筋肉や周囲の組織がかたくなると血流が悪い状態が続き、骨と骨が狭まって神経が圧迫されて、しびれや痛みの症状が現れます。血流をいかによくするかが脊柱管狭窄症ではたいせつです。そして血流改善の主となる方法といえば「体を温める」ことです。【解説】仲山竜一郎(仲山鍼灸整体院院長)

解説者のプロフィール

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仲山竜一郎(なかやま・りゅういちろう)

仲山鍼灸整体院院長。鍼灸師、柔道整復師。筋骨格系テクニック、内蔵調整療法、活性整体法など多くの技術を取得し、独自の治療法を確立。また、20年かけて古武術から体の使い方を学び、治療にも活かしている。同業者からの推薦を多数受けている。
▼仲山鍼灸整体院

冷えると症状が悪化する

私は整体や鍼灸の治療をベースに、古武術の体の使い方なども活用した施術を行っています。最初に骨盤や頸椎(首の骨)、背骨といった体の軸となる部分を整えてから、筋肉を調整するようにしています。

脊柱管狭窄症には、症状が発症しやすい生活習慣があるのですが、習慣化しており、気づかない患者さんが多いのです。その一つに、「風呂に浸からず、シャワーを浴びるだけ」など、体に冷えや疲労をため込んでいることが挙げられます。

入浴に限らず、夏は冷房や半ズボンなどの薄着で過ごすことによって、自覚はなくても、体が冷えきっていることが多々あります。冬も「これくらいなら大丈夫」と暖房をつけずに我慢して、知らず知らずのうちに体を冷やしていることも少なくありません。

脊柱管狭窄症は、筋肉や周辺の組織がずっと伸びも縮みもせずに、かたくなっている可能性が高い疾患です。筋肉や周囲の組織がかたくなると、血流が悪い状態が続き、骨と骨が狭まって神経が圧迫されて、しびれや痛みの症状が現れます。そして、「冷え」によっても血流は悪くなり、症状が悪化するのです。

東洋医学の観点でも、冷えは体にとってご法度。『傷寒論』という中国の古典医学書に、いかに冷えが体に悪いか、体系立てて説かれているほどです。

血流をいかによくするかが、脊柱管狭窄症ではたいせつです。そして、血流改善の主となる方法といえば、「体を温める」ことです。痛くて運動ができない人でも続けやすいので、私は患者さんによくお勧めしています。

全身の血流改善には温める場所がポイント

では、どのようにして体を温めたらよいのか。ポイントは、全身の血の巡りをよくすることです。今回は、特にお勧めしたい温める場所と、温めグッズをご紹介します。

【注意】
・動かなくても強い痛みや疼きがある場合は、直接患部を温めない。
・貼るカイロは、暑いときには使わない(体調を崩す恐れがあります)。
・貼るカイロを皮膚に直接貼らない。就眠時は使用しない(やけどの恐れがあります)。

●温める場所

おなかの下

おへそ周りには太陽神経叢という神経の束が通っており、おなかの内臓が冷えたり、筋肉が緊張したりすると、腰まで緊張することが多いのです。

そこで、おへそから指2本分下にある、「丹田」というツボ周辺を温めましょう。おなかが出ていて温めにくい人は、ベルトの位置でも結構です。

画像: おへそから指2本分下の周辺を、ホットパックや貼るカイロで、じんわり温まったと感じる程度まで温める。

おへそから指2本分下の周辺を、ホットパックや貼るカイロで、じんわり温まったと感じる程度まで温める。

背中

両肩の肩甲骨の間には、カゼが入り込むとされる「風門」というツボがあります。肩甲骨と肩甲骨の間にあり、風邪をひいたときにゾクゾクする場所です。ここを温めることは、全身の血流促進のほかに、カゼ予防にも役立ちます。

骨盤の中心にある仙骨周辺も温めましょう。仙骨に手を当てると、ジワーッと温かい感触があります。仙骨は後頭骨(頭蓋骨の後下部を成す骨の一つ)と連動して動くので、温めて双方の動きをよくすることで、全身の血流改善につながります。

画像: 両肩の肩甲骨の間や、腰の中央やや下にある仙骨をホットパックや貼るカイロで温める。

両肩の肩甲骨の間や、腰の中央やや下にある仙骨をホットパックや貼るカイロで温める。

足もと

内くるぶしの指4本分上に「三陰交」というツボがあります。足もとが冷えると、必ず腰の筋肉が緊張したり、腰に疲労やだるさがたまりやすくなったりします。女性にとっては特に重要なツボでもあり、単純に冷え対策としても有効です。

画像: 内くるぶしから指4本分上の周辺が温まるようにレッグウォーマーをはく。 ※歩くときはかかとまで上げる

内くるぶしから指4本分上の周辺が温まるようにレッグウォーマーをはく。
※歩くときはかかとまで上げる

●温めグッズ

上記①と②は、ホットパック(温熱療法に使われる、パック状のゲル物質や熱線が入った物の総称)や、貼るカイロを使うとよいでしょう。

ホットパックは市販の物を利用してもいいのですが、自宅で簡単に作ることもできます。詳しい作り方は、下記をご参照ください。冷凍庫で冷やせば、冷却パッドとしても利用できます。

貼るカイロは、直接貼るとやけどをするので、服の上から貼りましょう。また、寒い時期のみ使うようにしてください。特に夏に使用すると、汗が出過ぎて体調を崩す恐れがあります(ホットパックは夏でもOK)。低温やけどを招くので、季節を問わず就寝時にも貼らないようにしましょう。

③は、レッグウォーマーがお勧めです。男女問わず、夏でも冷房で体は冷えています。自宅で靴下は履かなくても、レッグウォーマーは履くようにしましょう。夏でも履ける薄手の物があるので、うまく活用してください。

また、夏でも1日に一度は、肩までしっかり入浴し、全身を温めることもたいせつです。夏は40度、冬なら41〜42度のお湯に、無理なく心地いいと感じられる程度の時間、つかります。筋肉の緊張だけでなく、気持ちの緊張もほぐれるはずです。

注意していただきたいのは、動かなくても強い痛みや疼きがある場合は、直接患部を温めないようにすることです。炎症を起こしている可能性もあります。消炎剤入りの湿布やスプレーで、患部を冷やしてください。ただし、氷で直接冷やすのは、体が冷えきってしまうのでやめましょう。

●手作りホットパックの作り方

【用意する物】
幼児用かペット用の紙おむつ…2枚(大人用なら1枚)
ジッパー付きポリパック…2つ
水…600ml

画像1: ●温めグッズ

紙おむつのトップシートの部分を右の点線に沿って切り…

画像2: ●温めグッズ

このように中が開くようにする。

画像3: ●温めグッズ

吸水剤(白い粉)を、綿ごとすべて取り出して、ポリパックに入れる。

画像4: ●温めグッズ

水を少しずつ注ぎ入れる。水をすべて入れたら、なるべく空気を抜いてからパックを閉める。

画像5: ●温めグッズ

もう1つのパックに③を逆さにして入れて閉める。このときも、なるべく空気がパックの中に残らないようにする。

画像6: ●温めグッズ

電子レンジの500Wで片面を1分温めたらひっくり返して、さらに1分温める(W数が500Wより大きい場合は、時間を短くする)。
!温め過ぎは、パックが溶けたりやけどをしたりする恐れがあります。触ってじんわり温かく感じる程度にしてください。熱いときは2~3分程度冷ましてください。

体をこまめに動かして使う筋肉を変えよう

脊柱管狭窄症の症状を発症しやすい生活習慣には、ほかに「運動をよくしている人が、痛みや違和感を我慢し続けている」「仕事中やテレビを観るときなど、同じ姿勢を長時間続ける」ことが挙げられます。

ですから、無理な運動同じ姿勢を長時間続けるのは避けましょう。よしあしは問わず、同じ姿勢でいると、筋肉が伸び縮みせず、ずっと硬直しているので、体に負担がかかってしまいます。

デスクワークや家事をするときも、少しずつでもいいので、体の重心を動かして、使う筋肉を変えることが大切です。

痛みを我慢しても、よくなっていくことはまずないので、早めに専門機関に相談し、体を温めてください。早めの対処が症状改善の近道です。

画像: この記事は『壮快』2020年9月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年9月号に掲載されています。

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