解説者のプロフィール

日比響子(ひび・きょうこ)
Studio hi_bi主宰。1966年生まれ。篠崎亜美さんが創始した「amical body care」と出合い、その効果の高さに衝撃を受ける。amical*養成講座を受け、第1期認定トレーナーとなる。現在はamicalをベースにしたオリジナルメソッド“hi_biゆるケア”を軸に、体と心をゆるめて本来の自分を取り戻すセラピストとして活動。https://ameblo.jp/watahibi/
*amicalは登録商標です。
脱力しながら少し体を動かすだけ
20cmくらいのフィットネス用ボールに体を預けて脱力しながら、ダラーッと体を少しだけ動かす。
たったそれだけで、姿勢が変わり、バストやヒップはプリッと上がり、ウエストはギュッと引き締まってボディラインが美しくなり、見た目が若返る。肩こりや腰痛など、体の不調も改善する。気持ちも軽くなる。
それが私が指導している「ボールゆらゆら(正式名称は「amical body care」というメソッド)」です。
筋肉を強くしたければ負荷を与えて鍛えなければならない──。
ボディラインを引き締めたければ、がんばってトレーニングしなければならない──。
痛みや苦しさに耐えて精いっぱい力を込めて努力しただけ、成果が得られるはず──。
そんなふうに考えていませんか? 実は私もそうでした。
元々体のことを探求するのが好きで、解剖学やヨガを学んできた私の知識では、筋肉を努力して鍛えた結果、体は引き締まるもの。まじめに、きちんと、コツコツ行う努力がなにより大切だと考えていたのです。
そうした頭で考えた制限が、気付かないうちに体と心に枷をはめて萎縮させ、無理にゆがませて、さまざまな不調を作っている。それに気付かせてくれたのが、篠崎亜美さん(下項で登場)との出会いでした。

亜美さんに言われるまま、ボールに体を預け、軽~くゆれたり、手足を動かしたり。ついしっかり力を入れて腕を伸ばそうとしたり、ストレッチのように太ももに力を入れたりするたびに「力入ってるよ~」と指摘されながらほんの数分、行っただけ。
「こんなダラダラした動きでいいの?」と半信半疑でしたが、やってみてびっくり! ひどい肩こりでいつもガッチガチにこわばっていた肩の筋肉がフワッと軟らかくなり、まさに肩の荷を下ろしたようにらくになっていたのです。
久しく覚えがなかったフワフワの肩の心地よさに感激していたら、亜美さんが「ちょっとデコルテ(首から胸元の部分)触ってみて」と言います。すると、デコルテも軟らかくてフワフワ!
驚きっぱなしの1日の中でも、これが一番の衝撃でした。なぜなら、私はいわゆるアスリート体形で女性らしい軟らかさとは無縁だったのです。
そんな筋肉質で硬かったデコルテが、一瞬でマシュマロのように変化したのは、まるで魔法のように感じたのです。
その後も続けているうちに、ぺちゃんこだったバストがふっくらして、50歳を超えてから、人生で初めて胸の谷間というものが出現しました。
これは私だけに起こった現象ではありませんよ。AカップからC~Dカップになるなど、バストラインがふっくらとまろやかに、しかも横に広がるのではなく中央に寄って前に突き出すようになる人はたくさん見てきました。年齢に関係なく、誰にでも可能性はあるのです。
6年前の顔よりも今のほうがずっと若い
体形以上に変わったと思うのが、顔です。たるみがなくなって若々しくなり、表情も柔らかくなりました。
下の一番左の写真は今から6年前の私ですが、我ながらひどい(笑)。世間体や周りの反応を気にして押しつぶされた骨格や筋肉のせいで、顔も平べったく、シワやたるみが目立っていますね。
それがいつの間に顔が立体的になって輪郭も卵形になり、頬と口角がしっかり上がって笑えるようになりました。
以前は笑顔のつもりでも顔がこわばっていてよく怖がられたので、優しい顔つきになれたのは、うれしいです。

自分が体験した「体と心をゆるめる」ことの素晴らしさを他の人にも伝えたい。そう思った私は亜美さんからメソッドを学び、仕事を辞めてパーソナルサロンを主宰し、ボールゆらゆらを指導するようになりました。
おかげさまでたくさんの方に来ていただき、あっという間に体が変わり、ボディラインが美しくなるだけでなく、こりや腰痛、神経痛などの不調、さらにはうつなどの心の不調も軽くなったと喜ぶ人たちがどんどん増えてきています。
体が本来の形に戻り機能を取り戻す
なぜボールゆらゆらは、それほど効果的なのでしょうか。
実は、ボールゆらゆらは体の中の「空間」を変化させます。体は「一つの空間」で、その中に、骨、筋肉、血管、臓器があり、それらの隙間が組織液という水で満たされています。
この水で満たされた空間は、私たちが考える以上に簡単にゆがみます。
痛みがあるのに「今日はこれをしなきゃ」と無理して動いたり、「体にいいから」と欲しくないものを食べたり。体からのサインを無視して、理屈を優先させ、頭で考えた形に体を押し込めることで、本来の体はくずれてしまうのです。
すると、くずれた部位にある血管は圧迫されて、血行が悪くなります。同様に、臓器が圧迫されれば、その機能が低下します。筋肉や骨が圧迫されれば、こりや痛みが出てきます。その結果、体調が悪くなったり、老化が早まったりするのです。
ボールゆらゆらは、空間の表面である肌に、軟らかなボールを当てて、体をゆらします。なぜボールを使うかというと、ゆるんで適度な弾力を持った筋肉の弾力に一番近いからです。
私たちの体は触れたものに同調する働きがあります。軟らかなボールを体に当てて力を抜くと、体が同調して、空間の中の水がゆれるのです。
水がゆれると、波が起こりますよね。空間はひと続きなので、その波は離れた部位まで届きます。その波によって、緊張でつぶれた空間が広がっていくのです。
その結果、筋肉や骨、血管、臓器などが圧迫されなくなるので、体は本来の形に戻り、その機能を取り戻していきます。
また、体と心は密接につながっています。体がゆるむと、不思議なほどに、心もゆるんでらくになるのです。

パソコン作業が多く、日頃から肩こりや腰痛に悩まされているというAさん(45歳)。15分ほどのボールゆらゆらであっという間に姿勢とボディラインが変わりました!「慢性的な腰の重だるさがなくなってびっくりです。笑ってしまったのが、万歳したときにひじが耳のすぐわきにきたこと。肩ってこんなにスムーズに動くものだったんですね」(Aさん)
その人本来の美しさを取り戻す
ボールゆらゆらの最も素晴らしい点は、この「本来の体」を取り戻せるところにあると、私は思っています。本来の体は、誰にもまねできない、その人だけの美しさを持っています。
ですから、ナイスボディになるのも若返るのも、ボールゆらゆらの効果というより、実は本来の体に戻っただけ。ボールゆらゆらは、今の体に課してしまったゆがんだ鋳型を外して、本来の健やかな体へと戻すメソッドなのです。
今回は、首、肩、腰の3ヵ所で行うボールゆらゆらのやり方をご紹介します。この3ヵ所にボールを当てると、そこから起こった波が、体全体をゆるめてくれます。
ボールゆらゆらで使うのは、フィットネス用の20cm程度のボールです。体重を預けるので、耐久性の低いビーチボールではNGです。耐荷重が自分の体重を余裕を持って支えられ、触ったときの感触がよいものを選んでください。
ピラティスボール、フィットネスボール、エクササイズボールといった名称で、1000~2000円程度でスポーツ用品店や通販で販売されています。
最近はこうしたボールが100円ショップでも取り扱われていますから、気軽に試しやすいと思います(ただし100円ショップのフィットネス用ボールは空気入れが別売りのことが多い)。

やり方は次項から説明していますが、その手順をきっちり守ることよりも、ボールに体を預けて「気持ちいい」「こう動きたい」と感じることのほうが大切です。
「この動きをこの順番で10回ずつやらなければならない」「毎日必ずやるべき」。そんな「頭で考えたルール」に縛られる必要はありません。
「気持ちがいいからやりたくなった」ときに「満足するまでやる」のでOK! どれだけ必要かは体が知っています。
最初は、ボールに体を預けることすら難しい人もいます。不安感の強い人や、普段から人に頼らず自分で何でもやる人は、ボールにも頼れないことがあるようです。
でも、力が抜けなければ絶対にダメというわけでもありません。今は体を緊張させることを選択しているだけのこと。
自分の心と体が緊張していることに気付けば、しめたものです。そこから力を抜く選択肢が見えてくれば、心と体を押し込めていた枷は一つ外れるのですから。
こり固まっていた私自身、50歳を超えてから大きな変化がありました。誰でもいくつからでも、体は変わっていきますよ。
ボールゆらゆら基本のやり方
【用意するもの】
直径20cm程度のフィットネス用ボール。1個でもよいが、首用と腰・上半身用に空気の量を変えた2個のボールがあると便利。
フィットネス用ボールは、「ピラティスボール」「ミニバランスボール」などの名称で、スポーツ用品などの他、100円均一ショップでも販売されている。

今回使用したフィットネス用ボール。写真右は100円ショップ「ダイソー」の「FITNESS BALL」(空気入れは別売)。
【やり方のポイント】
※力を抜いて体のやりたいようにするのが何よりも最優先!「こうしなきゃいけない」を外す!
※やり方もボールの位置も書かれたとおりにきっちりしようとしなくてよい。一番しっくりくる動きを行う。
※力を抜いてボールに体を預けているだけのほうが気持ちよいなら、動かなくてよい。
※一つの動きにつき5~6分が目安だが、回数や時間は数えなくてよい。気持ちよくてもっとやっていたいなら、満足するまで行う。やりたくない動きはしなくてよい。気が乗らないときもやらなくてよい。
※行う前と行った後で体が床にペタリと着く感覚や、体の軽さや動かしやすさ、筋肉のフワフワした弾力を 比較してみましょう。
「首」のボールゆらゆら
首こり、肩こり、眼精疲労、頭痛に!小顔、美顔にも!
【ボールの硬さ】
空気を半分だけ入れた、ベコベコのボールを用意する。
下記①の姿勢でほんの少しあごが上がり、息苦しくない程度が空気量の目安。

【ボールを置く位置】
ボールの中央が首の付け根の骨の出っ張り辺り

【やり方】
❶あおむけに寝て首の下にボールを入れ、体の力を抜く。

❷気持ちよさを味わいながら、ゆっくりと顔を左右に向け、体の「こうしたい」気持ちに従って、気持ちよいように動く。動きたくなければボールを当てて脱力しているだけでもよい。


「腰」のボールゆらゆら
腰痛、股関節痛、足のゆがみ、足のむくみに!
【ボールの硬さ】
肩や腰に入れるときには、軽く押さえたときに体に合わせて柔軟に沈む程度に空気を入れる。体を預けたときに一番心地よくリラックスできる硬さに空気の量を調節する。あまりパンパンに空気を入れ過ぎると、反発力が強すぎて体を預けにくくなることが多い。

【ボールを置く位置】
ボールの中央がお尻の割れ目の高さ辺り

【やり方】
❶あおむけに寝て左尻の下にボールを入れ、右尻は床につける。体の力を抜き、左ひざを立てる。

❷ゆっくりと左ひざを左右に揺らす。力で動かすのではなく、ひざの重さで自然に左右に倒れるのに任せる。体の「こうしたい」気持ちに従って、気持ちよいように動くのをくり返す。


❸ゆっくりとひざを持ち上げ、力を抜いてひざの重さで自然に胸に落とし、元に戻すのを満足するまでくり返す。


※右側も同様に行う。
※②③とも、特に動きたくなければ気持ちのよい位置でボールを当てて脱力しているだけでもよい。
「上半身」のボールゆらゆら
肩こり、ネコ背、バストアップ、ウエストダウンに!
【ボールを置く位置】

肩甲骨のくぼみと背骨の間で、一番気持ちよく感じるところ
【やり方】
❶あおむけに寝て、左肩の下にボールを入れ、ボールに体を預けてできるだけ脱力する。左肩が持ち上がるが、顔や体が横向きにならないようにする。

❷全身の力をできるだけ抜いたまま左腕を持ち上げ、頂点に達したら重力に任せてパタンと頭の上に落とす。腕やわきの筋肉を伸ばすのではなく、左肩の上側をたゆませる気持ちで。


❸全身の力をできるだけ抜いたまま左腕を持ち上げ、頂点に達したら重力に任せてパタンと腰の横に落とす。


❹②③を満足するまでくり返す。
❺①の姿勢から全身の力をできるだけ抜いたまま、二の腕が顔の前を通るように半円を描きながら頭の上まで左腕を回す。


❻全身の力をできるだけ抜いたまま左腕を持ち上げ、頂点に達したら重力に任せてパタンと腰の横に落とす。


❼⑤⑥をくり返し、満足したらボールの位置を右肩の下に入れ替えて右腕も同様に①から行う。
解説者のプロフィール

篠崎亜美(しのざき・あみ)
1988年生まれ。ボディセラピスト、パーソナルトレーナー、インド政府認定ヨーガシロマニ(指導者)。幼少の頃からアトピーに悩まされ、何度も退職せざるを得ない状況に追い込まれた26歳のとき、体をゆるめたところからアトピーが改善していくことに気づく。体のゆるみを探求するうちに、ボールを用いた体をゆるめる方法を発見。スポーツジムで教えるうちに、簡単な動きで効果が出ると評判になり「予約の取れないトレーナー」になる。もっと多くの人に体をゆるめることの重要性を知ってほしいと、ブログで動画を無料公開しながら、「amical body care」としてメソッド化。
個人セッションやグループレッスンなど詳細はブログ参照。https://ameblo.jp/amishinozaki/
体をゆるませれば自然に最適な状態になる
運動を続けないと、体は変えられない──。そう思っていませんか。
実は、体はゆるませることで、あっという間に、美しく、元気になっていきます。「ボールゆらゆら(正式名称「amical body care」)」は、体と心をゆるめて、本来の自分を取り戻すためのメソッドです。
「頭が作った緊張を解いて、体をゆるませたら、体は最適な状態に戻る力を持っている」。
そのことを私に教えてくれたのは、幼少時から患っていたアトピー性皮膚炎でした。
アトピーが爆発的に悪化したのは26歳のときです。
体を少しでも動かすと皮膚が切れ、血がにじむので、目も開けられないほど。絶え間なくかゆみと痛みに襲われ、ずっと家に閉じこもる中で考えたのは、これまでの自分のことでした。
私はそれまでさまざまな治療を受け、自分がやりたいことよりも「アトピーが悪化しないようにする」ことを全てに優先して行動していました。
努力や我慢を重ねてたどり着いたのがこんな最悪の状態なら、もう「アトピーを治す」ことは諦めよう、と思ったのです。
そこで、これまで「敵」のように思ってきたアトピーの肌を慈しむことにしました。
ガサガサでボロボロの肌でしたが、自分の手で触ったところから肌へ温かさが伝わってきました。その温かさが心地よく、なんだかホッとリラックスしたのです。
すると、その翌日、驚いたことに触ったところの肌の状態がよくなっていました。希望を感じた私は、自分の体に触れながら観察を始めました。
すると、肌というよりは、その奥にある体の内側の「空間」が硬いところのアトピーがひどいことに気付きました。
さらに「これを食べたい」「休みたい」といった体の感覚は無視して、「こうしたほうがいい」「あれをしなきゃ」と頭で考えたことを優先させると、体が緊張して「内側の空間」が固くなり、反対に手で触ってゆるんだところから治っていくことを発見したのです。
日常では体の感覚に従い、我慢しないことを徹底したところ、体の緊張が解けていくとともに肌はどんどんきれいになり、アトピーは完治。
体の奥深さにハマった私は、手の届かないところも含めて全身の緊張を解くにはどうすればよいかを、自分の体を使って実験を始めました。

左:現在より20kg以上太っていた頃の篠崎さん
右:メリハリのある「自分史上最高」の体形に
タオルやテニスボールなどいろいろ試した結果、最も体をゆるませる効果が高いと感じたのが、20cm程度のフィットネス用のボールでした。緊張していた体がボールの弾力に同調して、ゆるんでいくのです。
プニプニとした弾力のあるものに触れたら、心も体もフワッとほどけて軟らかくなった経験はありませんか?
例えば、赤ちゃんのほっぺた、ネコの肉球、ぬいぐるみやクッション。近頃子どもたちの間で人気の「スクイーズ」(握りつぶして楽しむ玩具)などもそうですね。この発見が「ボールゆらゆら」へとつながったのです。
鍛えるのではなくゆるめることで、ボディラインも変わりました。「やせるためには○○がいい」といった知識や理屈ではなく、体の感覚に従っていたら、スーッと体重が20kg以上落ちていったのです。
同時に首や肩、股関節といった関節も、以前は体の中に押し込められていたことにも気づきました。筋肉や関節の緊張を取ったら、首や腕、足もまっすぐ長くなり、こんなに埋まっていたのかと驚くほど。
平面的だった体形も立体的になり、バストやヒップが持ち上がり、ウエストもどんどんくびれるなど、見た目にも体が大きく変化しました。
体ってきっと優しくて、少々頭から無理難題を言われても、本来の自分の形をゆがめてでもかなえようとしてしまうのだと思います。
けれどもそのゆがみが積み重なれば、いつか限界が来て、悲鳴を上げる。それが体の不調や痛みとして現れるのでしょう。
効果のすごさが口コミで広がった
1年後、すっかり元気になった私は、近所のスポーツジムでインストラクターとして働き始めました。
そこでレッスンに「ボールゆらゆら」を取り入れたところ、がんばらない、我慢しない、ズボラなゆるーい動きにもかかわらず、効果がすごいと大好評。
たった1回のレッスンで姿勢がきれいになり、バストはアップし、ウエストとヒップは細く引き締まった。顔のたるみが取れて若返った。冷えや生理痛、ひざ痛や椎間板ヘルニア、座骨神経痛などがよくなったといった喜びの声が、口コミで広がっていきました
やがて、私はジムから独立。これまで積み重ねた知見を元に、簡単な動きで、体を信頼して体が本来持っている健やかさ、美しさを引き出すボディケアを教えるようになりました。
今では日比響子さんをはじめ、体をゆるめることの大切さを自分で実感した仲間たちが、さらにこのメソッドを広げていってくれているのがとてもうれしいです。

この記事は『安心』2020年8月号に掲載されています。
www.makino-g.jp