卵黄に含まれるコリンという成分は認知症の予防・改善に役立つことがわかっています。コリンは納豆の原料である大豆にも含まれ、チーズに多く含まれるビタミンB12を組み合わせることで、認知機能の向上がより期待できるそうです。【解説】村上祥子(福岡女子大学客員教授・管理栄養士)

解説者のプロフィール

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村上祥子(むらかみ・さちこ)
福岡女子大学国際文理学部客員教授。管理栄養士。料理研究家。電子レンジ調理の第一人者として知られる。「ちゃんと食べてちゃんと生きる」をモットーに生活習慣病の予防・改善に役立ち、栄養バランスの取れたカロリー・塩分控えめのレシピを多数考案。福岡を拠点に、国内外で実践的な食育指導に情熱を注ぐ。メディア出演・著書多数。

温泉卵入り納豆ご飯に6Pチーズを添えて

私は幼いころから、チーズが大好きでした。小学校2年生のとき、両親から「誕生日プレゼントに何が欲しい?」と聞かれて、すぐさま「チーズ!」と答えたほど。

一方、納豆も大好きで、食卓には必ずといっていいほど、チーズと納豆がありました。そして大人になり、現在に至るまでも、ずっとチーズと納豆を愛食しています。

では、私の定番の、朝食メニューをご紹介しましょう。

小どんぶり鉢にホカホカのご飯(白米)を軽く1膳よそい、その上に温泉卵を1個と、刻みネギ、添付のタレを混ぜた納豆をのせます。これが主食です。

副食として市販の6Pチーズ(プロセスチーズ)を1個。それと、野菜をたっぷり入れたみそ汁を、お椀に1杯です。

ちなみに納豆は、コンビニやスーパーで普通に売られている商品。みそ汁も、事前に冷凍しておいたカット野菜を投入するだけの、お手軽みそ汁です。

画像: 村上先生が毎朝食べる「チーズ納豆」丼

村上先生が毎朝食べる「チーズ納豆」丼

こうして毎日欠かさず、チーズと納豆をとっていますが、そこに卵を加えているのには、理由があります。

卵には認知症を予防する成分が、含まれているからです。

高知医科大学(現・高知大学医学部)の元学長で、神経精神科教授でいらした池田久男先生の研究により、卵黄に含まれるコリンという成分が、認知症の予防・改善に役立つことがわかっています。

コリンは、リン脂質と呼ばれる脂質の一種です。体内では、細胞膜や神経組織を構成する、レシチンの材料になります。

血管を拡張させて血圧を下げる神経伝達物質(アセチルコリン)として機能したり、記憶力や肝機能を高めたりするといった働きもあります。

感染症予防にも積極的に食べたい食材

コリンは、納豆の原料である大豆にも含まれています。池田先生は、卵黄のコリンだけでなく大豆のコリンについても調べたそうです。

どちらが認知機能をより高めるか比較したところ、コリン含有量がより多いためか、卵黄に軍配が上がりました。とはいえ大豆のコリンにも、認知機能を高める効果があります。

さらに別の研究によると、コリンとビタミンB12を組み合わせることで、認知機能の向上が、より期待できるそうです。

ビタミンB12は主に動物性のたんぱく質に含まれ、イワシや、牛などのレバー、そしてチーズにも、多く含まれています。

認知症の予防と改善に役立つ卵と納豆、その効果をさらにアップさせるチーズ。どれも、私の朝食に含まれています。

もともとは「好きだから」という単純な理由で、長いこと食べ続けていましたが、結果的にすばらしい組み合わせになっていたというわけです。

そんな朝食を毎日とっているおかげでしょうか。私は今年で78歳になりましたが、ひどい物忘れもなく、体もとても元気。今なお続く、新型コロナによる自粛生活においても、インターネットを活用し、多様な手段でテレワークに励んでいます。

私の場合、チーズと納豆を混ぜてはいませんが、いっしょに和えても、おいしいものです。さらにひと手間かけて、刻んだ野菜を加えると、歯ごたえがいいアクセントになります。

実際に山形県では、チーズや野菜、ハムなどを加えた「五目納豆」が小学校の給食で提供され、人気メニューなのだそう。

もちろん、チーズと納豆だけでも、優れた健康効果が期待できます。どちらも発酵食品なので、腸内環境を整える効果があり、免疫力の向上も期待できます。新型コロナウイルスが猛威を振るう今、感染症の予防という意味でも、積極的に食べたい食材といえるでしょう。 

さらに、便秘や下痢の改善、肌の調子がよくなるなどの効果も期待できます。


チーズ納豆の作り方

画像1: チーズ納豆の作り方

【材料】(作りやすい分量)
納豆…1パック
粉チーズ…適量

画像2: チーズ納豆の作り方

【作り方】
納豆に粉チーズを加えて、よく混ぜるだけ!
チーズは好みのタイプでOK。
好みにより添付のタレなどで調味してもよいが、塩分過多にならないよう量を控える。


ところで、読者の皆さんのなかには、私の朝食メニューをご覧になり、「料理研究家なのに意外とずぼらだな」と思われたかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

私は健康維持のため、1食における肉や魚、卵、乳製品などのたんぱく質食材の摂取量を、合計100gと決めています。チーズ1個と納豆1パック、卵1個でだいたい100gです。

手抜きに思われるかもしれませんが、この点でも理にかなった食事メニューなのです。

高齢になると、食が細くなったり、台所仕事がおっくうになったりで、食事がないがしろにされがちです。食生活をおろそかにしていると、認知機能や筋力がどんんどん衰え、しだいに健康が損なわれます。

私のようにずぼらでもいいので、とにかく1日3食を、しっかりとることが大切。栄養価が高いうえ安価で入手しやすく、調理も簡便な「チーズ・納豆・卵」の組み合わせは、その強い味方になるはずです。

画像: この記事は『壮快』2020年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年11月号に掲載されています。

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