酒かすに含まれるレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)と、レジスタントプロテイン(難消化性たんぱく質)は、消化されずに腸まで届き、余分な糖分や脂質を吸着して、体外に排出してくれます。さらに注目なのが、「グリコシルセラミド」という物質です。【解説】北垣浩志(佐賀大学農学部教授)

解説者のプロフィール

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北垣浩志(きたがき・ひろし)
佐賀大学農学部教授。東京大学農学部卒業。国税庁醸造研究所研究員、米国サウスカロライナ医科大学などを経て現職。専門は発酵醸造学。日本の伝統食品の機能性開発や、グリコシルセラミドの化粧品・機能性食品の開発などに携わる。こうじ研究の権威。科学技術分野の文部科学大臣表彰、日本農学進歩賞など受賞多数。

余分な糖分と脂質を吸着し排出する

近年、甘酒が大きなブームになっています。甘酒は、「飲む点滴」といわれるほどの豊富な栄養素を含み、さまざまな健康効果も期待できる食品です。

今回のテーマである「酒かす」は、その甘酒と同様、こうじから作られます。実は酒かすは、人気の甘酒以上に優れた食品であるといえるのです。

甘酒の唯一の欠点は、糖分が多いことです。適量なら問題はありませんが、とり過ぎれば、血糖値の上昇を招く要因となります。一方、酒かすにはこうした心配がありません。

というのも、酒かすは、その名のとおり、米から酒を造る過程で生じた「かす」。消化・分解されやすいでんぷんは、酒を造るのに使われてしまっているため、酒かすに含まれるでんぷんやたんぱく質は、消化されにくい性質を持っています。

それが、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)と、レジスタントプロテイン(難消化性たんぱく質)です。消化されにくいので、そもそも血糖値が上がりにくいのです。

現代人は、カロリー(エネルギー)過多で、糖分と脂質をとり過ぎる傾向がありますが、酒かすを常食すると、この問題も解決できます。

難消化性のでんぷんとたんぱく質は、ともに消化されずに腸まで届き、余分な糖分や脂質を吸着して、体外に排出してくれるからです。

その結果、コレステロール値や血糖値が下がってきます。それが、ひいては、ダイエットにつながるでしょう。

さて、酒かすの健康効果を考えるうえで、私が特に注目しているのが、「グリコシルセラミド」という物質です。グリコシルセラミドは、こうじに含まれる成分で、酒かすの中にも多く含まれています。

肌を保湿してバリア機能もアップ

このグリコシルセラミドには、大きく三つの効果があります。順にご説明しましょう。

腸内環境改善

グリコシルセラミドが大腸まで届くと、「ブラウティア・コッコイデス」という善玉菌のエサとなり、この菌を増やします。

また、レジスタントスターチと、レジスタントプロテインにも、善玉菌を増やす働きがありますから、グリコシルセラミドと合わせて、腸内環境をよい方向へ導いてくれることになります。

腸内環境がよくなれば、腸の働き自体も活発となり、便秘も解消します。

美肌

酒かすは、食べても、直接肌につけても、美肌効果があることがわかってきました。

表皮は、皮膚のいちばん上の組織ですが、角層細胞からなる層が何重にも重なってできています。角層と角層の間には、細胞間脂質という脂質が挟まっています。角層細胞がレンガだとすると、細胞間脂質は、セメントの役割を果たしているといっていいでしょう。

酒かすを皮膚に塗ると、グリコシルセラミドが細胞間脂質に入り込んで、保湿効果をもたらすことがわかってきました。

年をとるにつれて、私たちの肌は水分を保てなくなってきますが、グリコシルセラミドが肌に潤いをもたらしてくれます。これによって、肌のバリア機能も高まります。

また、皮膚の角質層の下の、第2層めとの境に、「タイトジャンクション」という構造があります。これによって、隣り合う細胞同士がくっつけられています。

このタイトジャンクションがあるおかげで、外部からの異物の侵入も、内部からの水分の蒸散も防がれています。

ところが、加齢などによって、この構造がゆるんでくるのです。グリコシルセラミドには、この構造を強化する働きもあると考えられ、アンチエイジング効果が期待できます。

酒かすを飲んだ場合に、美肌効果がもたらされるしくみについては、まだ、十分に解明されてはいません。

吸収されたグリコシルセラミドの一部が、肝臓から血流にのって皮膚の基底層まで届き、そこで皮膚の保湿機能を活性化させると考えられています。

心血管疾患予防

マウスに、グリコシルセラミドを混ぜたエサを与えると、肝臓に蓄積されるコレステロールの量が減ることがわかりました。余分なコレステロールが胆汁酸に変換されて、フンとして排出されているのです。

つまり、こうして余分なコレステロールが排出されることで、血中の悪玉コレステロールの量が減少します。それが、動脈硬化の予防につながります。また、動脈硬化の進行によって起こってくる、心筋梗塞などの心血管系疾患の予防にもなるのです。

ほかにも、酒かすには、豊富なビタミンB群や、アミノ酸など、多くの有効成分が存在します。このような酒かすの多彩な効能を生かすために、食事やスキンケアに酒かすを上手に取り入れてみてはいかがでしょうか。

なお、食べるときに、アルコール分が気になるかたは、加熱でアルコール分を飛ばすことができます。

[別記事:胃腸と肌を優しく癒す「酒かす」絶品レシピ→

酒かすコスメの活用法

酒かすはスーパーマーケットの店頭や、酒蔵の通信販売で気軽に購入できます。酒かすには肌のバリア機能を高めるグリコシルセラミドが豊富に含まれており、美肌効果が期待できます。

※肌に塗る際は、必ずパッチテストを行ってください。少量を塗ってしばらく時間をおき、様子を見て、赤みやかゆみなどの異常が現れたら直ちに中止してください。

ポイント
使用する酒かすは板かす、バラかす、練りかす、いずれでもよい。やわらかいタイプが作りやすい。
精製水がない場合は、水道水でもよい。
冷蔵庫で保存し1週間以内に使い切る。
酒かすによって、水分量が異なるため、精製水の量は様子を見ながら調整する。
粒子が粗い酒かすの場合は、すり鉢でする。
混ざりにくい場合は酒かすを精製水に漬けた状態で、半日ほどおくとよい。

酒かすパック

画像1: 酒かすパック

【用意する物】
酒かす···100g 
精製水···50ml

画像2: 酒かすパック

【作り方】
ジッパー付き保存袋に酒かす、精製水を入れ、もむようにしてよく混ぜる。

画像3: 酒かすパック

全体がよく混ざり、手に塗って垂れないくらいの粘度になったら完成。保存容器に移す。

画像4: 酒かすパック

【使い方】
顔に塗って10分~15分ほどおき、酒かすをふき取り、洗顔する。

画像5: 酒かすパック

酒かす化粧水

画像1: 酒かす化粧水

【用意する物】
酒かす···30g
精製水···200nl
グリセリン…小さじ2

画像2: 酒かす化粧水

【作り方】
ジッパー付き保存袋に酒かす、精製水を入れ、もむようにしてよく混ぜる。

画像3: 酒かす化粧水

①を茶こしでこし、グリセリンを加え、よく混ぜ合わせたら完成。保存容器に移す。

画像4: 酒かす化粧水

【使い方】
コットンにたっぷり含ませて、こすらずにパッティングする。

画像5: 酒かす化粧水
画像: この記事は『壮快』2020年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年11月号に掲載されています。

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