骨の材料はカルシウム、というのは間違いではありませんが、もう半分はたんぱく質の一種であるコラーゲンなのです。そのコラーゲンを変質させてしまうのが「糖化」です。骨質を弱くする糖化を防ぐには、血糖値が高い状態を避けることが重要になります。【解説】大友通明(大友外科整形外科院長)

解説者のプロフィール

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大友通明(おおとも・みちあき)
大友外科整形外科院長。1965年、埼玉県生まれ。1990年、東京医科大学医学部卒業。同大学整形外科学教室に入局し、東京医科大学八王子医療センターをはじめ、日本各地の病院で臨床経験を経て、2005年開業。脊椎の手術経験は700例を超える。著書に『骨と筋肉が若返る食べ方』(青春出版社)がある。

たんぱく質不足と糖質過多になりやすい

「普段のお食事はどのようなものを食べていますか?」これは、整形外科医である私が、診察で必ず患者さんに尋ねる質問です。

というのも、整形外科領域に大きく関わる骨や筋肉を作っている、たんぱく質やカルシウムなどのミネラルといった栄養素は、毎日の食生活から得ているもの。

つまり、毎日の食生活の問題こそが骨や筋肉のトラブルをもたらしている一方で、そうしたトラブルからの回復にも栄養のとり方が大きく関わってくるからです。これが私が実践する「栄養整形医学」です。

特に高齢者の場合、体力的に毎日の食事作りがしんどくなったり、歯が悪くなりかむ力が衰えたりしがちです。

そのため、朝はパン、昼はめん類、夜はご飯で野菜中心のおかず、肉より魚を好む……というパターンで、足りない分は間食に甘いものをつまんでおなかを満たすという方が、患者さんには多く見られます。

コレステロールや脂質を気にして、わざと肉や卵を食べるのを控えているという人も少なくありません。

こうした食生活は、たんぱく質不足の上に糖質過多になりがちで、骨がスカスカになり、もろく折れやすくなる骨粗鬆症の大きな要因となっています。

画像: パンで手軽に、という食生活はたんぱく質が不足しがち

パンで手軽に、という食生活はたんぱく質が不足しがち

「骨の材料はカルシウムなのに、なぜたんぱく質不足と糖質過多が骨粗鬆症と関係するのか」と、疑問に思う人もいるかもしれません。

骨の材料がカルシウムであるというのはもちろん間違いではありませんが、骨の材料のもう半分は、たんぱく質の一種であるコラーゲンなのです。

コラーゲンは、肌の弾力をもたらす美容成分として、女性はよくご存じでしょう。

線維状のコラーゲンが形成するしなやかな構造に、固いカルシウムが沈着することで、骨は強固さと折れにくさを保っています。

もし、骨にしっかりしたコラーゲン線維がなく、カルシウムを固めただけだったらどうなるでしょう。チョークのように、一見固そうに見えてもちょっとした衝撃でポキッと折れてしまうはずです。

このコラーゲンを体内で作りだすためには、原料として十分なたんぱく質に加え、ビタミンCが必要です。

一方で、コラーゲンを変質させてしまうのが「糖化」です。

体内の余分な糖がたんぱく質(組織)と結びつき、AGEs(糖化最終産物)として組織に蓄積していきます。

AGEsは「細胞のサビ」とも表現され、AGEsがたまった組織はしなやかさを失い、もろくなります。

AGEsが血管にたまれば動脈硬化を起こし、肌にたまればシワやたるみの原因になります。そして骨にAGEsがたまると、コラーゲン線維がしなやかさを失い、もろく折れやすくなるのです。

最近は、骨のカルシウム量を示す「骨密度」だけでなく、コラーゲン線維の強度を示す「骨質」もまた、骨粗鬆症の重要な指標と考えられています。

骨質を弱くする糖化を防ぐには、できるだけ血糖値が高い状態を避けることが重要になります。

たんぱく質、鉄、ビタミンC、カルシウムで強い骨に

そこで、栄養療法のポイントは、第1に糖化を進める糖質、つまり甘いものや主食のとり過ぎを避けること。

適量は一概に言えませんが、糖質をとり過ぎると眠気が出てきます。食後に眠気に襲われるようなら、糖質をもう少し控えましょう

第2に、たんぱく質をしっかりとること。同じたんぱく質でも白っぽい鶏肉や豚肉、魚よりも、色味の赤い肉や魚が特にお勧めです。

赤い牛肉やラム肉、レバー、魚であればマグロやカツオ、イワシなど赤い身の魚、また血合いの部分には、たんぱく質とともに、コラーゲンの合成に必要な鉄が豊富だからです。鶏肉でも、砂肝、レバー、ハツなどの赤みのある内臓肉なら、たんぱく質と鉄がとれます。

カルシウムは骨ごと食べられる小魚や、大豆製品などに多く含まれます。サバ缶など魚の缶詰も、高温高圧で骨ごと食べられるようになっているので、上手に活用するとよいでしょう。

こうした食材を、ビタミンCの多い葉野菜と合わせて調理すると、たんぱく質、鉄、カルシウム、ビタミンCと、強い骨を作るのに必要な栄養を手軽にとれます。

別記事で紹介されている「魚の缶詰レシピ」には、骨を強くするのに必要な栄養素がたっぷり含まれています。ぜひ参考になさってはいかがでしょうか。

[別記事:骨粗鬆症を撃退!「魚の缶詰」簡単&美味レシピ→

なお、しっかり肉をとっていても、消化・吸収がうまくいかない人がいます。その中には制酸剤を飲んでいる人が少なくありません。消化をよくするには、主治医と相談し、そういった薬を一時中止または変更することも検討するとよいでしょう。

画像: この記事は『安心』2020年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年8月号に掲載されています。

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