解説者のプロフィール

西川眞知子(にしかわ・まちこ)
西川眞知子ライフデザイン研究所代表。上智大学外国語学部を経て、佛教大学卒業。第24代ミス横浜。幼少期に病弱だったのを自然療法で克服したのをきっかけに、大学時代にインドやアメリカを歴訪し、ヨガや自然療法に出合う。その経験と研究をもとに「日本ならではのアーユルヴェーダ」を提唱。『アーユルヴェーダで我慢しないアトピー生活』(農文協)、『ヨガのポーズの意味と理論がわかる本』(マイナビ)など著書多数。
▼西川眞知子ライフデザイン研究所(公式サイト)
現代日本に合わせたアーユルヴェーダの知恵
私は、5000年の歴史を持つインドの伝統医学「アーユルヴェーダ」を、現代の日本の生活スタイルに合わせた形で、心と体の健康に生かすための方法を、皆さんにお伝えしています。
アーユルヴェーダで重視されているのは、「消化力」です。老廃物や毒素を、アーユルヴェーダでは「アーマ」と呼び、このアーマの蓄積が老化や病気の元となると考えられています。
口から取り入れた食べ物が、きちんと消化・吸収され、老廃物がしっかりと排泄されることが、健康の基礎となるのです。この一連の流れの中で、大切なのは最後の出口に当たる排泄、つまりデトックスです。
デトックスのためにぜひ毎日活用したいのが「みそ」。もちろんインドにみそはありませんから、アーユルヴェーダの教本にみそについて記載されているわけではありません。
けれども、日本で手に入りにくいインドの伝統的なスパイスなどにこだわるよりも、アーユルヴェーダの「哲学」をそれぞれの風土に合わせて取り入れられるようにすることこそが重要ではないでしょうか。
そのために、日本人にはみそ汁、特にお勧めなのが、「焼きバナナみそ汁」です(作り方は下記参照)。
「えーっ! でもそれ、おいしいの?」と思いましたか? 初めて講座でご紹介したときも、参加者からは「みそ汁にバナナですか?」と戸惑いの声が上がっていました。
けれども実際にその場で「焼きバナナみそ汁」を作って食べてもらうと声は一変。「これはイケますね」と大好評でした。
皮ごと焼くことで免疫力アップ効果が高まる
焼きバナナみそ汁に用いるみそは、白みそがお勧めです。他のみそでも試してみましたが、断然白みそが合います。
バナナと白みそは意外に思える組み合わせなのですが、白みその甘じょっぱさがバナナの甘味をまろやかに包んで見事に調和します。
香川県では甘いあんこ入りの丸餅を白みそ仕立てにしたお雑煮を食べるそうですが、そのイメージに近いかもしれません。特に、バナナを皮ごと焼いて表面を少しトロッとさせると、白みそとなじんでとてもおいしくなります。
バナナは焼くことで免疫力(病気に対する抵抗力)を高める作用がさらに強くなると言われていますから、一石二鳥です。
だしは干しシイタケの戻し汁がよく合いますが、カツオ節やコンブ、イリコなどお好みのものでかまいません。
吸い口としてパクチーやネギやミツバ、白すりゴマや針ショウガを加えると、味がいっそう引き立つだけでなく、毒素の排出や血行促進の効果が高まります。
体が火照っているときには、冷や汁のようにして食べてもおいしいです。
焼きバナナみそ汁の作り方

【材料】(2人分)
熟したバナナ…1本
白みそ…大さじ1と1/2
だし…300ml(シイタケだしがお勧めだが、カツオ、コンブなどお好みでよい)

【作り方】
❶バナナを皮ごとオーブントースターに入れ、皮が黒くなるまで5~6分焼く。

❷皮をむいて一口大に切る。
※熱いのでヤケドに注意してください。

❸鍋にだしと②を入れてひと煮立ちしたら白みそを溶き入れる。

体の火照りを覚ましたいときは冷やして飲むとよい
❹器に盛り、ネギやミツバ、白すりゴマなど好みの吸い口をのせる。西川先生のお勧めはデトックス効果の高いパクチー。
■調理・スタイリング/古澤靖子
ワカメや豆腐などと同様に、みそ汁の具の定番の一つとしてバナナが加わったという方も多いです。中には、手軽さと味がすっかり気に入って、1週間、焼きバナナみそ汁を食べ続けたという方もいました。
そして「便通がとてもよくなりました」「むくみや冷えを感じなくなりました」「気持ちが動揺しにくくなって、落ち着いた感じがします」などの感想が寄せられています。
余分な塩分を排出して水分代謝を高めるカリウムや、老廃物や毒素を吸着して排出を促す食物繊維が豊富なバナナと、腸内環境を整える発酵食品である白みそ。
この二つを組み合わせることで、焼きバナナみそ汁は、体内の余分な塩分や腸内の老廃物の排泄が促されて、便秘やむくみの解消に役立つのです。
焼きバナナみそ汁を食べるようになって気持ちが落ち着いたという例も、バナナに含まれるトリプトファンという精神安定に役立つ成分と、デトックス効果が心に働いたのだと考えられます。
アーユルヴェーダにおいては経験的に腸が脳に与える影響について知られていたのですが、最近では西洋医学でも「脳腸相関」といって、腸と脳は影響を及ぼし合うことが分かっています。
みそ汁以外では、バナナをつぶしてみそと混ぜた「バナナみそ」を、調味料として使うのもいいでしょう。この場合は、白みそに限らず、赤みそや信州みそ、八丁みそなどお好みの種類のみそでかまいません。
バナナみそは、豆腐やコンニャクに塗る田楽みそにしたり、ナスのみそ炒めなどの料理に甘みそ代わりに使ってもおいしいです。パウンドケーキに混ぜ込んでもしっとりしてコクが出て、とてもおいしく仕上がります。ぜひ試してみてください。

この記事は『安心』2020年9月号に掲載されています。
www.makino-g.jp