トイレが近くなる「頻尿」のなかでも、特につらいのが「夜間頻尿」でしょう。睡眠が途切れて熟睡できないため、日中のパフォーマンスも低下します。排尿のしくみは、自律神経と脳のネットワークに支配されていますが、年を重ねるにつれ、この連携がうまくいかなくなってきます。今回ご紹介するツボ刺激は、自律神経と脳のネットワークを正常化し、排尿にかかわる臓器や筋肉の機能回復にも役立ちます。ぜひお試しください。【解説】内田輝和(倉敷芸術科学大学生命科学部健康科学科客員教授・鍼メディカルうちだ院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

内田輝和(うちだ・てるかず)

1949年、岡山県生まれ。70年、関西鍼灸柔整専門学校卒業。74年、鍼メディカルうちだ開業。79年、岡山大学医学部麻酔蘇生学教室東洋医学研究班入局。87年、関西鍼灸短期大学非常勤講師として東洋医学を担当。95年、鍼メディカルうちだ東京治療院開業。2013年、倉敷芸術科学大学生命科学部健康医療学科教授に就任。現在は同大学客員教授。岡山県鍼灸師会会長。岡山県武術太極拳連盟会長。
▼鍼メディカルうちだ(公式サイト)
▼岡山県鍼灸師会(公式サイト)

自律神経と脳のネットワークを正す

ある程度の年齢になると、頻尿に悩む人が増えます。私のところにも頻尿の悩みで来られる患者さんが多く、その多くが女性です。

頻尿のなかでも、特につらいのは「夜間頻尿」でしょう。夜中にトイレに起きると、布団に戻ってからも寝つけず、それが複数回になるとつらいものです。トイレに行く途中でつまずいたり、寒い季節だと、布団の中と外との温度差で血圧が上がったりする心配もあります。夜間頻尿は睡眠不足になるだけでなく、さまざまな危険を伴うのです。
 
私は頻尿で困っている患者さんに、背中と腰のツボを押しながら体を動かす「腰ツボ体操」を勧めています。この体操がなぜ頻尿に効くのかというと、自律神経(意志とは無関係に血管や内臓をコントロールする神経)を調整してくれるからです。

排尿は、自律神経と脳のネットワークに支配されています。自律神経のうちの交感神経が活発になると、膀胱が緩んで尿がたまります。ある程度たまると、それを脳がキャッチして尿意を感じ、排尿を促す指令を出します。すると今度は、副交感神経が働いて膀胱を収縮させ、尿道を緩めて排尿に至るわけです。

ところが、加齢などによってこのネットワークが過敏になり過ぎると、誤作動を起こすことがあります。膀胱にあまり尿がたまっていないのに尿意を感じて、排尿しようとするのです。その誤った認識を正して、誤作動を起こさないようにしてくれるのが、腰ツボ体操です。
 

腰ツボ体操のやり方

腰ツボ体操は、誰にでもできる簡単な体操です。

腰ツボ体操は2種類あります。背中にある三焦兪(さんしょうゆ)というツボを押しながら腰を回す「腰回し体操」と、仙骨孔(せんこつこう)というくぼみを押しながら腰を反らす「腰反らし体操」です。この2つの体操を行うことで、交感神経と副交感神経のバランスが調整され、脳とのネットワークが正常に働くようになります。

一つずつ説明していきましょう。

腰回し体操のやり方

まずは、腰回し体操です。
三焦兪は、背中側でウエストより少し上のラインと背骨が交差するところから、指幅2本分ほど外側にあります。三焦兪は、膀胱の働きに関係するツボです。
ツボの位置は正確でなくても大丈夫です。三焦兪の周辺が、脊髄に沿った交感神経反射ゾーンになっているからです。
 

画像: ウエストを両側から両手でつかんだとき、親指の当たる場所が三焦兪のツボ

ウエストを両側から両手でつかんだとき、親指の当たる場所が三焦兪のツボ

足を肩幅に開いて立ち、ウエストラインをつかむようにしながら、三焦兪のツボのあたりを親指で押さえる。

顔を少し上げ、親指に力を入れて押しながら、フラフープを回すようなイメージで、時計回りに5回腰を回す。このとき、ひざを曲げないように注意。

同様に、反時計回りに5回腰を回す。②と③で1セットとし、1日にセット行う。

画像: ひざを曲げずに腰を回す

ひざを曲げずに腰を回す

腰反らし体操のやり方

次に、腰反らし体操です。
仙骨孔は、骨盤の仙骨に8個ある孔(あな)です。左右に4つずつあり、そのいちばん上の仙骨孔を押さえます。骨盤の左右の出っ張りより3㎝ほど下の腰のラインと背骨が交差するところから、指幅2本分ほど外側のくぼみです。
仙骨孔のくぼみは、尿道括約筋(尿道を締める筋肉)を支配するツボといわれます。
こちらも、位置は正確に押さえなくてもけっこうです。「仙骨にあるくぼみならOK」と覚えておいてください。仙骨孔の周辺全体が、骨盤内臓神経の副交感神経反射ゾーンになっているためです。 

画像: 親指で押さえる場所は、仙骨にあるくぼみならどれでもOK

親指で押さえる場所は、仙骨にあるくぼみならどれでもOK

足を肩幅に開いて立ち、腰骨に両手を当てて、仙骨孔(仙骨のくぼみ)を親指で押さえる。

親指に力を入れて押しながら、腰を反らす。同時に肛門もグッと締める。これを10回くり返し、1セットとする。1日2セット行う。

画像: 腰を反らすときに肛門を締める

腰を反らすときに肛門を締める

三焦兪と仙骨孔の周辺を刺激することによって自律神経が調整され、脳との連携が正常化します。また、ツボ刺激で膀胱と尿道括約筋の働きも改善し、排尿機能の回復も促されるのです。さらに、腰反らし体操を行う際に肛門を締めると、骨盤底筋群の強化になります。骨盤底筋群は膀胱や子宮など、骨盤内の臓器を支えている筋肉です。ここが緩むと尿もれしやすくなるので、筋力の維持・向上を心掛けてください。

私は頻尿の患者さんに、必ずこの体操を勧めています。どなたも熱心に続けておられ、「特に夜間頻尿に効果がある」という声をよく聞きます。軽い頻尿なら2週間程度で改善することも珍しくありません。夜中に4~5回トイレに起きるような頻尿が、1回で済むようになったという人もいます。熟睡できるようになった、と感謝されることも少なくありません。
頻尿が治ると、どなたも明るくなり、見た目が若々しくなります。睡眠の質が向上するのはもちろん、トイレを気にせずに外出でき、好きなことができるようになるからでしょう。

尿トラブルに悩んでいるかたは、腰ツボ体操を習慣にしてみてはいかがでしょうか。

画像: この記事は『頻尿・尿もれがスッキリ治る最強ケア』に掲載されています。 www.amazon.co.jp

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