解説者のプロフィール

田中勝(たなか・まさる)
田中鍼灸指圧治療院院長。1948年北海道出身。鍼・灸・あんまマッサージ指圧師。治療にとどまらず、鍼温灸や経絡あんま、関節運動法講習会を開催するなど、精力的に活動している。DVD『よくある症状への手技療法』(医道の日本社)が好評発売中。
▼田中鍼灸指圧治療院(公式サイト)
飛び上がるほど痛いツボが特効ツボ
「あいたたたた!」「ううっ、痛い……」 当院では、治療中の方々から、こんな声が発せられることがよくあります。
当院では、治療に使うツボの候補が決まったら、丹念に押していきます。他のツボに比べて、こりが強い、もしくは周囲と比べて皮膚がズブズブしているツボを見つけます。
実際、そういったツボを私が指圧すると、患者さんは苦痛にこらえた表情やうめき声を発します。さらに、ミリ単位で指先をずらしながら押しもみし、ツボを念入りに手や鍼で刺激するという方法をとっています。
こうすれば、その人・その症状にピタリと合うツボを効率よく刺激できます。つまり、ツボを押したときの痛み(圧痛)は、特効ツボを見つけるための目印になるのです。
ツボによっては、押されると、思わず叫び声が出たり、のけぞったり、飛び上がったりするような尋常ではない激痛が生じます。私の経験上、そのツボが格別効く状態であればあるほど、より強く、鋭い痛みを感じます。
そういうツボを、私は「激痛ツボ」と呼んでいます。今回は、とりわけ効果が高く、一般の人でも自分で刺激できる激痛ツボを、厳選して紹介します。
激痛ツボには、以下のような特徴があります。
●よく響く純粋な痛みがある
ツボを押したときの感覚としては、「痛いけれど気持ちいい」、いわゆる「痛気持ちいい」というのがおなじみでしょう。筋肉が多い場所で、かつ筋肉のこわばりがそれほど強くないときは、そういう感覚が得られます。
しかし、激痛ツボの多くは、気持ちよさのない「純粋な痛み」であり、それが離れた場所や患部によく響くのが特徴です。痛みに耐えて押していると、驚くほどよく効くところに、面白さがあります。
●自分で簡単に押せる
激痛ツボの中でも、今回は、自分で簡単に押せる手足のツボを中心に選んであります(下項で紹介)。
押すときは、自分なりの限界まで痛みをこらえて押すのが効果を高くする秘訣です。前述したように、激痛があるところほど、格別に効きますから、容赦なく押してください。
●即効性がある
基本的に、手足のツボは即効性に優れている傾向にあります。今回ご紹介するツボは、ほとんどが手足にあるので、押している間に、症状が和らぐこともよくあります。
耳鳴り、めまい、腰痛、疲れ目、顎関節症などの激痛ツボは、困ったときに押せば、その場で症状が軽減されるので便利です。
「痛いのは嫌。気持ちいいツボ刺激で治したい」と思う方もいるでしょう。しかし、強い痛みを感じる部位ほど効果の高いツボといえます。痛みこそが効果を教えてくれる最高のガイドです。このガイドを味方につけない手はありません。
痛みを感じ取りながらツボを押すことが大切
ここで、ツボを押すと痛みが起こるしくみを、説明しましょう。
皮膚の直下には、痛みの神経(痛覚神経)があります。体表面が傷付いたとき、いち早く察知しないと危険だからです。その下には筋肉がありますが、筋肉がこっていなければ、ツボを押しても、それほど痛みは強くありません。
しかし、不調や病気を反映しているツボの部分には、筋肉のこりがあります。そのため、指で押すと、硬い筋肉との間で痛覚神経が挟まれ、圧迫されて、痛みのシグナルが発せられるのだと考えられます。

皮下の他、動脈や骨膜(骨を包んでいる膜)などにも痛覚神経があります。動脈上や骨の際など、筋肉以外のところにあるツボは、総じて不快な痛みをもたらします。
特に、不調や病気に関係しているツボは、激痛を伴います。その痛みを感じ取りながら押すことで、極めて高い効果が得られます。
痛覚神経からの説明とは別に、中医学では、「気(一種の生命エネルギー)の流れ」からツボを押したときの痛みを説明できます。
「健康な体には気がスムーズに流れている」というのが中医学の理論です。その気の通り道が「経絡」で、経絡上に点々とあるポイント(気の出入口)がツボです。
経絡の気が正常に流れていないツボに、持続圧(じっくり長く押す)を加えることで、気の「詰まり」を取り、円滑に巡らせることができます。その結果、不調や病気が改善するのです。
中医学では、そのことを「気通ずれば痛まず」と表現しています。この言葉の意味は、ツボを押すことで気を通じさせれば、ツボそのものの痛みも、症状として起こっている体の痛みも速やかに軽減するということです。
今回ご紹介する激痛ツボは、当院でも治療で多用している効果の高いツボです。一般の方が自分で押す場合、以下のポイントを守れば、より高い効果が得られます。
①1日1回以上、1〜3分の持続圧を加える
激痛ツボを持続して押し続けると、1分、2分、3分と、時間の経過とともに痛みが和らぎます。それとともに、対応するところの痛みや症状が軽減されます。
この効果は一時的なもので、しばらくたつと戻りますが、毎日ツボ刺激をくり返すことで、効果が継続するようになります。
②痛みをこらえてしっかり押す
先にも触れましたが、我慢できる限りでよいので、痛みをこらえて押すのがコツです。それによって、より高い効果を得ることができます。
③激痛ポイントが移動したらそちらを押す
習慣付けて押していると、痛みの度合いが軽くなってきます。これは、症状が改善してきている目安になります。
このとき、ミリ単位で周囲に指をずらして押してみると、再び激痛を感じることがあります。その場合は、ずらした部分を新たに押してください。すると、症状がさらに改善されていきます。
④指先か第二関節の先でツボを押す
ツボを押す際に使う指は、人さし指、中指、親指です。正しい押し方をすれば、特別な力や技術を用いなくても、強い刺激を与えられます。
ポイントは、指の腹ではなく、「指の先」を使うことです。そうすることで、力が分散せず、強い刺激を与えられます。
また、人さし指の第二関節や第三関節の拳を押し当てることで、非常に強い力を与えられます。この押し方は痛みが強いのですが、その分効果も高いので、耐えられる人は、積極的に取り入れてください。


現代日本人の体を健康にするツボを紹介
なお、今回の激痛ツボには、その症状に用いるツボとしては、古典に掲載されていないツボも含まれています。それらは、私が経験から見つけたものです。
古典が間違いだということではありません。時代とともに、生活や体は変化します。古典を参考にしつつ、現代の日本人により効果的なツボを模索した結果、見つかった「古くて新しい激痛ツボ」と言えます。
激痛ツボは、慣れないうちは軽く押しても叫び声が出るほど痛いですが、なぜか癖になります。
最初は、1分も押し続けられないほど痛いこともありますが、続けていると、だんだん痛みに耐えられるようになってきます。それは、体が健康になっている証拠で、痛みに耐えた爽快感も味わえます。
症状別押し方
耳鳴り・難聴
手の上中渚(かみちゅうしょ)と、耳の前にある和髎(わりょう)という激痛ツボは、耳鳴りに特によく効きます。いずれも押すと激痛を伴うツボですが、押し続けると痛みが軽減してきます。それとともに、その場で耳鳴りが軽減する人が多くみられます。
40代の女性で、突発的に起こったキーンという高い音の耳鳴りと、難聴を訴えて来院した方がいました。家庭や職場の問題でストレスが高じて、突発的に耳鳴り・難聴が起こったのです。
現代医学では、このような場合、ステロイド(副腎皮質ホルモン)の大量投与を行いますが、この女性には効かなかったようです。和髎を押すと、かなり耳に響く激痛を感じておられました。しかし、耳鳴り・難聴がその場ですぐに軽減し、ホッとした様子でした。
●左右のうち、耳鳴り・難聴が出ている側のみを押す。ツボを押す順番は自由。
●ツボ1ヵ所につき2分を目安に押す。痛みが我慢できない場合でも、最低30秒は押すこと。
●左右両側に症状がある場合は、両側のツボを押す。
上中渚
見つけ方▶︎
手の甲側で、薬指と小指のまたから骨の溝を手首方法にたどっていったとき、自然に指が止まるところ。

押し方▶︎
刺激する手と反対側の手で、小指方向から包むようにして、中指の先を当てる。人さし指と薬指も添え、指先を押し込むように、グッと手を握り込んで押す。薬指の先まで電気が走るような痛みが特徴。

和髎
見つけ方▶︎
耳の穴顔側の出っ張り(耳珠)ともみあげの付け根の間にある深いくぼみのところ。和髎に触れると、ドクドクと拍動が感じられる。

押し方▶︎
人さし指の第二関節を当て、反対側の耳に線を通すような気持ちでグーッと押す。耳の穴の奥までしびれるような痛みが特徴。

症状別押し方
めまい
日ごろの食生活で油脂を多くとっていると、胃や肝臓が弱って、めまいが起こる大きな原因になります。両方を元気にして、めまいを速やかに改善するのが、後頭部にある上風池(かみふうち)という激痛ツボです。首を左右どちらかに傾けるとめまいが起こる場合、上風池を強く押すと、その場でめまいが治まります。
もう一つ、私の経験上、めまいに優れた効果がある激痛ツボが、免疫(病気に抵抗する働き)を強化する内関(ないかん)です。現代日本人のめまいは、免疫の弱りも関係しています。
ある50代女性は、突然のめまいに襲われ、病院でメニエール病と診断されて薬を処方されましたが、思うように改善しませんでした。当院で、上風池と内関を刺激したところ、ゲプゲプ泡を吹き始めました。話を聞くと、チョコレートを食べてからウイスキーを飲み、ウーロン茶も飲んだといいます。
ウーロン茶は消化力が強いので、まともな食事をしないで飲むと、胃壁を刺激し過ぎて、胃にダメージを与える場合があります。この患者さんのめまいは、その結果として起こっていたのです。激痛ツボで胃が元気になった結果、すっかりよくなりました。
●それぞれ左右のツボを刺激する。ツボを押す順番は自由。
●ツボ1ヵ所につき2分を目安に押す。痛みが我慢できない場合でも、最低30秒は押すこと。
上風池
見つけ方▶︎
耳の後ろにある大きな骨の出っ張り(乳様突起)から、指幅2本分後ろのくぼんだところに、風池というツボがある。そこから指幅1本分上がったところ。

押し方▶︎
人さし指の第二関節を突き立てるように当てて、グーッと押す。

内関
見つけ方▶︎
手首の手のひら側にできる最も太い横ジワの中央から、ひじのほうへ指幅2本分寄ったところ。

押し方▶︎
人さし指の第二関節を差し込むように当てて、手のひら方向にグーッと押す。ひじまでジーンと響く痛みが特徴。

症状別押し方
老眼・近視
太衝(たいしょう)と脳空(のうくう)は、どちらも、押すと「やめてくれ!」と叫ぶほどの激痛を感じるツボです。目が弱っている人が押すと、「ギャッ」と叫んでしまうくらい、強く鋭い痛みを感じます。
現代人はスマホを長く使うことが多く、目が疲れているので、ほとんどの人は、これらのツボで激しい痛みを感じるはずです。習慣づけて押していると、老眼や近視の進行阻止や改善に、高い効果が得られます。
これらのツボは、目に効くツボとしては、古典には出ておらず、論文もあまり出ていません。しかし、私の治療経験から、目のトラブルに高い効果を確認しています。ドライアイや高い眼圧、疲れ目やかすみ目など、目の症状なら幅広く効きます。
●左右のうち、目の症状が気になる側を押す。
●ツボ1ヵ所につき2分を目安に押す。痛みが我慢できない場合でも、最低30秒は押すこと。
●左右両側の目の症状が気になる場合は、両側のツボを押す。ツボを押す順番は自由。
脳空
見つけ方▶︎
手の薬指と小指の指のまたに耳たぶ下側を当てて、指で耳を挟む。手のひらを耳裏にピタリと当てて、中指の指先が当たるあたりのくぼみのあるところ。

押し方▶︎
人さし指の第二関節を当て、目を突き抜くようなイメージでグーッと押す。鋭い痛みを伴う。

太衝
見つけ方▶︎
足の甲側で第1指と第2指の骨(中足骨)が合わさる手前で、少しくぼんだ感じがするところ。

押し方▶︎
足裏を床にしっかり当てて、ツボと反対側の手の親指の先をくぼみに差し込むように当て、グーッと押す。

症状別押し方
高血圧・低血圧
高過ぎる血圧を下げる激痛ツボが、湧泉(ゆうせん)と百会(ひゃくえ)です。これらのツボを刺激すると、高過ぎる血圧が下がるだけでなく、低過ぎる場合は逆に適度に上がります。薬のように一方向ではなく、高過ぎる血圧も低過ぎる血圧も正常化させるのが、激痛ツボの利点です。
その典型例があります。70歳のときから15年ほど当院に通っていた囲碁の名人の男性は、最大血圧が140mmHg、最小血圧が60mmHg前後と、両者の差が大きい状態でした(正常値は最大血圧140mmHg未満、最小血圧90mmHg未満)。
血圧は、高いのも問題ですが、最大と最小の差が大きいと、血管の負担が増えたり、動脈硬化が起こりやすくなったりするといわれています。この男性に激痛ツボを使った治療をすると、治療のたび、最大血圧が120mmHg前後、最小血圧が71〜72mmHgと、非常に良好な数値になりました。血圧が気になる方は、ぜひ押してください。
●湧泉は左右のツボを刺激する。
●ツボ1ヵ所につき2分を目安に押す。痛みが我慢できない場合でも、最低30秒は押すこと。
●ツボを押す順番は自由。
湧泉
見つけ方▶︎
足の裏で、小指と内くるぶしを結んだ線と、第2指と第3指の間からかかと方向に伸ばした線が交わるところのくぼみ。

押し方▶︎
人さし指の第二関節を押し込むように当て、グーッと押す。

百会
見つけ方▶︎
左右の耳の最上端から上に伸ばした線と、鼻すじの線が交わるところが頭頂部。その頭頂部すぐ後ろ。

押し方▶︎
人さし指の第二関節を当て、グーッと押す。突き刺さるような痛みが特徴。

症状別押し方
糖尿病・高血糖
糖尿病・高血糖で不足するインスリンは、膵臓から分泌されます。中医学でいう「脾」は膵臓を含んでいるので、脾経の激痛ツボが特効をもたらします。それがひざの近くにある陰陵泉(いんりょうせん)です。
一方、脾と深い関係を持ち、多飲多尿などの糖尿病の症状に効果的なのが、膀胱経の意舎(いしゃ)です。これらを刺激することで、高過ぎる血糖値は速やかに下がります。
例えば、会社経営をしている中年男性の方は、もともと糖尿病で、血糖値を下げる薬を飲んでいるものの、なかなか正常値内に安定しなかったのです。それが、意舎と陰陵泉を押したところ、空腹時血糖値が20mg/dl下がりました。刺激をくり返すことで、その効果が安定してきました。
ここで紹介するツボを押すと激痛がある場合は、糖尿病のリスクが高くなっている可能性があります。血糖値が正常値の人も、試しに一度押して、痛さを確認してみることをお勧めします。
●それぞれ左右のツボを刺激する。ツボを押す順番は自由。
●ツボ1ヵ所につき2分を目安に押す。痛みが我慢できない場合でも、最低30秒は押すこと。
意舎
見つけ方▶︎
背中側一番下の肋骨先端を触り、その上の肋骨との間の溝を見つける。そのまま、背骨方向に手でたどり、背中をタテに走る筋肉(脊柱起立筋)の外へりに当たるところが意舎。

押し方▶︎
●手で押す場合
ツボと同じ側の人さし指の第一関節を当て、溝にはめ込むようにしてグーッと押す。

●テニスボールを使う場合
あおむけに寝て、意舎と床の間にテニスボールを挟み、体の重みで押す。ズシンと重い痛みが特徴。

陰陵泉
見つけ方▶︎
内くるぶしから、すねの骨の後ろへりをひざに向かってたどり、ひざの近くで突き当たる出っ張った骨のすぐ下。

押し方▶︎
ツボと同じ側の手でひざ下をつかみ、親指の先でグーッと押す。骨まで響く痛みが特徴。

症状別押し方
腰痛
腰痛には、ひざ裏の委中と呼ばれるツボが有名ですが、私が腰痛で悩む方々に対し、丹念に確認していったところ、跗陽(ふよう)のほうがはるかに高い効果を示すことが分かりました。
その他、関元兪(かんげんゆ)というツボは、腰痛の痛みそのものが出てくるところでもあります。あおむけに寝て、握りこぶしやゴルフボールで刺激すると、非常に痛いのですが、それをこらえて刺激していると、ギックリ腰、ヘルニアなど、どんな腰痛でも軽減してきます。
ある50代男性は、腰の右側の痛みに悩まされており、歩けないほどでした。その方は、自分で関元兪にゴルフボールを当てていたところ、それだけでも、腰痛が軽減してらくに歩けるようになったそうです。当院で跗陽も併せて刺激したところ、より腰痛が軽減しました。
●それぞれ左右のツボを刺激する。ツボを押す順番は自由。
●ツボ1ヵ所につき2分を目安に押す。痛みが我慢できない場合でも、最低30秒は押すこと。
跗陽
見つけ方▶︎
外くるぶしから骨に沿って人さし指、中指、薬指、小指の幅分上の高さで、アキレス腱と骨の間。押すと筋肉がへこむところ。

押し方▶︎
ツボと同じ側の手の親指の先を、ツボに当てる。手でふくらはぎをつかむようにして、グーッと押す。かかとまでピキピキと響く痛みが特徴。

関元兪
見つけ方▶︎
背骨下の平たい骨(仙骨)の上へりで、押すとくぼむところ。腰骨の一番高いところに手を当て、背骨側にたどっていき、背骨と交わったところ。

押し方▶︎
人さし指の第一関節をくぼみに差し込むように当ててグーッと押す。

または、あおむけに寝て、関元兪と床の間に握りこぶしを挟み、体の重みで押す。こぶしの代わりにテニスボールを関元兪に当てて、体重をかけて刺激してもよい。

症状別押し方
免疫力
免疫(病気に対する抵抗力)増強効果が高いのが、手首の近くにある内関(ないかん)と、胸にある神封(しんぽう)という激痛ツボです。東洋医学では、免疫を増強するために最重要なのが胸腺(心臓の上にある臓器)だと考えられています。内関、神封ともに、胸腺に深く関わるツボです。
一般的に、体温が35℃台だと免疫機能が低下するといわれています。神封のツボを押すと、体温を上げる効果が期待できるので、平熱の上昇を通じて、免疫増強に効果を発揮します。さらなる新型コロナの感染拡大に備えて、ぜひこれらの激痛ツボを押しましょう。
なお、胸腺は、白血球に対して「自分の組織は攻撃しない」という教育も行う臓器です。ですから、これらの激痛ツボは、関節リウマチやバセドウ病などの自己免疫疾患、ハウスダストや花粉などのアレルギー反応の改善にも役立ちます。
●内関は左右のツボを刺激する。
●ツボ1ヵ所につき2分を目安に押す。痛みが我慢できない場合でも、最低30秒は押すこと。
●ツボを押す順番は自由。
内関
見つけ方▶︎
手首の手のひら側にできる最も太い横ジワの中央から、ひじのほうへ指幅2本分寄ったところ。

押し方▶︎
人さし指の第二関節を差し込むように当てて、手のひら方向にグーッと押す。ひじまでジーンと響く痛みが特徴。

神封
見つけ方▶︎
胸部の乳首の高さで、体の中心線から指幅2本分乳頭側に寄ったところ。

押し方▶︎
両手の中指の先を、左右両側の神封に当てて、同時にグーッと押す。胸の奥に突き刺さるような痛みが特徴。

症状別押し方
痔
中医学の理論では、痔は腎の弱りから起こるとされています。そこで、腎と深く関係する膀胱経のツボである下髎(げりょう)が非常に効果的です。あわせて、頭頂部にある百会(ひゃくえ)というツボを押すと、痔の症状を速やかに軽減できます。
下髎は、私が開催している専門家向けの講習会でも認知度が低く、「こんなところにツボがあるのですか」と言われることがあります。試しに押してあげると、「ギャアッ」と叫ぶほど痛いので驚かれます。そういう人に「痔はありませんか」と効くと、決まってあるのです。
とびきり痛い代わりによく効き、痔の痛みがすぐに和らぎます。百会とともに習慣づけて刺激することで、痔そのものが改善されていきます。
●下髎は左右両側のツボを刺激する。
●ツボ1ヵ所につき2分を目安に押す。痛みが我慢できない場合は、最低30秒は押すこと。
●ツボを押す順番は自由。
下髎
見つけ方▶︎
背骨下の平たい骨上にある(仙骨上)。尾骨最上部から指幅3本分上にある骨の出っ張りのすぐ両わき。このツボは、仙骨に空く神経の通り道の穴。

押し方▶︎
ツボと同じ側の人さし指の第三関節を当ててグーッと押す。ピリピリと響く痛みが特徴。

百会
見つけ方▶︎
左右の耳の最上端から上に伸ばした線と、鼻すじの線が交わるところが頭頂部。その頭頂部すぐ後ろ。

押し方▶︎
人さし指の第二関節を当て、グーッと押す。突き刺さるような痛みが特徴。

症状別押し方
顎関節症
あごを開け閉めするたび痛んだり、音がしたりする顎関節症は、不快でつらいものです。これに対して、足の甲にある陥谷(かんこく)というツボがよく効きます。
顎関節症の人は、下あごを左右どちらかに動かしたとき、痛みや違和感を感じることがよくあります。陥谷を押し続けていると、その場であごの開け閉めの痛みや違和感が軽くなります。
●左右のツボを刺激する。
●ツボ1ヵ所につき2分を目安に押す。痛みが我慢できない場合でも、最低30秒は押すこと。
陥谷
見つけ方▶︎
足の甲側、第2指と第3指の骨の間を足首に向かってたどり、骨の付け根で指が止まったところ。少しくぼんでいるのが目印。

押し方▶︎
手の中指の先をくぼみに差し込むように当て、グーッと押す。突き刺すような痛みが特徴。


この記事は『安心』2020年10月号に掲載されています。
www.makino-g.jp