ハッカの主成分であるメントールには、鼻の奥の線毛細胞の動きを活発にしたり、末梢血管を拡張させたりする働きがあります。鼻の通りをよくして呼吸をしやすくしてくれるのです。また、植物の忌避作用によって抗ウイルス効果も期待できます。【解説】岡崎好秀(モンゴル医学科学大学客員教授)

解説者のプロフィール

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岡崎好秀(おかざき・よしひで)

1978年、愛知学院大学歯学部卒業、大阪大学歯学部、岡山大学病院小児歯科講師などを経て、現在、国立モンゴル医学科学大学客員教授。歯学博士。専門は小児歯科。障害を持つ子供を中心に診療を行う。日本小児歯科学会指導医。日本障害者歯科学会認定医。『口を閉じれば病気にならない』(家の光協会)など、著書、共著多数。

抗ウイルス効果に加え脳に冷感が伝わる

今年は、新型コロナウイルス感染症の流行で、夏もマスクが手放せなせませんでした。

マスクをしていると体に熱がこもるだけでなく、マスクの目が細かければ細かいほど、呼吸がしづらくなって、熱中症だけでなく酸欠を招く危険があるのです。

また、呼吸がしづらくなると、人は口呼吸になります。あるテレビ番組の街頭調査で、マスクの内側で口が開いている人は3分の2に上っていました。

本来、口は食べ物が入るところで、鼻は呼吸を行う器官です。ですから、鼻は空気を吸い込んだ際、粘液を出して空気中のホコリや細菌をキャッチし、鼻の奥にある線毛細胞がブラシのように働いて体外に排出する、という防御作用を持っているのです。

さらに、鼻から入った空気はのどの奥の上咽頭に当たります。そこにも体を守るリンパ組織があって、細菌の侵入を防いでいます。

口には、そのような防御作用が備わっていません。口呼吸をすると、空気中の細菌もそのまま体に侵入してしまいます。

つまり、マスクは熱中症や酸欠を引き起こす恐れがあるだけでなく、口呼吸を常態化させて、ウイルス感染のリスクを高める可能性もあるのです。

そこで、それらの対策として、マスクにひと吹きする「ハッカ油スプレー」を提案します。

ハッカはミントの和名で、ハーブの一つです。主成分であるメントールには、鼻の奥の線毛細胞の動きを活発にしたり、末梢血管を拡張させたりする働きがあります。それによって鼻の通りをよくして、呼吸をしやすくしてくれるのです。

また、ハーブには、動物や虫に食べられないために植物が作り出した、忌避作用があります。動物や虫が嫌うのと同様に、細菌やウイルスも嫌います。ですから、ハッカには抗ウイルス効果も期待できます。

さらに、ハッカにはスーッとした清涼感があることも特長です。加えて、鼻で呼吸できるようになれば、鼻から入った空気が、脳に冷感を伝えます。これらは、マスクによる熱中症や酸欠対策にも役立つでしょう。

「空気が鼻から一気に入ってくる」

※妊婦や授乳中のかた、乳幼児、高齢者で呼吸器系の弱いかたは使用を控えてください。

では、ハッカ油スプレーの作り方を紹介します。

まず、ハッカ油は水に溶けにくいため、エタノールに加えて、よく溶かします。それを約5倍の水で薄めれば出来上がり。使い方は、スプレー容器に入れて、マスクの外側にシュッとひと吹きするだけです。

■岡崎先生のハッカ油スプレーの作り方

画像1: 「空気が鼻から一気に入ってくる」

【用意する物】
ハッカ油(精油)…10〜15滴
無水エタノール…10ml(薬局で購入できる)
精製水…50ml(ない場合は水道水でもよい)
スプレー容器(アルコール対応の容器を使う)

画像2: 「空気が鼻から一気に入ってくる」

無水エタノールに精油を加えてよく混ぜ、スポイトなどを用いてスプレー容器に移す。

画像3: 「空気が鼻から一気に入ってくる」

①に精製水を加え、ふたをしてよく混ぜれば出来上がり。スプレーをマスクの外側にひと吹きし、マスクを着用。

画像4: 「空気が鼻から一気に入ってくる」

エタノールは、アルコール100%の無水エタノールでも、80%の消毒用エタノールでもかまいません。

北里大学の研究によると、アルコール濃度50%以上であれば、新型コロナウイルスは不活性化するとのことです。だとすれば、酒造メーカーが作っているアルコール50%以上の蒸留酒でも代用が可能です。

水は、基本的には精製水を使いましょう。手に入らない場合は、水道水でもけっこうです。

スプレー容器は安価なもので十分ですが、アルコール対応ができない容器はよくありません。手で押すとへこむポリスチレン(PS)製の物は避けてください。

香りや刺激の感じ方には個人差があるため、最初は薄めから試すことをお勧めします。妊婦や授乳中のかた、乳幼児、高齢者で呼吸器系の弱いかたは使用を控えてください。

マスクにハッカ油スプレーを吹きかける方法は、私自身、今年の2月から実践しています。装着すると一瞬で鼻がよく通り、呼吸がしやすくなります。歯科の患者さんや周りの人にも勧めていますが、皆さん一様に「空気が鼻から一気に入ってくる」とおっしゃいます。

ただし、熱中症や酸欠を防ぐには、人のいないところではマスクを外す、暑さや息苦しさを感じたらすぐにマスクを取ってゆっくり深く呼吸をする、ということを心がけましょう。頭痛、倦怠感、集中力の低下なども、酸欠になりかけている合図かもしれません。

そして、こうした予防策の補助として、ハッカ油スプレーを活用するとよいでしょう。ハッカ油スプレーは、蚊やハエなどの虫よけとしても使えます。

画像: この記事は『壮快』2020年10月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年10月号に掲載されています。

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