いまや「日本人の3人に1人は“痔主”」といわれ、検診を行えば7割の人に痔が見つかります。痔は、虫歯に次ぐ国民病となっているのです。しかしながら、気軽に肛門科を受診し、治療を受けている人は多くないようです。「病院にかかったら即手術」と思っているのかもしれません。しかし、それは昔の話。今は「できる限り切らずに治す」「まずは生活習慣の見直し」という治療法が主流です。【解説】平田雅彦(平田肛門科医院院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

平田雅彦(ひらた・まさひこ)

1981年、筑波大学医学部専門学群卒業。1985年、社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門科の臨床経験を積む。現在は、平田肛門科医院の3代目院長。著書に『痔の9割は自分で治せる』(マキノ出版)など多数。
▼平田肛門科医院(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

今は「できる限り切らずに治す」が主流

かつて痔には、「手術しないと治らない」「病院に行くとすぐ手術される」といった、あまりかんばしくないイメージがありました。また、「痔の手術は痛い」「手術しても痔は再発する」と考えている人も多かったのです。

しかし、これらは、昔ながらの古い情報に過ぎません。いまや、痔の治療は大きく変わりつつあります。

旧来の治療では、痔は「切って(手術して)治す」ものでした。しかし今は、「できる限り切らずに治す」治療法が主流です。

当院の場合も、投薬と生活習慣の改善を行って経過を観察します。その結果、病状が治まれば手術は不要になります。好転せず、ほかの方法がなくなったときに初めて、手術が選択されるのです。

もちろん、手術の必要な痔もありますが、割合からすればごく少数。その場合も、検査や経過観察を行ってから手術となります。ですから、診察した日に即手術はありえません。そのようにいわれたら、自分が納得できるまで医師に説明してもらいましょう。
医師の説明に納得できなければ、慌てて手術する必要はありません。別の病院で診察を受け直すか、セカンド・オピニオン(治療法について担当医以外の医師の意見を聞くこと)を受けるといいでしょう。

こんな症状があったら一度診察を受けよう

いまや「日本人の3人に1人は“痔主”」といわれ、検診を行えば7割の人に痔が見つかります。痔は、虫歯に次ぐ国民病なのです。

とはいえ、受診を躊躇する人が多いのも事実です。当院で患者さんに行ったアンケートでは、痔を自覚してから肛門科を受診するまでに、平均7年かかっていることがわかりました。肛門科はそれほど敷居が高いということでしょう。

現在は、痔の診療において、患者さんが恥ずかしい思いをしないような配慮が十分なされています。また、前述したように、「手術せずに治す」が最新治療の原則となっていまますし、手術自体の手法も変化してきました。新しいレーザー療法などが開発され、患者さんにダメージの少ない、痛くない手術法が主流です。

痔のなかには、ガンになるリスクの高いものもありますし、「痔だと思っていたら大腸ガンだった」ということもあります。ですから、出血や違和感のある場合は、一度専門医に見てもらうことをお勧めします。

激痛や大量の出血が続いたら、さすがにすぐ受診すると思いますが、「お尻をふいたときに、ときどきトイレットペーパーに血がつく」程度だと、病院に足が向かないかもしれません。しかし、たとえ少量の出血でもが1ヵ月に5回以上出血があったら、病院にかかりましょう。

また、下着が膿や分泌物、便で頻繁に汚れたり、肛門がただれてかゆみを感じたりするときも、医師に診てもらってください。

痔は大きく分けて3種類

現在、痔は高血圧や糖尿病と同じ「生活習慣病」の一つと見なされるようになっています。生活習慣病は、薬を飲むだけでは根治できません。高血圧や糖尿病を見ればわかるように、原因である生活習慣(食事、運動、睡眠、飲酒、喫煙など)を改善することで、ようやく根本治療が可能となるのです。痔も、生活習慣を見直すことで、症状の予防・改善が可能となります。

そもそも痔は、肛門周辺の炎症がきっかけで起こります。便は、強いアルカリ性で、肛門の皮膚に炎症を引き起こす攻撃因子です。しかし通常は、肛門は局所免疫(体の特定部分で働く病気への防御反応)が働いているため、炎症を起こしません。ところが、さまざまな原因により、全身の免疫力が低下すると、肛門の局所免疫が働かなくなり、肛門に炎症が起こり、痔へとつながるのです。

痔というのは、肛門に起こる病気の総称で、大きく3つに分類できます。

痔核(イボ痔)

痔核は、肛門周辺のクッション組織の結合が悪くなったり、血管がふくれて腫れ上がったりしてイボとなったもの。いわゆるイボ痔です。直腸と皮膚のつなぎ目(歯状線)の内側にできたものを内痔核、外側にできたものを外痔核といいます。

画像: 痔核(イボ痔)

裂肛(切れ痔)

裂肛は、かたい便によって肛門上皮が裂けて、激しく痛んだり、出血したりするもの。切れ痔とも呼ばれます。

画像: 裂肛(切れ痔)

痔ろう

痔ろうは、肛門のくぼみ(肛門腺窩)に便がたまって感染を起こし、その感染が進行し、ろう管という通路を作り、そこから膿が出る病気です。

画像: 痔ろう

肛門の炎症がきっかけとなって、これら3タイプの痔が生じます。ですから、まず、炎症を引き起こす原因を改善することが肝心なのです。

痔を悪化させる7つの要因

 日常生活で肛門の炎症を引き起こす要因は、主に次の7つです。

①便秘

特に便秘は、痔を引き起こす最大の要因です。便がかたくなると肛門が傷つき、その傷から便の中の細菌が感染し、炎症を起こします。便秘の原因を突き止め、対策を講じて便通を整えましょう。

②下痢

あまり知られていませんが、下痢も痔の原因になります。水分の多い便は、肛門粘膜に浸透して炎症を起こしやすいうえに、粘膜にダメージを与え、弱くします。その結果、便が出るときにこすられると、すぐに切れて裂肛になるのです。ストレスや疲労が重なって肛門の免疫力が落ちていると、炎症を起こし、痔ろうが引き起こされることもあります。
便秘と同様、原因に応じた対策を実践し、下痢を起こさないことを目指しましょう。

③座り仕事

パソコン作業や車の運転などで、ずっと座っていると、肛門周囲の血管が圧迫され、うっ血を起こします。それが炎症の原因となり、痔を招きます。
私は、患者さんにキッチンタイマーを用意してもらい、1時間後にアラームが鳴ったら10mほど歩くように指導しています。

④肉体疲労・精神的ストレス

肉体労働や運動をし過ぎると、筋肉に疲労物質が蓄積し、痔を誘発することがあります。また、疲れがひどいと局所免疫も低下して、肛門に炎症を起こしやすくなります。
精神的ストレスも明らかに免疫力を低下させ、細菌に対する抵抗力を落として、肛門に炎症を起こしやすくします。当院を訪れる患者さんのなかにも、ストレスによる免疫力の低下から痔になったかたがたくさんいらっしゃいます。

⑤冷え

体が冷えると、肛門周囲の血管が収縮して血流が悪くなり、炎症が起こりやすくなります。最近は、夏季の冷房によって体が冷え、痔になる人が増えています。入浴や座浴をしたり、使い捨てカイロなど使ったりして、お尻を温めましょう。
ただし、痔ろうと、肛門内に戻らなくなった内痔核、化膿し始めている外痔核は、症状が悪化する可能性があるので、温めてはいけません。

⑥月経

女性の場合、生理前や生理中に、便秘や下痢になるケースが少なくありません。また、生理期間中の肛門粘膜を観察すると、炎症を起こしていることが多く、この間に痔になりやすい傾向にあります。生理前から食事に配慮して便通を整えましょう。さらに、肛門に炎症が起こりやすい生理中は、睡眠時間を1時間増やしたり、仕事量を10%減らしたりするといった生活が推奨されます。

⑦過度の飲酒

アルコールは、血管を拡張して炎症を引き起こします。摂取するアルコールの量は、心身の緊張をほぐす程度にとどめて、飲み過ぎないようにしましょう。1日の目安量として、ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合、ワインならグラス1杯です。 

このように原因を並べてみると、痔が生活習慣病であることがよくわかると思います。

生活習慣を見直すことで痛みや出血が改善

3つの痔のうちで最も患者数の多いのが、痔核です。痔核のうち、約9割の人は、きちんとセルフケアを行うことで手術なしで治すことが可能です。

当院の痔の患者さんには、まず生活改善を行ってもらいます。少なくとも3ヵ月間続けると、状態は大きく改善します。

以前、当院を受診した内痔核の患者さん128名を対象に、データを取ったことがあります。生活指導と投薬を行い、痔の程度と症状の変化を確認したものです。

治療前には、強い痛みを訴える人が128人中39例(30%)、中等度の痛みを訴える人が42例(34%)、軽度の痛みを訴える人が40例(31%)いました。
セルフケアを続けたところ、1年後には、強い痛み、中等度の痛みを訴える人はいなくなり、96%の人が全く痛みなしとなったのです。

画像1: 生活習慣を見直すことで痛みや出血が改善

排便時の痔核の脱出、腫れや出血についても、セルフケアによって大きく改善するというデータが出ています。

画像2: 生活習慣を見直すことで痛みや出血が改善

こうしたデータからもわかるように、セルフケアをきちんと行えば、痔核の9割は手術なしで治せるのです。 

ただし、痔のセルフケアの前提となるのは、正しく痔の診断がなされていることです。まずは一度、肛門科を受診し、痔の診断を確定させてからセルフケアに取り組みましょう。

なお、本稿は『痔の9割は自分で治せる』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳細は下記のリンクよりご覧ください。

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