リラックスして体が開き、軸が整った状態でないと、体をスムーズに動かすことができず、さまざまな痛みや不調につながります。骨盤を整えることが重要だといわれますが、それ以上に、股関節を整えることが体をスムーズに連動させるには重要だと考えています。【解説】三野喜邦(シンキュウタカオ院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

三野喜邦(みの・きほう)
シンキュウタカオ院長。鍼灸師。カイロプラクター。骨格のゆがみを調整し自然治癒力を引き出すオステオパシー療法に、運動療法を駆使した治療を実践する。赤ちゃんポーズ、タオル枕、耳つかみなどのセルフケアが患者さんに大好評。

筋肉の負荷が軽減し血流がよくなり痛み改善

私たちの体は本来、1ヵ所を動かすと、ほかの部位も動くようにできています。こうした連動によって、全身をスムーズに動かすことができるのです。

ところが、日常生活のなかで同じ動きをくり返したり、一定の姿勢を長時間続けたりしていると、体にゆがみが生じて、うまく連動しなくなります。

加齢によって関節がかたくなることも、連動を妨げる要因です。また、緊張で体が閉じてしまうと、やはり連動できなくなってしまいます。

要するに、リラックスして体が開き、動きの中心となる軸が整った状態でないと、体をスムーズに動かすことができず、それがさまざまな痛みや不調につながるのです。

では、体を開き、ゆがみを正すには、どうすればよいのでしょうか。

よく、骨盤を整えることが重要だといわれます。それも間違いではないと思います。しかし、私はそれ以上に、股関節を整えることが体をスムーズに連動させるには重要だと、考えています。

そして、もう一つ大切なことは、弱った筋肉を鍛える前に、かたくなっている筋肉を緩めること。体が閉じているとき、特にかたくなっているのは、太もも前面の筋肉です。その筋肉を緩めてやれば、体は自然に開いていきます。

そこで、私が考案した解決方法が、「赤ちゃんポーズ」を取ることです。

赤ちゃんポーズとは、赤ちゃんのおむつを替えるときの体勢に似ていることから名づけました。やり方は、下項をご覧ください。

「赤ちゃんポーズ」のやり方

あおむけになり、リラックスする。

画像1: 「赤ちゃんポーズ」のやり方

両手の指を組み、頭の先に向かってゆっくり伸ばす。腕の重みが肩にかかるところまで伸ばすようにする。

画像2: 「赤ちゃんポーズ」のやり方

②の状態のまま、両ひざを立て、足を肩幅に開く。

画像3: 「赤ちゃんポーズ」のやり方

そのまま、ひざを胸のほうに引き寄せる。お尻が少し浮き、ガニ股の状態になる。

画像4: 「赤ちゃんポーズ」のやり方

④の状態を30秒維持したら、①の状態に戻し10秒休む。
▶︎30秒がつらい場合は、10秒くらいから始め、徐々に時間を延ばす。
※①~⑤を1セットとして、1回に3セット行う。
※就寝前に行うのが基本。日中に何度か行うと効果的。

【①〜②】あおむけになり、両手の指を組み、頭の先に向かって伸ばします。こうすることで、まず肩が開きます。

【③〜⑤】次に、手を伸ばしたままの状態で両ひざを立てます。足を肩幅に開き、ひざを胸のほうに引き寄せていきます。お尻が床から少し浮き、ガニ股になって落ち着くところで30秒保ちます。

このとき、肩の動きからの連動と、お尻の動きによって、股関節が開き、正しい位置に収まります。同時に、太もも裏の筋肉が緊張し、逆に太もも前面の筋肉は緩みます。そして、緊張して閉じていた全身が、開いてくるのです。

股関節が正しい位置に入り、体が開くと、そこから連動して、背骨のカーブが自然に整っていきます。もちろん、骨盤も正しい位置に落ち着きます

こうして体のゆがみが取れると、筋肉によけいな負荷がかからないだけでなく、血流もよくなり、痛みが改善するのです。

姿勢や体の動かし方が原因で起こる首・肩のコリや痛み、ひじ痛、ひざ痛、腰痛、股関節痛、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などに効果的です。

寝つきがよくなり腸が正常に動き始める

当院に来ている72歳の女性は、清掃の仕事で朝から晩まで体を酷使しているせいで、腰椎(背骨の腰の部分)が右にねじれ、足や股関節、腰の痛みを訴えていました。

しかし、赤ちゃんポーズを行ってもらったところ、腰椎のねじれが改善し、徐々に痛みが和らいで、3ヵ月後にはすっかりよくなりました。

痛みの改善以外にも、赤ちゃんポーズを行っていると、あくびが出てくるという声をよく聞きます。これは、体が開いて、口を開けられるようになってきた証拠です。

ふだん緊張している人は、体が閉じているとともに、ほおの頬筋が上がらず口も開きにくくなっています。赤ちゃんポーズを行う前後で口の開き具合を比較してみると、その違いがよくわかるでしょう。

あくびが出るということは、当然、寝つきもよくなります。就寝前に赤ちゃんポーズを行えば、体のバランスが整った状態で眠りにつけるので、睡眠の質がよくなり寝起きもよくなります。実際、睡眠薬が減らせた人もいます。

頬筋がしっかり動いて、口が開くようになれば、顔のシワやたるみ、また、顎関節症の悪化も防げるはずです。

血流がよくなることで、髪にツヤが出てきた人、化粧のりがよくなった人、爪がよく伸びるようになった人もいました。

また、多くの人は、赤ちゃんポーズを行うと、おなかが鳴り始めます。腸が正常に動き始めるのでしょう。腸は、「第2の脳」といわれるくらい、体にとって重要な器官です。腸が動くと、お通じがよくなるだけでなく、全身が整い、さまざまな不調が改善すると考えられます。

寝つきがよくなったり、腸が動きだしたりするということは、自律神経(意志とは無関係に血管や内臓の働きを整える神経)にも影響を与えているのではないでしょうか。自律神経のバランスが整えば、血圧の安定なども期待できると思います。

赤ちゃんポーズは、30秒維持して10秒休むことを1セットとして、1回に3セット行います。ただし、下腹が出ている人や腹筋の衰えている人は、最初から30秒維持するのは難しいかもしれません。無理をせず、10秒くらいから始め、徐々に時間を延ばしましょう。

1日の疲れをリセットするために、就寝前に行うのが基本です。体のいいバランス状態を保つためには、日中も何度か行うと効果的です。同じ姿勢が1時間以上続いたときなどは特に、赤ちゃんポーズで体を整えることをお勧めします。

〈赤ちゃんポーズの健康効果〉

体が動かしやすくなる
体のゆがみが取れ、姿勢がよくなり、体を動かしやすくなる。顔のシワやたるみ、顎関節症なども防ぐ。

画像: 口の開きぐあいがよくなる。

口の開きぐあいがよくなる。

コリや痛みが取れる
首・肩のコリや痛み、ひじ痛、ひざ痛、腰痛、股関節痛、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などが改善。
寝つきがよくなる
睡眠の質がよくなり、体の疲れも取れる。
お通じがよくなる
行ったあとにおなかが鳴り、翌朝のお通じがよくなるケースが多い。
髪や肌の状態がよくなる
髪にツヤが出る。化粧のりがよくなる。

画像: この記事は『壮快』2020年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年11月号に掲載されています。

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