解説者のプロフィール
金澤ゆかり(かなざわ・ゆかり)
ヘアーロマンドK美容師。ケミアリスト(ヘアケアと毛髪科学の専門家)。カットやパーマ、カラー、着付といった通常の施術に加え、白髪や脱毛に効くヘッドスパやシャンプーの指導なども行っている。
お金をかけずに自分で直せる
白髪や薄毛は、遺伝または老化のせい。一度なってしまったら直らない、と思っていませんか?
そんなことはありません。私の美容室では、50~80代の人でも、白髪や薄毛が改善しています。しかもその手法は、お金をかけずに、自分で実践できることが特長です。
そもそも私が白髪や薄毛の改善に取り組むようになったのは、父が薄毛に悩み、育毛剤をつけている姿を見たのがきっかけでした。「人はなぜ白髪や薄毛になるんだろう?」と思ったのです。
実際、美容院のお客さまにも、同じような悩みを抱えている方が大勢いらっしゃいます。なんとかその人たちの力になりたいと思った私は、体や髪の毛について自分なりに研究するようになりました。
そして分かったのは、「頭皮の健康が、髪の毛に影響する」ということです。
そこで、頭皮を健康にするような洗い方を考案して実践し、生活習慣をアドバイスしていったところ、白髪や薄毛が改善する人が続々と現れるようになったのです。
それでは、頭皮の状態と白髪や薄毛の関係について、美容師歴30数年の、私の経験に基づく考察をお話しします。
洗い残しのある場所に白髪が集中
まず、白髪は、頭皮の汚れが原因だと、私は考えています。
白髪が集中しているのは、ほとんどの場合
①頭頂部
②耳の後ろ
③額の生え際
④えり足
の4ヵ所です。
白髪の原因が老化なら、頭全体が同じように白くなるはずです。そしてこの4ヵ所は、自分でシャンプーをしたとき、洗い残しが出やすい部分なのです。
例えば、頭頂部は左右の指先を交差させて洗わないと、まんべんなく洗うことができません。耳の後ろは、逆側の手を頭の後ろから回して洗う必要があります。
額とえり足は、生え際と皮膚との境目に洗い残しが多いようです。特に女性は、額の生え際の毛穴にファンデーションの汚れがたまりやすいのです。
また、毛量が多い人の方が、白髪になりやすいという印象があります。これは、髪の量が多いと、地肌までしっかり洗えていないことが原因と考えられます。
洗い残しが出やすいところは、すすぎ残しも起こりやすく、それも白髪の一因といえるでしょう。
さらに、食事も関係してきます。脂っこい物を多く食べる人は、頭皮の毛穴に汚れが詰まりやすく、やはり白髪の原因となります。
薄毛の人は頭皮が硬い
次に、薄毛についてです。
薄毛の人の特徴は、「頭皮がカチコチに硬い」ということです。血行が悪くなると肩がこるのと同じで、頭皮が硬いのも、血行が悪い証拠です。
血行が悪くなる一番の原因は、ずばり「食べ過ぎ」です。
胃に食べ物がある間は、それを消化するため、胃に血液が集中します。食べ過ぎるとその時間が長くなり、末端にある頭皮まで血液が行き渡りにくくなるのです。
そのため、寝る直前の飲食なども、抜け毛や薄毛の大きな原因になります。冷たい飲み物や白砂糖なども体を冷やし、血行を悪くします。同様に、運動不足も血流を悪くする原因となります。
そう考えると、薄毛は、太っている人がなりやすい傾向があります。食べ過ぎや運動不足が、肥満とともに、頭皮にも悪影響を与えるのでしょう。
髪は手入れ次第で驚くほど変わる
以上の考察をもとに、私は白髪・薄毛の改善に有効な、髪の洗い方を考案しました。名付けて、「頭皮のこすり洗い」です。
ポイントは、指の腹で地肌をこするように洗うことです。シャンプーを軽く泡立て、何カ所かに小分けしてつけていきます。指の腹をジグザグに動かして、地肌にシャンプーが行き渡るように、こすりつけるとよいでしょう。
すすぎは、シャワーで地肌までお湯を行き渡らせて、シャンプーをしっかり洗い流します。
この頭皮のこすり洗いは、毛穴に詰まった汚れを落とすとともに、マッサージ効果によって血行もよくします。
洗髪後は、髪をしっかり乾かしましょう。時間がある人は、その後、頭皮を指でまんべんなくつまむと、さらに血行がよくなります。これは特に、薄毛でお悩みの方にお勧めです。
頭皮が清潔で健康な状態になれば、白髪や薄毛は改善していきます。早い人なら1ヵ月、遅くとも半年くらいで変化が現れます。また、フケやかゆみなどの悩みも解消します。
髪は手入れ次第で驚くほど変わります。ぜひ実践してみてください。
頭皮のこすり洗いのやり方
【準備】
顔を洗う
・女性は、メイクをしっかり落とす
(額周辺、髪の生え際のメイクはしっかり落とす。毛穴にメイクを詰まらせないよう、額周辺は指を下方向に動かすとよい)
・男性は生え際の皮脂をしっかり落とす
シャンプーは泡立ててから、小分けにつける
軽く泡立ててから、額の生え際に2ヵ所、つむじ、耳の後ろ、えり足につける。

❶頭を4分割する

全体を4分割して少しずつ洗う。
①額の生え際→②頭頂部→③後頭部→④えり足、の順番で洗う。
❷頭皮の地肌を、指の腹でこすり洗いする

左右の手の指を、頭の真ん中に置き、指の腹を頭皮にこすりつけながら洗う。指をジグザグとこすり洗いしながら、徐々に耳の方へずらし、頭全体をまんべんなく洗う。
【ポイント】洗い残しが多い部分はココ!

【額の生え際とこめかみ】額の生え際よりも少しだけ顔側に指の腹を当て、上に向かって指の腹をスライドしながら生え際のこすり洗いをする。こめかみも同様に行う。

【つむじ】つむじの上で両手の指を組み、こすり洗いをする。

【耳の後ろ】左手を頭の後ろから回して、右耳の後ろの生え際をこすり洗いする。反対も同様に行う。

【えり足】えり足の生え際よりも少しだけ下側に指の腹を当て、頭頂部に向かって指の腹をスライドさせながら、えり足をこすり洗いする。

❸しっかりすすぐ

シャンプーをしっかりすすぐ。洗った時間の3倍かけるつもりで行う。その後トリートメントを行う人はいつも通り行い、しっかりすすぐ。
❹ドライヤーで乾かす

タオルでしっかり髪を拭いてから、ドライヤーで手早く乾かす。生乾きは髪を傷めるので、しっかり乾かす。

この記事は『安心』2020年10月号に掲載されています。
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