女性は40歳を過ぎると、頻尿や尿もれに悩む人が増えてきます。最大の原因は、加齢による骨盤底筋群の衰えです。骨盤低筋群が緩むと膀胱が不安定になり、少しの尿意でも強い切迫感を覚えるようになり、外出や旅行、睡眠に支障が出ることにもつながります。今回は、私が患者さんに勧めて効果を上げている、体操とトレーニング法を紹介しましょう。【解説】関口由紀(女性医療クリニック・LUNAグループ理事長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

関口由紀(せきぐち・ゆき)

山形大学医学部卒業後、横浜市立大学大学院医学部泌尿器病態学を修了。 日本泌尿器科学会専門医・指導医。横浜市立大学医学部客員教授、市立病院などでの勤務を経て、2005年4月に女性医療クリニック・LUNAを開設。現在は理事長として横浜と大阪にまたがるグループを率いている。『ちょびもれ女子のための「あ!」すっきり手帖』(主婦の友インフォス)など、著書多数。
▼女性医療クリニックLUNA(公式サイト)

過活動膀胱の9割は治りやすい

頻尿・尿もれは、中高年にもなると、男女ともに起こりうる症状です。
頻尿や、強い尿意切迫感がある人の数は、900万人以上と推計されています。そのうち約半分の人は、トイレまで我慢できますが、残りの半分の人は間に合わず、もらしてしまいます。尿もれを経験すると、「トイレに行けるときに用を済ませておかなくては」という焦りから、頻尿になりがちです。

皆さんのなかには、「過活動膀胱」と診断された人も、いるかもしれません。過活動膀胱は、文字どおり膀胱が過剰に活動することで、強い尿意を我慢できなくなる疾患です。

過活動膀胱には、大きく分けて2種類あります。
排尿にかかわる筋肉と脳の間の、神経回路のトラブルで起こるケースが1割程度。
残りの9割はそれ以外で、原因は加齢とされる場合がほとんどです。神経回路の障害ではないことが明らかなぶん、治りやすいといえます。

ところで、1日の排尿が何回以上なら頻尿なのでしょうか。
目安としては、日中に7~8回、夜間(就寝時)に0~1回というのが、正常な範囲とされています。しかし、医学的には明確な定義はなく、日中の排尿回数が9回でも10回でも、当の本人が特に困っていなければ、治療対象にはなりません。

とはいえ、排尿回数が増えると、日中は外出や旅行もままならず、夜間は熟睡できないため健康を害するリスクが高まります。
また、頻尿の陰に膀胱や腎臓の病気が隠れていることもあるので、注意が必要です。

膀胱を支えている筋肉を鍛えよう

私の専門は、女性泌尿器科です。女性は40歳を過ぎると、頻尿・尿もれに悩む人が増えてきます。最大の要因は、加齢による骨盤底筋群の衰えです。
骨盤底筋群とは、骨盤底部で子宮や膀胱を支える筋肉の総称です。位置を知るには、タオルを使うとわかりやすいでしょう。フェイスタオルを4つ折りにして、直径3センチ、長さ20センチ程度の棒状に丸め、イスの上に置きます。その上にまたがるように腰かけたとき、タオルが当たっている部分が、骨盤底筋群です。

画像: 棒状に丸めたタオルの上にまたがるように座ったとき、タオルが当たっている部分が骨盤底筋群。

棒状に丸めたタオルの上にまたがるように座ったとき、タオルが当たっている部分が骨盤底筋群。

ここが緩むと膀胱が不安定になり、少しの尿意でも強い切迫感を覚えるようになります。加えて、尿道の締めつけも弱まるので、腹圧がかかっただけで、尿がもれやすくなるのです。

骨盤底筋群は、まず出産を機に緩みます。そのため、産後の尿もれに悩まされる女性は少なくありません。出産を経験していなくても、加齢により、筋肉は衰える一方です。さらに追い打ちをかけるのが、女性ホルモンの減少。皮下組織のコラーゲン量が減り、靭帯や筋膜といった、内臓を支える組織の修復能力が低下していきます。

けれども、骨盤底筋群は筋肉なので、自分で鍛えることが可能です。体操のやり方は以下のとおりです。

背すじを正してイスに座り、ひざを肩幅に開いて、おなかに手を当てる。おならを我慢するイメージで肛門をグーッと締め、緩める、という動作を3回くり返す。

尿を途中で止めるイメージで、尿道と膣をグーッと締め、緩める、という動作を3回くりかえす。

骨盤底筋群全体を体の内側に引き込むイメージで、ギュッと締め、緩める、という動作を3回くり返す。

①~③を1セットとし、1日3~5セット、毎日気がついたときに行う。

画像: 体操を行う前に、タオルを使って骨盤底筋群の位置を確認しておくとよい。

体操を行う前に、タオルを使って骨盤底筋群の位置を確認しておくとよい。

膀胱を鍛えるトレーニング

肛門や尿道、膣を締める動作は、骨盤底筋群を強化するだけではありません。運動の刺激が脳に伝わると、「会陰排尿筋抑制反射」が起こり、膀胱の異常収縮が治まります。強い尿意が薄らぐので、尿意のコントロールにも役立ちます。

また、トイレを我慢することも、頻尿・尿もれ改善のトレーニングになります。最初の「トイレに行きたいかも」という感覚を「初発尿意」というのですが、ここですぐに排尿するのを習慣にしていると、膀胱が過敏になり、尿意をより感じやすくなってしまうのです。

頻尿の自覚がある人は、初発尿意を感じたら、時計を見て、まずは5分間、我慢してみましょう。それができたら、1週間ごとに、10分、20分と時間を延ばしていきます。2~3時間に1回トイレに行く程度になれば、もう大丈夫。膀胱が、ある程度の尿量をためられるようになったということです。

実際、頻尿・尿もれの患者さんにも、これらのトレーニングや体操を指導していますが、3~4ヵ月も訓練すると、7割の人に改善が見られます。毎日継続することが肝心です。ぜひ皆さんも、希望を持って実践してください。

画像: この記事は『頻尿・尿もれがスッキリ治る最強ケア』に掲載されています。 www.amazon.co.jp

この記事は『頻尿・尿もれがスッキリ治る最強ケア』に掲載されています。

www.amazon.co.jp

This article is a sponsored article by
''.