ボイストレーニングは、腹式呼吸の訓練やのどを鍛えることで、歌の上達だけではなく誤嚥の防止にも役立つそうです。「これだ!」と思って私も通うようになりました。教室ではいろいろなエクササイズを行います。なかでもメインになるのが「ドッグブレス」でした。【体験談】岡本信人(俳優)

プロフィール

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岡本信人(おかもと・のぶと)

1948年、山口県生まれ。俳優、タレント。『肝っ玉かあさん』『ありがとう』『渡る世間は鬼ばかり』など、テレビ、映画、舞台で幅広く活躍。最近では、野草の達人として活躍し注目を集める。著書に『道草を喰う』(ぶんか社)など。

食べ物やツバが頻繁に気管に入るように

今から5年ほど前、私は誤嚥によるセキに悩まされていました。家人からは、「慌てて食べるから詰まるのよ」と注意されるものの、若いころはこんなことはありませんでした。のどの機能が衰えたのか、飲み込む力が弱くなってきたようです。食事や会話の最中に、食べ物やツバが簡単に気管に入ってしまうのです。いったん入ると、ひどくむせたり、セキが止まらなくなったりして、大変苦しい思いをしていました。

誤嚥性肺炎(誤嚥によって肺が炎症を起こす病気)が、高齢者に多い死因の一つということは知っていました。僕自身もう若くはないし、このまま誤嚥グセがつくのはなんとか避けたい。何かいい方法はないものかと、1年ほど悩んでいました。

そんなある日、いつも通っているスポーツジムの中で、ふと目に留まった教室がありました。ガラス越しに見える皆さんが、口をパクパクさせています。確認してみると、「ボーカリズム」というボイストレーニングの教室でした。

主にカラオケがうまくなりたい人が通っているようです。教室の先生に話を聞くと、ボイストレーニングは、腹式呼吸の訓練やのどを鍛えることで、歌の上達だけではなく、誤嚥の防止にも役立つそうです。

「これだ!」と思って、私も早速ボーカリズム教室に申し込み、週に1回、通うようになりました。

教室では、いろいろな声を出すエクササイズを行います。なかでもメインになるのが、「ドッグブレス」でした。

ドッグブレスのやり方にはパターンがいくつかありますが、ここでは最も基本的なものを紹介しましょう(下項参照)。

下腹を凹ませてお尻の穴を締める

ドッグブレスは、犬が走ったあとに口を開けて呼吸をするように、「ハッハッハッハッ」と息を短く強く吐くことをくり返す呼吸法です。息を吸うのは意識しなくても、吐けば自然と吸うので大丈夫です。小刻みに息を吐くので、肺やのどをしっかり使います。

ドッグブレスを行う際、重要なのは下腹を凹ませること。その力で「ハッ」と強く息が吐けるのです。同時に、お尻の穴をキュッと締めます。

のどはなるべく締めつけません。「ハアーッ」とあくびをするときのように、常に空洞の状態を保つことが大事です。

ドッグブレスは、呼吸するだけなのですが、慣れないうちはけっこうハードで疲れました。やっている最中にクラクラしたこともあります。先生から「あまり一生懸命やらなくていいですよ」といわれたくらいです。

横隔膜(胸とおなかの境目にある薄い筋肉)を激しく上下に動かすと同時に、骨盤底筋群(骨盤の下側にある筋肉の総称)や腰周りの筋肉も使うので、いい筋力強化にもなります。

慣れてきてからは、ウォーキングに出たときにも、歩きながらドッグブレスを行いました。

こうしてドッグブレスを日常的に行うようにしてから、いつの間にか、食事中に誤嚥しなくなりました。もう始めて5年になり、誤嚥に悩んでいた時期からさらに年を取りましたが、今も誤嚥はほぼ皆無です。ひどくむせたり、セキ込んだりすることはまずありません。

また、以前よりしっかり声が出るようになりました。肺活量もアップしたようです。このように、のどが鍛えられ、肺機能も高まれば、ひょっとしたら新型コロナウイルスの予防にも役立つかもしれません。

今年で俳優生活57年めになりますが、今後もしっかりボイストレーニングを続ければ、声の衰えもなく、いい演技をお届けできるんじゃないかなと思っています。

ドッグブレスの基本的なやり方

画像: ドッグブレスの基本的なやり方

足を肩幅に開いて立ち、姿勢をよくして肩の力を抜く。
声は出さず、犬が口を開けて呼吸するように、「ハッハッハッハッ」と、息を短く強く吐くことを1分間くり返す。息を吐くとき、下腹を必ず引っ込める。
②と同様のやり方で、息を吐く際に声を乗せて、「ハッハッハッハッ」と1分間くり返す。
最後に、ハーッとできるだけ長く息を吐く。
①〜④を1セットとして、朝昼晩行う。

【ポイント】
・息を吐くときに下腹を凹ませる。
・のどはあくびのときのように空洞を保つ。
【注意】
無理はしない。②③は各1分間が目安だが、最初は20〜30秒から行うとよい。

血圧の高い人や高齢者は少ない回数から始める(山王病院副院長・呼吸器センター長 奥仲哲弥)

ドッグブレスは、息をしっかり吐き、のどを締めつけないという点で、私が指導する呼吸法と共通しています。そうすることで、のどや肺の機能が向上したのでしょう。

ただ、強く息を吐き出すので、血圧の高い人や高齢者はやり過ぎるとかなり体の負担になります。最初は10回ぐらいから始め、徐々に回数を増やすようにしてください。

[別記事:「横笛呼吸」と「ボール抱っこストレッチ」のやり方

画像: この記事は『壮快』2020年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年8月号に掲載されています。

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