策は、食事療法と適度な運動です。さらに、必要に応じて薬を用いるのが原則ですが、それだけでは検査値が改善できないケースも少なくありません。

そんなとき、このストレッチを加えると、検査値が改善できる場合が多いのです。中には、短期間で劇的に改善する例や、薬を減らしたり、やめたりできる例もあります。

●70代男性の例
血糖値が247mg/dl(正常値は110mg/dl未満)、ヘモグロビンA1c(過去1〜2ヵ月の血糖値が分かる数値で、正常値は6.5%未満)が7.4%でした。ところが、このストレッチを始めて約4ヵ月で、それぞれ164mg/dlと6.6%に改善できました。

●50代男性の例
食事療法を行っても糖尿病が改善できず、インスリン注射を行うようになりました。「なんとか他の方法で改善したい」と考えて当院にみえました。そこで、鍼治療を行うとともに、今回ご紹介したストレッチを勧めたところ、熱心に実行されました。

そのかいがあって、約2ヵ月で検査値がほぼ正常化し、インスリン注射をやめることができたのです。この男性は非常に喜ばれ、引き続きストレッチを行っています。

足の内側と背中が糖尿病の改善ポイント

では、なぜこのストレッチで糖尿病が改善できるのでしょうか。そのしくみを分かりやすく言うと、「膵臓を活性化して、糖尿病を改善する」ということになります。

糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの量や作用が不足する病気です。このストレッチは、膵臓のインスリン分泌機能を活性化して、血糖値の改善に力を発揮するのです。

今回ご紹介するストレッチのうち、脾経ストレッチは、東洋医学の理論から、膵臓を活性化します。

東洋医学では、全身に生命エネルギーである「気」の通り道があることを重視し、それを「経絡」と呼んでいます。経絡は臓器と密接に関係していますが、そのうち糖尿病に深く関わるのが、脾経という経絡です。

脾経は、文字通り脾臓を元気づける経絡ですが、東洋医学でいう脾臓は、実は膵臓をも意味します。ですから、脾経を刺激すれば、膵臓を活性化し、インスリンの分泌を促すことができます。

脾経は、足の親指の側面から足の内側を走っています。そのため、足の内側を伸ばす脾経ストレッチが効果的なのです。

なお、脾経ストレッチは、免疫力(病気に対する抵抗力)の強化や胃腸の不調の改善、美肌づくりなどにも役立ちます。

もう一つの広背筋ストレッチは、カイロプラクティックの理論から膵臓を活性化するものです。カイロプラクティックは、世界的に認められた手技療法ですが、その理論の中で、特定の臓器と筋肉の関連を認めています。

それによると、膵臓と深く関わるのは、背中に広がっている広背筋という筋肉です。そこで、広背筋を効率よく伸ばして刺激し、膵臓を活性化するのが広背筋ストレッチです。

脾経ストレッチと広背筋ストレッチは、一緒にやっても別にやっても構いません。一緒でも数分でできますし、テレビを見ながらでもできます。1日1回でもいいですが、朝と晩の2回行うと、より効果的です。

なお、このストレッチを行うからといって、暴飲暴食をしたり、必要な治療を怠ったりするのでは逆効果になりかねません。あくまでも基本的な療法にプラスし、効果を高めるためにお役立てください。

糖尿病撃退ストレッチのやり方

いずれも、朝と晩の2回行うとより効果的。それ以上行っても、体に害はない。
脾経ストレッチと広背筋ストレッチは、必ずしもセットで行わなくてもよい。仕事や家事の合間、テレビを見ながらなど、できるときにやればOK。

脾経ストレッチ

画像1: 糖尿病撃退ストレッチのやり方

立って背すじを自然に伸ばす。
両足をできるだけ開く。できる範囲でひざとつま先を外に向ける。
足の内側がギューッと伸びているのを感じながら、そのまま30秒キープする。
①に戻り、2~3回くり返す。
※足の内側が伸びる感じを意識しながら行う。ただし、無理には伸ばさないこと。気持ちよく伸びる範囲で行う。

広背筋ストレッチ1

画像2: 糖尿病撃退ストレッチのやり方

立って背すじを自然に伸ばす。
両手のこぶしを握り、軽くバンザイをする感じで上げる。
ひじが肩より後ろに来るように意識しながら、ひじをぐっと曲げて下に引き下ろす。

画像: ひじが肩より後ろに来るようにする

ひじが肩より後ろに来るようにする

②~③を10回ほどくり返す。
※いすに座って行ってもよい。

広背筋ストレッチ2

画像3: 糖尿病撃退ストレッチのやり方

立って背すじを自然に伸ばす。
両手のこぶしを軽く握り、両ひじを直角くらいに曲げる。
両ひじを背中側に寄せる感じでぐっと後ろに引く。
②~③を10回ほどくり返す。
※いすに座って行ってもよい。

画像: この記事は『安心』2020年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年11月号に掲載されています。

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