スパイスは、一つの種類だけでもすばらしい薬効をもたらしてくれます。また、スパイスの定義は実に広く、生のショウガやニンニク、ときにはトマトですら、スパイスとして考えられることもあるのです。【解説】小泉久仁弥(医療法人社団さかもと会理事長・くにやクリニック院長)

解説者のプロフィール

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小泉久仁弥(こいずみ・くにや)
1985年岩手医科大学医学部卒業。福島医科大学、国立療養所翠ヶ丘病院、北里研究所東洋医学総合研究所に勤務。95年、昭和大学より生薬(漢方薬)と肝臓の薬物代謝酵素関連の研究で医学博士号を受ける。その後、東京都立大塚病院東洋医学科勤務を経て、2000年に「くにやクリニック」を開業。診療科目は漢方内科・内科・アレルギー科。日本東洋医学会指導医、日本医師会認定産業医。医療法人社団さかもと会理事長。

スパイスカレーは「食べる漢方薬」

スパイス(香辛料)は、料理に味や香り、色を加える植物由来の食品です。スパイスと聞いて、まず頭に思い浮かぶ物は「カレー」というかたが多いのではないでしょうか。

私は以前から、優れた薬効がある食べ物として、皆さんにカレーをお勧めしています。カレーといっても、市販のカレールーで作った物ではなく、スパイスをたっぷり用いて作るスパイスカレーのことです。

スパイスをふんだんに配合したカレーは、「食べる漢方薬」といっても過言ではないほどの高い薬効を期待できます。なぜなら、カレーに使われるスパイスは、漢方薬の原料である生薬と共通している物が多いからです。

私自身、スパイスの力を借りて、健康を取り戻した経験があります。今から20年ほど前、私は診療の忙しさや、さまざまなストレスが重なり、体調をくずしてしまいました。

体は疲れやすくなり、食欲も低下。血液検査を受けたところ、中性脂肪値や肝機能値の一つで飲酒量にも相関するγ‐GTPなどが、基準値を大きく超える数値を示していました。

そんななか、私が思いついたのが、「スパイスで不調を改善できないか」ということ。実は、私は昔からカレーが大好物。カレー好きが高じて、一時期、医師をしながら、本格的なカレー料理店を営んでいたこともあります。

漢方には、健康になるためには、まず胃腸を整え、食べ物の栄養をしっかりと吸収する、という基本的な考えがあります。 その点、カレーに使われるスパイスは、どれも胃腸を整える働きが期待できます。さらに、食欲増進や血行促進作用もあることが認められています。

そこで私は、たくさんのスパイスを使ったカレーを週に2~3回食べる生活を続けました。すると、徐々にですが、疲れにくくなり、食欲も戻るなど、体調が回復してきたのです。

数年後の血液検査では、中性脂肪値もγ‐GTPも大きく改善。それから現在まで、好調をキープしています。

画像: スパイスの薬効の高さが話題!

スパイスの薬効の高さが話題!

胃腸を整えてストレスを緩和する

これはもちろん、漢方薬の併用や、運動をしながらの成果ですが、スパイスの薬効が大きく貢献したと考えています。最近では、スパイスの薬効の高さが広く知られてきたためか、いろいろなスパイス活用法が考案されているようです。

現在、ちまたで話題になっているのが、スパイスをそのまま水に加えた「スパイス水」です。

スパイスというと、カレーのように、何種類ものスパイスを配合しなければ効果がないイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。一つのスパイスだけでも、あるいは、ほんの数種類を組み合わせただけでも、すばらしい薬効をもたらしてくれます。

また、乾燥していたり、粉末状になっていたりするのがスパイスだ、という認識があるかもしれませんが、それも正確ではありません。

スパイスの定義は、実に広く、生のショウガニンニク、ときにはトマトですら、スパイスとして考えられることもあるのです。例えば、生のショウガをスライスして、水に漬けるだけでも、「ジンジャー水」というスパイス水になります。

スパイス水は、既成概念にとらわれずに、自分好みの味で、自分の体に必要な薬効を手軽に摂取できる、優れたスパイス活用法ではないでしょうか。

最近は、スパイスのなかでも手に入りやすい、「クローブ」「コリアンダー」「シナモン」「黒コショウ」などを使ったレシピやスパイス水が人気のようです。

[別記事:食欲もりもり「スパイシー薬膳」→

クローブは、冷えによる胃痛や吐き気、歯の痛みを和らげる働きがあります。漢方では、丁子と呼ばれ、健胃作用が認められています。

コリアンダーは消化不良やガスを抜く駆風作用などがあるとされるほか、リラックス効果も期待できます。

シナモンは、漢方では桂皮と呼ばれる生薬で、多くの漢方薬に含まれています。発汗の調整、のぼせを抑えるなどの薬効があります。

黒コショウには、発汗、健胃、食欲増進などの効果があります。

いずれのスパイスも、総じて胃腸を整える働きが期待できます。漢方では、胃腸が整うと、健康になるだけでなく、ストレスの緩和につながると考えられています。このコロナ禍で、ストレスがたまりがちですが、スパイス水は、その緩和にも役立つでしょう。

なお、スパイス水を作るときは、できるだけ品質のいいスパイスを選んでください。国内メーカーの物が安心でしょう。海外で購入した物などを使う際、心配なかたは、水でよく洗うか、フライパンなどで軽く焙煎してから使いましょう。

画像: この記事は『壮快』2020年9月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年9月号に掲載されています。

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