解説者のプロフィール

村上祥子(むらかみ・さちこ)
料理研究家、管理栄養士。公立大学法人福岡女子大学国際文理学部客員教授。電子レンジ調理の第一人者。糖尿病や高血圧をはじめとした生活習慣病予防、改善のため、栄養バランスの取れたカロリー・塩分控えめのレシピを多数考案。福岡に拠点を置きながらも、講演会やテレビ出演などで全国を飛び回っており、年間100回は飛行機を利用する、自称「空飛ぶ料理研究家」。
▼空飛ぶ料理家 村上祥子のホームページ(公式サイト)
高血圧対策に役立つ成分を豊富に含む
私が、果物を酢に漬けたフルーツ酢を提案して、はや40年。今まで、さまざまなフルーツ酢を提案してきましたが、今回ご紹介する「バナナ酢」は、その中でも人気の高いレシピの一つです。
私がバナナ酢を考案したきっかけは、夫の高血圧のためでした。夫が、年を取るごとに血圧が高くなってきたので、なんとかそれを改善したいと思ったのです。
血圧を上げてしまう塩分(ナトリウム)を、速やかに体外に排出するには、ナトリウムと拮抗して働くカリウムやマグネシウムなどのミネラルが欠かせません。
カリウムやマグネシウムを豊富に含む果物といえば、バナナ。どちらのミネラルも、果物ではトップクラスの含有量があります。
食物繊維も豊富ですから、腸内環境を整えて便通をよくし、体内の老廃物や不要物を排泄しやすくする効果もあります。腸内での血糖の吸収を抑えて、食後に血糖値が急激に上昇する「血糖値スパイク」も防いでくれます。
一方の酢にも、動脈硬化を防いで血管を拡張し、血圧を降下させる作用があります。また、酢の持つ、カルシウムの吸収率を高める作用も見逃せません。
血液中のカルシウムは血圧を上げる作用があるのですが、血液中のカルシウムを骨に沈着させて血液中から減らすためには、逆説的ですが、十分にカルシウムを摂取することが必要です。
カルシウムが不足すると、血液中のカルシウム濃度を保つために、どんどん骨からカルシウムが血液中に放出されてしまうからです。
つまり、カルシウム不足は骨粗鬆症(骨がもろくなる病気)と高血圧を同時に悪化させてしまう要因なのです。
さらに酢には、血糖や脂肪をエネルギーに変える「クエン酸回路」を働かせやすくする作用による疲労回復効果や、肥満解消に役立つ代謝促進効果があります。
こうした作用を持つバナナと酢を組み合わせたバナナ酢なら、きっと高血圧の改善にも役立つだろうと考えました。
バナナ酢の基本の作り方

【材料】
バナナ…中1本(皮を除いて約100ℊ)
黒糖(粉)…100g
黒酢…200ml

【作り方】
❶バナナの皮をむき、2cm程度の輪切りにする。

❷レンジOKの耐熱容器に黒酢と黒糖を入れて軽くかき混ぜ、①を入れる。

❸ふたをしないで、電子レンジ600Wで30秒加熱する。黒糖は溶け切ってなくてよい。
電子レンジを使わない場合
②のままふたをして2週間常温に置いたら出来上がり。ときどき瓶ごとゆすって黒糖を溶かすとよい。2週間たったら、バナナを取り出す。

❹③を電子レンジから取り出し、すぐにふたをして、常温で12時間置いたら出来上がり。
※バナナは1週間で取り出す。

●1日大さじ2~3杯を目安にとる。
●そのまま飲んでもよいし、水などで薄めて飲んでもよい。
●常温で1年間保存できるが、室温が30℃を超える場合は、冷蔵庫で保存がお勧め。
フルーツ酢は、氷砂糖と醸造酢(米酢、穀物酢、リンゴ酢など)で作ることが多いのですが、バナナ酢は黒酢と黒糖を使いました。
風味が合うというのもありますが、黒糖はカリウムやマグネシウムといったミネラルを含んでいて、血圧や血糖値の改善効果が高いこと。黒酢も他の酢よりもアミノ酸が豊富で、より高い血圧や血糖値の改善効果が期待できるからです。
こうして作ったバナナ酢を、夫に毎日飲んでもらいました。そうしてしばらくすると、もくろみ通り、夫の血圧は正常値まで下がったのです。
このバナナ酢をご紹介したところ、「10kg以上の減量に成功した」「浮き輪のような腹回りのぜい肉が取れてウエストが引き締まった」「がんこな便秘が解消した」といった、ダイエットやデトックスの効果を実感する声が寄せられました。
また、「長年の高血圧が改善し、降圧剤(血圧を下げる薬)が不要になった」「ヘモグロビンA1c(過去1~2ヵ月の血糖値の動きの平均を示す値)が下がった」など、生活習慣病の改善報告や、「シミ、くすみが取れて美肌になった」「だるさが取れて疲れにくくなった」「集中力が増して頭が冴えた」といったうれしい感想が、数え切れないほど集まりました。
おいしいからこそ飲み過ぎには注意
バナナ酢は、基本的には水や牛乳などで割って飲みます。
口当たりがいいので、つい飲み過ぎてしまう方がいますが、1日に大さじ2杯までが目安です。朝晩、大さじ1杯ずつとるのがお勧めです。
酢の刺激に弱い方は特にとり過ぎに注意し、すきっ腹にとらず食後にとったり、ドレッシングなどお料理に使ったりするとよいでしょう。
酢に漬けて2週間たったらバナナを取り出しますが、これを漬けたままにしていると、バナナが崩れて、不溶性の食物繊維が糸状にフヨフヨと浮かびだします。バナナの成分ですから問題なく食べられますが、見た目が悪くなるので、取り出すことをお勧めしています。
取り出したバナナはそのまま食べてもいいですし、軽くつぶして電子レンジ(600W)で2分加熱すれば、バナナジャムができます。これは、トーストにぬったり、ヨーグルトに加えたりするとおいしいです。
レシピ通りに作ってもダイエットや血糖値改善効果が出ている方はたくさんいらっしゃいますが、中には糖分がどうしても気になるという方がいます。
その場合は、黒糖の量をお好みで減らすか、全く入れずに作ることもできます。ただ、糖分が少ないと、浸透圧の関係で、バナナの有効成分の抽出力が落ちます。2週間しっかり漬けてから飲み始めるようにしてください。

この記事は『安心』2020年9月号に掲載されています。
www.makino-g.jp砂糖代わりに料理に使える!バナナ酢活用レシピ
バナナ酢は、砂糖の代わりに料理に活用することもできます。こくのある甘みと酸味が、いつもの料理のおいしさをさらに引き立ててくれます。
サバのバナナ酢煮

バナナ酢がサバの臭みを分解!
【材料】(2人分)
サバ切り身……2切れ
ピーマン……2個
しょうゆ……大さじ1
バナナ酢……大さじ2
水……1/2カップ
【作り方】
❶サバは1切れを2つに切り、熱湯(分量外)でさっと湯通しする。
❷ピーマンは縦4つ割りにし、種を除く。
❸フライパンにしょうゆとバナナ酢を入れ、水を加える。①を並べ入れて火にかけ、煮立ったら、サバに煮汁をかけながら中火で煮る。
❹煮汁が半量になったら、②を加え、煮汁がなくなるまで煮詰め、火を止める。
キャベツとジャコのサラダ

バナナ酢効果でジャコのカルシウム吸収がアップ
【材料】(2人分)
キャベツ……100g
チリメンジャコ……大さじ1
Ⓐバナナ酢……大さじ1
しょうゆ……小さじ1
ラー油……小さじ1
【作り方】
❶キャベツは千切りにする。
❷Ⓐの材料を混ぜ合わせる。
❸器に①を盛り、チリメンジャコを散らし、②をかける。
バナナ酢ちらし寿司

バナナ酢をすし酢に使えば、砂糖は不要!
【材料】(2人分)
卵……1個
マグロ刺し身(ぶつ切り)……50g
カニカマボコ……30g
青シソ……2枚
焼きノリ……1/2枚
ご飯(温かい物)……茶碗2杯分(300g)
Ⓐバナナ酢……大さじ2
塩……小さじ1/2
【作り方】
❶卵は炒り卵にする。
❷マグロ刺し身は1cm角程度に切り、カニカマボコは幅1cmに切ってほぐす。
❸青シソと焼きノリは細かくちぎる。
❹ご飯にⒶを合わせてかけ、器に盛る。
❺④に①と②をのせ、③を散らす。
バナナ酢トースト

バナナ酢の、漬けたバナナを使って
【材料】(2人分)
食パン……1枚
バター……小さじ1
漬けたバナナ……2~3切れ
【作り方】
❶食パンをトーストし、バターをぬる。
❷①を2等分して、漬けたバナナをつぶしてのせ、器に盛る。

このレシピは『安心』2021年1月号別冊付録に掲載されています。
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