回答者のプロフィール

森維久郎(もり・いくろう)
腎臓内科医。三重大学医学部医学科卒業。東京医療センター研修医、千葉東病院腎臓内科・糖尿病内科、東京北医療センター総合内科/腎臓内科、ふくだ内科を経て、2020年5月に「赤羽もり内科・腎臓内科」を開業。人工透析予防や生活習慣病の予防を目指し、診療を行っている。webサイト「腎臓内科.com」で、腎臓病の情報を積極的に発信中。
▼赤羽もり内科・腎臓内科(公式サイト)
▼腎臓内科.com(森先生が発信する腎臓の情報サイト)
Q1. 腎臓病になりやすいのはどんな人ですか?
A1.
血圧や血糖値の高い人、太っている人、喫煙習慣のある人は、注意が必要です。
腎臓病には、免疫の異常によって起こるものや、遺伝性のものなど、さまざまなタイプがありますが、最も多いのが、糖尿病や高血圧などの、生活習慣病が引き起こす腎臓病です。
実際に、血液透析になる患者さんの7割は、生活習慣病が原因で、残りの3割は遺伝や免疫などの病気です。ですから、
●高血圧の人
●糖尿病の人
●太っている人
●喫煙習慣のある人
このような人は、腎臓病になりやすいと言えるので、注意が必要です。

高血圧や糖尿病、肥満の人や喫煙者は腎臓病になりやすい
Q2. 早期発見は大事ですか?早期に気づくための自覚症状や、ポイントはありますか?
A2.
とても大事ですが、症状がないので発見しづらいのがネック。定期的に検診を受け、尿たんぱくが2+以上なら、精密検査を。
腎臓病では、早期発見は非常に大事です。
腎臓が悪くなると、むくみ、だるさ、貧血などさまざまな症状が出ますが、それは、かなり病気が進行してからです。
腎臓は「沈黙の臓器」とも言われます。そのため、早期の段階では自覚症状がほとんどありません。ですから、定期的な検診が何よりも重要になります。少なくとも、年に一度は健康診断を受診しましょう。
なお、健康診断で「尿たんぱくが陽性」だった場合、注意が必要です。
検査数値の中でも、腎臓のSOSを知らせるのが尿たんぱくで、陽性(+)なら、この先、腎臓が弱っていく可能性があります。
健康診断などで行われる尿たんぱくの検査結果は、「-」「±」「1+」「2+」「3+」の5段階に分かれています。
±や1+の場合は、年に一度健康診断を受け、経過を注視していれば、問題ないと思われますが、2+、3+は危険信号です。
なぜなら、将来、腎代替療法(透析や腎移植)が必要になる、末期腎不全になる可能性が非常に高いという調査結果があるからです(グラフ参照)。

2+以上なら、精密な尿検査(定量検査)をすぐに受けることをお勧めします。

この記事は『安心』2020年10月号に掲載されています。
www.makino-g.jp