キーンと鳴る高い音の耳鳴りや難聴、頭痛といった症状がある人は、頭に熱が上り過ぎていると考えられます。気・血・水の巡りをよくし、上り過ぎた熱を冷ます「中渚」のツボと、万能ツボ「合谷」を一挙に刺激できる手軽な方法が「祈りのポーズ」です。【解説】梅津裕子(かいせい鍼灸治療室院長)

解説者のプロフィール

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梅津裕子(うめづ・ゆうこ)

かいせい鍼灸治療室院長。はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師。MLAJ 日本医療リンパドレナージ協会認定医療徒手リンパドレナージセラピスト。
▼かいせい鍼灸治療室(公式サイト)

頭部の熱を冷まして耳の不調を改善

耳鳴り、めまい、難聴といった耳の不調を訴えて、私の治療室を訪れる患者さんは多くいらっしゃいます。私は、そうした耳の不調の多くは、耳自体に問題があるのではなく、ストレスによる自律神経のバランスの乱れが根本的な原因だと考えています。

自律神経とは、自分の意志では制御できない血管や内臓などをコントロールしている神経です。活動時や緊張時に働く交感神経と、休息時に働く副交感神経の2種類あります。両者がバランスよく働くことで、私たちの健康は維持されています。

しかし、現代人は、働き過ぎやストレス過多により、交感神経ばかりが活発になっています。こうして、自律神経が乱れることで、さまざまな不調や病気を招きやすくなるのです。主な症状としては、冒頭の耳の不調や、頭痛、倦怠感、動悸、不眠、うつなど、多岐にわたります。

このように、自律神経の乱れが原因の場合、東洋医学では、人間の生命活動に欠かせない「気・血・水」の巡りをよくすることが重要だと考えます。

気は一種の生命エネルギー、血は血液、水はリンパ液などの体液を指します。この三つが体内を滞りなく循環することで、健康が保てると考えられています。これらの巡りがよくなれば、自律神経のバランスも整いやすくなるのです。

そこで今回は、気・血・水の巡りをよくする、二つの特効ツボをご紹介しましょう。

一つめのツボは、「中渚(ちゅうしょ)」です。薬指と小指の間の骨際を手首のほうにたどると、ポコッと凹むくぼみに当たります。そこが中渚です。耳のトラブルの治療によく用いられ、指で押すと、じんわりと痛むはずです。

画像1: 頭部の熱を冷まして耳の不調を改善

中渚には、頭部の清熱(熱を冷ます)作用もあります。キーンと鳴る高い音の耳鳴り難聴頭痛といった症状がある人は、頭に熱が上り過ぎていると考えられます。そこで、ここを刺激すれば、上り過ぎた熱を冷ます作用が働くのです。

二つめのツボは、「合谷(ごうこく)」です。手の甲側の親指と人差し指の間を、手首に向かってたどっていった、指の骨の分かれ目に当たります。ここが合谷です。ここも押すと、痛みを感じるでしょう。

画像2: 頭部の熱を冷まして耳の不調を改善

合谷は、「万能ツボ」とも呼ばれます。眼精疲労ドライアイ歯の痛み肩こり蓄膿症花粉症など、特に首から頭部にかけての症状に力を発揮します。また、うつなどの精神疾患の予防・改善にも有効です。

合谷は、特に、気や血の流れを促します。そのため、生理痛生理不順などの婦人科系の疾患や、更年期障害の不定愁訴にも有効です。

二つのツボを一度に刺激する方法

では、この両手の二つのツボを、一挙に刺激できる、手軽な方法をご紹介しましょう。それが、「祈りのポーズ」です。

両手の指を交わるように重ね合わせると、ちょうど各ツボの付近に指先が当たります。(薬指と小指が中渚に、親指と人差し指が合谷にくる)この状態のまま、すべての指先で手の甲を押します。強く押し過ぎず「気持ちいい」と感じる程度の軽い力で行いましょう。

画像: 二つのツボを一度に刺激する方法

このツボ刺激は、1日に何回行ってもかまいません。

私の治療室を訪れた患者さんで、耳のトラブルが改善した一例をご紹介しましょう。Aさん(40代・男性)は、耳が詰まったような耳閉感、首から背中にかけての強い張りと痛み、顎関節の違和感に悩んでいました。

話を聞いてみると、Aさんは、相当なストレスを抱えているようでした。まさに、ストレスによって自律神経が乱れ、さまざまな不調を引き起こしている典型的なケースです。

Aさんには、中渚や合谷をはじめとした手足のツボ刺激や、気と血の巡りをよくする治療などを行いました。

こうして、1週間に1回、合計4回の治療を行ったところ、首から背中の張りと痛みは軽くなり、顎関節の動きも改善しました。耳閉感も取れて、音の聴こえがよくなったのです。

耳の不調や不定愁訴にお悩みのかたは、お試しください。

画像: この記事は『壮快』2020年9月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年9月号に掲載されています。

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