緑茶の健康効果の立役者はカテキンです。なかでも近年注目されているのが、「エピガロカテキンガレート(EGCG)」。カテキン効果の中心成分で、緑茶特有の成分です。このEGCGに強力な抗ウイルス作用があることが、最近次々に報告されています。【解説】平柳要(元日本大学医学部准教授・食品医学研究所所長)

解説者のプロフィール

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平柳要(ひらやなぎ・かなめ)
医学博士。東京大学大学院医学研究科修了後、イタリア・パルマ大学客員研究員、ハーバード大学客員研究員などを経て、日本大学医学部准教授となる。現在、㈱食品医学研究所の代表兼所長。著書に『病気にならない焼きネギ健康法』(サンマーク出版)など多数。

ウイルスの周囲にある脂肪膜を破壊する!

私はこれまで、健康によいさまざまな食品やそのレシピを皆さんにご提案してきました。コロナ禍に見舞われた今年の夏は、熱中症や夏バテ対策に加えて、ウイルスへの感染にも備えなければなりません。

そこでお勧めしたいのが、緑茶に梅干しを入れる「梅干し緑茶」です。幅広い健康効果を持つ緑茶に梅干しを加えることで、ウイルスにも炎暑にも負けない、爽やかなドリンクになります。

なぜこのお茶がお勧めなのか、まず、緑茶の健康効果から見てみましょう。

緑茶の健康効果の立役者は、いうまでもなくカテキンです。なかでも近年注目されているのが、「エピガロカテキンガレート(EGCG)」。カテキン効果の中心成分で、ウーロン茶や紅茶にはほとんど含まれていない、緑茶特有の成分です。

このEGCGに、強力な抗ウイルス作用があることが、最近次々に報告されています。特に目を引くのは、新型コロナウイルスのようなエンベロープ・ウイルスに効果があること。

新型コロナやインフルエンザのウイルスには、周囲にエンベロープという脂肪の膜があります。EGCGはこのエンベロープを破壊したり、人の細胞中に入ったウイルスが複製・増殖するのを阻害したりするため、多方面からウイルスの不活性化が期待できるのです。

また、EGCGには強い抗酸化作用があります。血管や細胞をさびつかせる過剰な活性酸素を消去して、ガンや動脈硬化をはじめ、生活習慣病を予防する効果があるのです。

さらにEGCGは、腸からの糖質や脂肪の吸収を抑えたり、血管を広げて血圧を下げたり、NK細胞という免疫細胞の働きを高めたりする作用もあります。最近は、神経細胞を守って認知症を防ぐ効果も報告されています。

画像: 感染症のリスクを下げる!

感染症のリスクを下げる!

一方の梅干しの健康効果の主役はクエン酸です。クエン酸のいちばんの働きは、ミネラルの吸収を助けること。

骨を丈夫にするカルシウムやマグネシウムは腸から吸収されにくいのですが、クエン酸はカニのハサミのようにミネラルをつかみ、吸収されやすい形に変えて腸からの吸収を促進させます。

クエン酸の酸味は食欲を増進させて、唾液や胃液の分泌を高めます。ですから食欲が低下しがちな夏でも食事が進み、体力維持の一助となります。

また梅干しには、塩分が含まれています。汗をかくと水分とともに塩分も失われて、熱中症になりやすくなります。それを防ぐためにも、水といっしょに適度の塩分をとることが大事です。

このように多様な作用を持つ梅干しを緑茶に入れたものが「梅干し緑茶」です。ウイルスによる感染症のリスクを下げつつ、暑い夏を乗り切る一押しドリンクといえます。

80度くらいのお湯で煎茶を淹れるのが最適

梅干し緑茶は、緑茶を淹れて梅干しを加えるだけ。作るのはいたって簡単です。ただし、次の3点を守ってください。

煎茶を使うこと。番茶、ほうじ茶、抹茶などにはEGCGはあまり含まれていません。
沸騰させて80度に冷ましたお湯を使うこと。EGCGは80度で最もよく抽出されます。
水出ししないこと。EGCGは水では抽出されにくいためです。

こうして淹れた緑茶に、中粒程度の梅干しを1個入れます。冷たい緑茶を飲みたい場合は、冷蔵庫などで冷やした物を使いましょう。入れた梅干しを軽く潰すと、成分が溶け出しやすく、味が緑茶になじみやすくなります。

梅干しは漬け方によって酸味や塩味が違いますから、味見をして、緑茶を入れる量を加減してください。

飲む量は、1日1杯、多くても2〜3杯でいいでしょう。高血圧の人は梅干しの量を減らすなどして、塩分のとり過ぎに気をつけてください。

飲むタイミングは、いつでもかまいません。EGCGに糖質の吸収を抑える作用があるので、食事の前に飲めば、血糖値の急激な上昇を防げます。

また、食事のときに、ミネラルの多いおかず(海藻や豆など)といっしょにとれば、ミネラルの吸収がよくなります。ミネラルの多い黒糖をお茶請けにしてもいいでしょう。

冷たい梅干し緑茶を携帯し、運動のあとや、汗をかいたときに飲めば、熱中症や夏バテの予防にもなります。

梅干し緑茶は、何杯も飲む必要はありません。1日1杯でもいいので、毎日飲んで長く続けることが大切です。

梅干し緑茶の作り方

画像1: 梅干し緑茶の作り方

【材料】
梅干し…1個
緑茶の茶葉…3g(小さじ1と1/2~2)
湯(80度が適温)…150ml

画像2: 梅干し緑茶の作り方

【作り方】
急須に茶葉を入れて湯を注ぐ。
緑茶を湯飲みに注ぎ、梅干しを加える。
※梅干しをつぶしながら、ゆっくりと飲む。梅干しは、なるべく食べ切る。
※冷たくして飲みたいときは、②を冷蔵庫で冷やすか、冷やした緑茶に梅干しを入れる(水出しした緑茶で作らない)。

画像: この記事は『壮快』2020年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年8月号に掲載されています。

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