解説者のプロフィール

水谷剛(みずたに・ごう)
東浦和内科・外科クリニック院長。山口大学医学部卒業。医学博士。東京医科歯科大学医学部附属病院、東京女子医科大学病院等を経て東浦和内科・外科クリニックを開院。内視鏡検査・手術を多数手がけ、訪問診療など地域に密着した医療を実践している。
▼東浦和内科・外科クリニック(公式サイト)
キャベツとジュースにするのもおすすめ
私は、バナナの研究を20年以上続けています。きっかけは、バナナ業者からの健康効果調査の依頼でしたが、そこで判明したバナナの有益さにほれ込み、私自身、毎日バナナを食べるようになりました。
10年ほど前からは、私のクリニックにいらっしゃる肥満や糖尿病、高血圧、高脂血症、がん、便秘などの患者さんの食事療法としても、バナナを取り入れ、多くの成果を上げています。特に印象に残っている方の例をいくつかご紹介しましょう。
血液検査に協力してくれた大学病院の看護師長を務める40代の女性は、高血圧で高脂血症。採取した血液にすでに脂肪が浮き、血液の成分である血清が白濁していた(「乳糜血清」という)ほどでした。
そんな師長さんに、バナナを毎日2本食べてもらいました。するとわずか1週間後の検査で、目で見ても分かるほど血液が本来の色に戻り、コレステロール値と中性脂肪値が正常化して、血液がきれいになっていたのです。高かった血圧も正常値まで下がり、高血圧も克服しました。
もう一人は、他の病院で余命1~3ヵ月の末期の膵臓がんと宣告され、手術も不可能な状態で来院した、当時70歳の女性。
この女性には低用量の抗がん剤治療を行うのにあわせ、免疫力(病気に対する抵抗力)を高める食事療法として、毎日バナナとキャベツをジュースにして飲むよう勧めました(ジュースの作り方は下記参照)。
彼女は非常にまじめに取り組み、バナナキャベツジュースを、毎日朝晩、欠かさず飲み続けました。すると、数ヵ月後には腫瘍マーカーが陰性に転じ、6cm大だったがんが1cmにまで縮小したのです。
彼女はその後も7年間、亡くなる4日前までバナナキャベツジュースを飲み続け、77歳で命を全うされました。末期の膵臓がんと診断されてからの7年生存は非常に珍しく、私の医師仲間たちからも、奇跡的な成果だと驚かれました。
最近では、「どんなダイエット法も効果がなかった」という50代の男性が、夕食前にバナナを食べることで、3ヵ月で8kgの減量に成功しました。100kgほどあった体重は、現在80kg台まで落ちています。体重の減少とともに、血圧や血糖値も下がりました。
■免疫力を上げるバナナキャベツジュース

バナナ1本にキャベツの葉2~3枚、牛乳(または豆乳)200ml、好みでハチミツを加えてミキサーにかける。
バナナの薬効が続々判明している
バナナは年間を通して安価でどこででも手に入ります。皮をむくのもらくで、手軽に食べられますから、どなたにでも無理なくとり続けられる食品です。そんなバナナには健康に役立つ作用がたくさんあります。
●免疫力を高める
バナナには、病気の予防や治癒に必要な免疫賦活作用(免疫力を活性化する作用)や、抗酸化作用があります。
マウスにバナナの抽出液を投与した実験で、免疫細胞である白血球と、マクロファージ(白血球の一種)が作り出すTNFという物質が増えたり、細胞のがん化を防いだりする作用が確認されています。
特に、皮にシュガースポットと呼ばれる黒い斑点が出た完熟バナナに、高い免疫賦活作用と抗酸化作用があることが判明しています。
●血圧を下げる
血液中のナトリウム(塩分)を排出して血圧を下げる働きのあるカリウムを最も多く含む果物が、バナナです。1日のうちで血圧が一番高くなる朝にバナナを食べると、より血圧を下げる効果が期待できます。
●血糖値コントロールに役立つ
バナナは白飯や食パンなどと比べて、食後の血糖値を上げにくい低GI食品です。インスリンの働きをよくし、糖質や脂質の代謝に不可欠なビタミンB群やマグネシウムも豊富です。
血管にダメージを与え、動脈硬化を進ませて、糖尿病の合併症を引き起こすリスクを高めるグルコーススパイク(血糖値が急上昇・急降下する状態)が起こりにくいのもメリットです。
●ダイエット
甘い口当たりに反して、バナナ1本(約100g)のエネルギーは80kcal程度と、白飯半膳ほどしかありません。さらに、バナナには吸収のスピードが異なる何種類もの糖類が含まれており、血糖値が急激に落ちにくいため、すぐに満腹感が得やすい一方で腹持ちがいいのです。
また、バナナにはイライラを抑えるセロトニンの生成に欠かせない、トリプトファンとビタミンB6が含まれているので、ストレス食いを防ぐ効果もあります。
●便秘の解消
バナナには便を柔らかくする水溶性食物繊維と、排便をスムーズにする不溶性食物繊維の両方が豊富なため、便秘の解消にはよく効きます。このバナナの便通効果は、大腸のポリープの予防にも大いに役立ちます。
その他にも、細胞の老化を防ぎ、シミやシワの改善に役立つビタミン・ミネラル類や抗酸化物質の含有量も、果物の中ではトップクラスです。
ただし、バナナはカリウムを多く含むため、腎臓に不調がある方には悪影響となる場合があります。主治医に相談しながら召し上がってください。

この記事は『安心』2020年9月号に掲載されています。
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