解説者のプロフィール

石原新菜(いしはら・にいな)
イシハラクリニック副院長。2000年帝京大学医学部に入学。2006年卒業、同大学病院で2年間の研修医を経て、現在父、石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察のほか、わかりやすい医学解説と、親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。著書は 13万部を超えるベストセラーとなった『病気にならない蒸しショウガ健康法』(アスコム)、自身の経験をふんだんに盛り込んだ『女のキレイは30分でつくれる』(マキノ出版)など著書多数。日本内科学会会員。日本東洋医学会会員。日本温泉気候物理医学会会員。二児の母。
▼イシハラクリニック(公式サイト)
父から大量の腹巻きが送られてきた!
今から10数年前、医学生を経て研修医を務めていた時期は、目の回るような忙しさでした。
36時間勤務が週に3回あるうえ、勉強で徹夜をする日もあって常に寝不足。親元を離れていたため食生活は乱れ、お風呂にはつからずシャワーだけ。運動の習慣もなかったので、体重は今より10㎏も重く、締まりのない体形でした。
そんな不摂生な毎日でしたから、体調が悪く、頑固な肩こりや頭痛に加え、変な動悸もありました。多汗症もひどく、わきの下がびっしょりぬれて服の色が変わるほど。グレーのシャツなど、とても着られません。
さらに、便秘と痔にも悩まされていました。
便がかたいため、切れ痔になったのでしょう。排便のたびに、ピシャッと肛門が切れて、相当に痛みました。また、外に飛び出すほどではありませんでしたが、イボ痔もありました。
生理痛もつらく、周期が不順なのを気にしていたら、ついに生理が止まってしまいました。それで初めて、「このままでは子供を産めなくなるかも」という危機感を抱いたのです。
こうした不調を、父である医師・石原結實に相談したところ「体を冷やす生活を改めるように」と、叱咤されました。加えて、『天才バカボン』のパパがしているような腹巻きが、大量に送られてきました(笑)。
当時の私の不調はいずれも、東洋医学でいう「瘀血(おけつ)」から生じていたものでした。瘀血とは、血行の悪さと血液の汚れが合わさった状態。「汚血」といい換えると、わかりやすいかもしれません。
瘀血になる原因は、主に五つあります。
❶体の冷え
❷食べ過ぎ
❸運動不足
❹ストレスの多い生活
❺水分のとり過ぎ
原因と反対のことを実行すれば、瘀血が改善されるはず。そこで私は、腹巻きと入浴で体を温めて、少食を心がけ、スポーツジムに入会して体を動かしました。ストレスは極力避け、水分をとり過ぎないよう注意したのです。
すると、半年ほどであらゆる症状が治まりました。もちろん、切れ痔やイボ痔とも、サヨナラできたというわけです。
「おケツの痔は瘀血から治す!」
皆さんに、体験者としてアドバイスをしましょう。
体を温めるのに手っ取り早いのは、なんといっても腹巻きです。24時間着用し、おなか周りを温めることで、腸の動きがよくなり、全身の血流改善に役立ちます。腹巻きの上から、腰やお尻にカイロを貼るのも、即暖性があるので効果的です。
体を内側から温めることも、忘れずに。ニンジンなどのセリ科の食物は体を温める作用があります。ニンジンジュースにしてとるのがお勧めです。ニンジン2本とリンゴ1個をジューサーでしぼるだけなので簡単です。温かい紅茶におろしショウガと黒砂糖を少量加えた、ショウガ紅茶もおすすめです。
朝食を、このどちらかにすると決めれば、自然と食べ過ぎを防ぐことができます。
運動不足とストレスの解消には、ランニングがとても有効です。私も毎朝、走っています。ウォーキングや、室内でできるストレッチ、筋肉トレーニングなど、ご自身に合ったもので体を動かしてみましょう。体を動かすと睡眠の質がよくなるので、心身の疲れが癒されます。
また、水分のとり過ぎは体を冷やしますが、控え過ぎも便秘の元。のどが渇いたら、温かい物を飲むようにしましょう。冷たい物は控えてください。
痔については、ときに薬の助けが欲しくなるときもあるでしょう。私は、内服には血行を改善する「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」を、外用には「紫雲膏(しうんこう)」という漢方薬を使いました。いずれも、薬局で入手可能です。薬剤師さんに相談してみてください。
紫雲膏は、肛門の中にも周りにも塗れる軟膏で、炎症を抑えてくれます。ただ、濃い紫色なので、パンティーライナーを使用するなど、工夫をするといいでしょう。
恥ずかしくて、つい受診をためらいがちな痔の症状。でも、軽症なら自力で治すことも可能です。「おケツの痔は、瘀血から治す!」を合言葉に、まずは生活を改善して、根本的な治癒を目指しましょう。