肺の機能を整えておけば、セキなどの症状を抑えるうえに、ウイルスの感染や肺炎を防ぐ可能性も高まります。私が勧めているのが、肺機能を強化するツボ、「尺沢」と「足の三里」の刺激です。【解説】内田輝和(倉敷芸術科学大学生命科学部客員教授/鍼メディカルうちだ院長)

解説者のプロフィール

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内田輝和(うちだ・てるかず)

1949年、岡山県生まれ。70年、関西鍼灸柔整専門学校卒業。74年、鍼メディカルうちだを開業。現在、倉敷芸術科学大学生命科学部健康科学科鍼灸専攻客員教授、日本良導絡自律神経学会執行部理事、岡山県鍼灸師会会長。岡山県武術太極拳連盟会長。著書に『大学教授が教える「本当に効くツボ」』(マキノ出版)など。
▼鍼メディカルうちだ(公式サイト)

肺炎を起こさなくなり肺がきれいになった

新型コロナウイルスによる感染の終息がなかなか見えてきません。このウイルスが怖いのは、感染して重症化すると肺炎などを起こし、死に至るケースがあることです。のどや肺が衰えている人は重症化しやすいので、特に注意が必要です。

そういう人に私が勧めているのが、肺機能を強化する特効ツボ(詳細は後述)の刺激です。肺の機能を整えておけば、セキなどの症状を抑えるうえに、ウイルスの感染や肺炎を防ぐ可能性も高まります。

まず、二つの症例を紹介しましょう。
Aさん(50代・男性)は数年前に気管支拡張症を患い、来院当初は仕事を続けられない状態でした。気管支拡張症とは、肺の気管支が拡張したまま戻らない状態になり、セキやタンが慢性的に続く病気です。

Aさんも少し歩くと息苦しくなり、セキが止まらなくなっていました。病院で治療を受けましたが、あまり改善が見られず、何度も肺炎をくり返したそうです。

そこで、肺の機能を強化する二つの特効ツボにお灸をしたところ、3ヵ月で息苦しさがなくなり、セキも減りました。1年後には仕事に復帰でき、肺炎も起こさなくなりました。

AさんからレントゲンやCT(コンピュータ断層撮影)検査の画像を見せてもらうと、肺はきれいになっていました。肺機能も回復しており、この結果に医師も驚いていたそうです。

Bさん(70代・女性)は腰痛治療で来院されていましたが、セキの症状がひどいので尋ねてみると、中隔欠損症という心臓の持病があるとのことでした。

これは心臓の左右の部屋(心房や心室)を区切る壁に穴が開く、先天性の病気です。動悸や息切れのほか、カゼをひくとぜんそくのような激しいセキが出るそうです。

Bさんにも、二つの特効ツボにお灸をしたところ、2週間でセキの症状が和らぎました。さらに、肺機能を高める呼吸法(後述)を教えたところ、症状はほぼ治まり、2年経った現在もいい状態を維持できています。

このほか、セキぜんそくの患者さんにも、この特効ツボへのお灸を行っていますが、症状の改善は顕著です。肺機能の強化に手ごたえを感じています。

肺機能を強化するうえに全身の免疫力を高める!

肺機能の強化に役立つのは、「尺沢(しゃくたく)」と「足の三里(あしのさんり)」という二つのツボです。私はこれらのツボをお灸で刺激しますが、手指で押しもみしても効果は期待できます。

特効ツボ❶「尺沢」

尺沢は、ひじの関節の内側にあるツボです。肺経という経絡(一種の生命エネルギーである気の通り道)上の重要なポイントとなる「合穴」に当たります。合穴は、臓器に力をつけるといわれる場所です。その一つである尺沢は、肺機能を強化しセキを止める特効ツボです。

画像1: 【肺を強くするツボ】セキや息切れの改善におすすめ  全身の免疫力も高める手と足の刺激法を紹介

【ツボの探し方】
ひじを曲げたときにできる内側のシワの上で、すじが出る部位(腱)の少し外側(手の親指側)。押すと痛気持ちいいところ。

【ツボの押し方】

画像: 特効ツボ❶「尺沢」

反対側の手でひじ関節を包むように持ち、親指を尺沢に当てて、強めに20回押しもみする。左右の腕に交互に行い、3回くり返す。

特効ツボ❷「足の三里」

もう一つの足の三里は、ひざ下のすねの外側にある胃経という経絡上のツボです。胃経の気が弱くなると、万病を招くといわれます。足の三里は胃経の合穴に当たり、刺激することで、全身の免疫力が高まります。

画像2: 【肺を強くするツボ】セキや息切れの改善におすすめ  全身の免疫力も高める手と足の刺激法を紹介

【ツボの探し方】
ひざのお皿の骨の下にある、すねの骨の出っ張りから手の指幅3本分下がり、そこから手の指幅1本分だけ足の小指(第5趾)側。

画像3: 【肺を強くするツボ】セキや息切れの改善におすすめ  全身の免疫力も高める手と足の刺激法を紹介

【ツボの押し方】
イスなどに座り、親指を足の三里に当て、強めに20回押しもみする。左右の足に交互に行い、3回くり返す。

90年ほど前、「お灸博士」と呼ばれた医師の原 志免太郎(はら・しめたろう)博士は、肺結核に足の三里が有効であることを発見。鹿児島県徳之島の肺結核患者に、足の三里のお灸をしたところ、優れた治療効果を上げました。現在もアフリカでは、肺結核の治療に足の三里のお灸が用いられています。

また、原先生自身も足の三里へのお灸を続けた影響か、108歳まで長生きされ、当時の男性長寿日本一になられました。

尺沢と足の三里の組み合わせは、肺の機能を強化するうえに免疫力も高めます。新型コロナ対策に最も期待できるツボ刺激だと、私は思っています。

ツボ押しは、週に2〜3回行います。症状がひどい人は毎日行ってもかまいません。行う時間は、いつでもいいのですが、食後と入浴後の1時間だけは避けてください


ツボ押しの効果をさらに高めるのが、「肋骨呼吸」という私が考案した呼吸法です。

これは、肋骨を大きく広げたり、収縮したりするという呼吸法です。肋骨を大きく動かすことによって、肺が柔軟になって働きもよくなります。ただし、セキがひどいときは控えてください。治まってから行いましょう。

「肋骨呼吸」のやり方

【注意】セキがひどいときは控える。

画像1: 「肋骨呼吸」のやり方

あおむけになり、リラックスする。

画像2: 「肋骨呼吸」のやり方

肋骨を顔に向かって引き上げるイメージで、10秒かけて鼻でゆっくり強く息を吸う。
【ポイント】首のすじが浮き出るくらい強く吸う。

画像3: 「肋骨呼吸」のやり方

続いて、おなかが凹むように、10秒かけて口からゆっくり息を吐く。
②〜③を3回くり返す。

特効ツボの刺激も肋骨呼吸も、2週間ほど続けるとジワジワと効果が出てきます。私も新型コロナの感染予防のために、毎日実践しています。

画像: この記事は『壮快』2020年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年8月号に掲載されています。

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