ハッカ油のメントールという香り成分は、大脳辺縁系に伝達され不安やイライラが和らいだり、気分がリフレッシュしたりします。また、喫煙抑制効果も期待できます。抗菌・抗ウイルス作用があり、感染症の予防や、ダニやカビの繁殖防止にも役立ちます。【解説】橋口玲子(緑蔭診療所 医師)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

橋口玲子(はしぐち・れいこ)

緑蔭診療所医師。1954年生まれ。東邦大学医学部卒業。循環器専門医、小児科専門医、認定内科医。医学博士。漢方やアロマセラピー、ハーブを取り入れた診療を行っている。著書に『補完・代替医療 ハーブ療法』(金芳堂)、『専門医が教える 体にやさしいハーブ生活』(幻冬舎)、『新版 医師が教えるアロマ&ハーブセラピー』(マイナビ出版)など多数。
▼緑蔭診療所(公式サイト)

眠気が覚めて集中力アップ

私は、現代医学に漢方を取り入れた医療を行っており、患者さんには必要に応じて、ハーブや精油を使ったセルフケアをお勧めしています。

アロマセラピーで使う精油のなかでも、夏にお勧めすることが多いのがさわやかな香りの「ミント」です。

いくつかの種類がありますが、代表的な精油がペパーミントで、西洋ハッカと呼ばれています。

一方、「ジャパニーズミント」と呼ばれているのが和種ハッカ(薄荷)。日本では「ハッカ油」として、昔から親しまれてきました。

ミント系の精油は、清涼感や爽快感が特徴です。それを醸し出すのが、薬効に優れたメントールという香り成分。その含有量が多いのがハッカ油です。

ハッカ油は、香りをかぐ、吸入する、湿布にする、肌につけるなど、多くの活用法があります(使い方は下項参照)。ハッカ油の代表的な効能を順に五つ紹介しましょう。

リフレッシュ効果

メントールの香りが鼻から入ると、嗅細胞を刺激して電気的信号に変わり、大脳辺縁系(扁桃体や海馬)に伝達されます。ここは情動(不安、緊張、喜び、悲しみなど)をコントロールする中枢ですから、不安やイライラが和らいだり、気分がリフレッシュしたりします。

禁煙を志している人は、タバコを吸いたくなったときに香りをかげば、喫煙抑制効果も期待できます。

香りの情報は、さらに脳の視床下部に伝えられ、自律神経(意志とは無関係に血管や内臓の働きを調整する神経)の活動時に優位になる交感神経を刺激します。体がシャキッとして、午後の眠気が覚め、集中力も高まります

抗菌・抗ウイルス作用

メントールには抗菌・抗ウイルス作用があります。希釈したハッカ油スプレーを用意し、マスクの外側にひと吹きすれば、感染症の予防が期待できます。また、部屋や浴室でこまめに噴霧すれば、ダニやカビの繁殖防止にも役立ちます。

眼精疲労が軽減し肩こり、筋肉痛も和らぐ

胃腸の働きを整える

メントールには、胃腸のぜん動運動(内容物を先に送る動き)を促進して消化を助け、おなかの張りを取ったり、便秘を改善したりする働きがあります。胃腸の働きが整えば、吐き気も抑えられます。乗り物酔いをする人は、乗車前に吸入すればいいでしょう。

ハッカ油でマッサージオイルを作り、おなかを優しくさすったり、ハッカ油を含むタオルで温湿布をしたりするのも効果的です。

冷却作用

メントールは、希釈して肌につけるとひんやりします。実際に体温が下がるわけではなく、脳のセンサーが刺激を受け、冷たいと感じるのです。夏の湯上がりにハッカ油を含むタオルで体をふくと、スーッとして気持ちがいいものです。

血管拡張作用

メントールには末梢血管を拡張する働きがあるので、血流が促進されます。温湿布を鼻に当てると鼻の通りがよくなり、閉じた目の上に当てると眼精疲労の軽減が期待できます。

それに加えて、メントールには軽い鎮痛作用もあるので、肩こりや腰痛、筋肉痛などの症状を和らげます。実際、メントールは市販の湿布薬にも使われています。

メントールは非常に小さな分子なので、香りをかぐとすぐに脳まで届き、即効的に作用します。肺や皮膚から吸収すると、毛細血管に入って全身をすばやく循環します。

精油を皮膚に使用する場合、原液では危険なので、必ず希釈してください

水に溶けませんから、キャリアオイル(希釈用のオイル)や無水エタノール(100%アルコール)、塩(天然塩)などを用います。

精油やキャリアオイルは、できれば専門店で購入してください。専門店の精油は100%植物由来です。キャリアオイルは、スイートアーモンドオイルがお勧めですが、手に入らない場合は、日本薬局方のオリーブオイル(オリブ油)でもかまいません。薬局で購入できます。

決して食用の油を使ったりしないでください

精油には成分が凝縮されています。使い過ぎると、逆に気分が悪くなるケースもあります。基本は1%です。1滴が約0.05mlですから、10mlの希釈剤(キャリアオイルなど)に対して2滴です。高齢者や子供、妊娠中の女性なら、1滴でも十分です。

画像: 斜め45度に傾けて1滴垂らす!

斜め45度に傾けて1滴垂らす!

精油は、瓶をゆっくり斜め45度くらいに傾けて1滴垂らします。瓶の口を真下に向けると、かえって出にくくなります。とはいっても、瓶を振ると1滴の量に誤差が出るので、振るのは禁物です。

皆さんもハッカ油を上手に活用し、さわやかで快適な生活をお送りください。

ハッカ油の活用法 1
眠気、イライラ、タバコ依存、乗り物酔い(予防)

ハッカの清涼感ある香りは、気持ちをリフレッシュさせて、頭をスッキリさせます。眠気を覚まし、イライラを解消。禁煙中の人なら喫煙抑制効果も期待できます。胃腸のぜん動運動を促す働きもあるので、乗り物酔いをする人は乗車前に吸入するといいでしょう。

ハッカ油吸入

【用意する物】
ハッカ油(精油)…1滴
ハンカチ(なければティッシュペーパーでもよい)

画像1: ハッカ油の活用法 1 眠気、イライラ、タバコ依存、乗り物酔い(予防)

ハンカチに精油を落とす。

画像2: ハッカ油の活用法 1 眠気、イライラ、タバコ依存、乗り物酔い(予防)

顔の前で振りながら吸入する。

画像3: ハッカ油の活用法 1 眠気、イライラ、タバコ依存、乗り物酔い(予防)

ハッカ油スプレー

【用意する物】
ハッカ油(精油)…10滴 
無水エタノール…10ml
(または消毒用エタノール。薬局で購入できる)
精製水(水道水でもよい)…40ml
スプレー容器(アルコール対応の容器を使う)

画像4: ハッカ油の活用法 1 眠気、イライラ、タバコ依存、乗り物酔い(予防)

スプレー容器に無水エタノールを入れ精油を加えてよく混ぜる。

画像5: ハッカ油の活用法 1 眠気、イライラ、タバコ依存、乗り物酔い(予防)

①に精製水を加え…

画像6: ハッカ油の活用法 1 眠気、イライラ、タバコ依存、乗り物酔い(予防)

ふたをしてさらによく混ぜれば出来上がり。

画像7: ハッカ油の活用法 1 眠気、イライラ、タバコ依存、乗り物酔い(予防)

使うときは、その都度よく振ってからひと吹きする。
※1ヵ月以内に使い切る。

【注意】人やペットに向けてスプレーしない。

画像8: ハッカ油の活用法 1 眠気、イライラ、タバコ依存、乗り物酔い(予防)

ハッカ油の活用法 2
鼻づまり、眼精疲労、肩こり、筋肉痛

温湿布を行うと血行がよくなって、鼻がスーッと通るようになります。目の疲れも軽減。筋肉のコリや緊張も和らぎ、肩こり、筋肉痛も楽になります。

ハッカ油温湿布

【用意する物】
ハッカ油(精油)…1滴 
塩…ひとつまみ(約5g)
フェイスタオル…1枚

画像1: ハッカ油の活用法 2 鼻づまり、眼精疲労、肩こり、筋肉痛

塩に精油を垂らして…

画像2: ハッカ油の活用法 2 鼻づまり、眼精疲労、肩こり、筋肉痛

よく混ぜる。

画像3: ハッカ油の活用法 2 鼻づまり、眼精疲労、肩こり、筋肉痛

洗面器に適温(50度前後)のお湯を張り…

画像4: ハッカ油の活用法 2 鼻づまり、眼精疲労、肩こり、筋肉痛

①を入れてさらに混ぜる。

画像5: ハッカ油の活用法 2 鼻づまり、眼精疲労、肩こり、筋肉痛

②にタオルを浸して染み込ませたら…

画像6: ハッカ油の活用法 2 鼻づまり、眼精疲労、肩こり、筋肉痛

しっかりしぼる。

画像7: ハッカ油の活用法 2 鼻づまり、眼精疲労、肩こり、筋肉痛

■鼻づまりに
タオルをたたみ鼻の上にしばらく乗せておく。

画像8: ハッカ油の活用法 2 鼻づまり、眼精疲労、肩こり、筋肉痛

■眼精疲労に
タオルをたたみ目の上にしばらく乗せておく。

画像9: ハッカ油の活用法 2 鼻づまり、眼精疲労、肩こり、筋肉痛

■肩こり、筋肉痛に
タオルをたたみコリや痛みのある患部にしばらく当てておく。

画像10: ハッカ油の活用法 2 鼻づまり、眼精疲労、肩こり、筋肉痛

暑さ対策(入浴後など)

暑い夏の入浴後、暑さで再び汗をかくのは不快なものです。そういうときは、風呂上がりにハッカ油冷感タオルで全身をふくといいでしょう。ハッカの冷感で心地よいものです。

ハッカ油冷感タオル

【用意する物】
ハッカ油(精油)…1滴 
塩…ひとつまみ(約5g)
フェイスタオル…1枚

塩に精油を垂らしてよく混ぜる。
洗面器に水を張り、①を入れてさらに混ぜる。
②にタオルを浸して染み込ませたら、しっかりしぼる。

画像: 暑さ対策(入浴後など)

ハッカ油の活用法 3
胃もたれ、おなかの張り、便秘、吐き気、腰痛、肩こり、筋肉痛

通常のマッサージ効果に香りの効果が加わり、さらにハッカ油とキャリアオイルの成分が皮膚から浸透する効果まで期待できます。胃腸の働きが整い、胃もたれやおなかの張り、吐き気を抑制。便秘にも有効です。血流が促進され、腰痛や肩こり、筋肉痛の緩和にも役立ちます。入浴後に行うとより効果的。

ハッカ油マッサージオイル

【用意する物】
ハッカ油(精油)…2滴
キャリアオイル…10ml
※多めに作る場合も同じ割合にする。ハッカ油は1%。
※キャリアオイルは、スイートアーモンドオイルがお勧め。なければ、オリーブオイル(日本薬局方の「オリブ油」)でもよい。

画像1: ハッカ油の活用法 3 胃もたれ、おなかの張り、便秘、吐き気、腰痛、肩こり、筋肉痛

キャリアオイルに精油を混ぜ、マッサージオイルを作る。

画像2: ハッカ油の活用法 3 胃もたれ、おなかの張り、便秘、吐き気、腰痛、肩こり、筋肉痛

①のオイルを手に取る。スポイトを使うと便利。

画像3: ハッカ油の活用法 3 胃もたれ、おなかの張り、便秘、吐き気、腰痛、肩こり、筋肉痛

オイルが残った場合

画像4: ハッカ油の活用法 3 胃もたれ、おなかの張り、便秘、吐き気、腰痛、肩こり、筋肉痛

■胃もたれ、おなかの張り(ガス腹)、便秘に
マッサージオイルをおなかに塗り、時計回りに大きく円を描くように優しくさする。

画像5: ハッカ油の活用法 3 胃もたれ、おなかの張り、便秘、吐き気、腰痛、肩こり、筋肉痛

■吐き気に
マッサージオイルをみぞおちに塗り、優しくさする。

画像6: ハッカ油の活用法 3 胃もたれ、おなかの張り、便秘、吐き気、腰痛、肩こり、筋肉痛

■腰痛、肩こり、筋肉痛に
マッサージオイルを患部に塗り、優しくさする。

画像7: ハッカ油の活用法 3 胃もたれ、おなかの張り、便秘、吐き気、腰痛、肩こり、筋肉痛
画像8: ハッカ油の活用法 3 胃もたれ、おなかの張り、便秘、吐き気、腰痛、肩こり、筋肉痛
画像9: ハッカ油の活用法 3 胃もたれ、おなかの張り、便秘、吐き気、腰痛、肩こり、筋肉痛
画像: この記事は『壮快』2020年10月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年10月号に掲載されています。

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