薬膳では青梅は体を冷やす食材とされています。しかし、天日に干したり煙でいぶしたりすることで、体を温める作用が強まります。梅干しも、焼くことで、体を潤す作用や収れん作用に体を温める作用が加わり、健康効果が高まるのです。【解説】田中友也(漢方相談薬局CoCo美漢方/鍼灸師・国際中医専門員)

解説者のプロフィール

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田中友也(たなか・ともや)
兵庫県神戸市垂水区にある漢方相談薬局CoCo美漢方勤務。関西学院大学法学部卒業後、イスクラ中医薬研修塾にて中医薬の基礎を学び、その後、北京中医薬大学で現場の医療を研修。帰国後、小島薬局漢方堂にて恩師・小島晃氏のもと、4年間勉強。現在は店舗で日々健康相談にのるかたわら、鍼灸師として施術も行う。著書に『12か月のおいしい漢方』(扶桑社)がある。

梅干しを焼くと体を温める作用が増す

私は日ごろ、鍼灸師・国際中医専門員として、神戸市にある漢方専門薬局で多くのかたの健康相談を受けています。その一方で、ツイッターを通して、誰でも手軽にできる食の養生法の情報発信に力を入れています。

これまで、さまざまな養生法について投稿してきましたが、なかでも、多くのかたから好評だったテーマが「焼き梅干し」です。

焼き梅干しとは、その名のとおり、焼いた梅干しのこと。「えっ、梅干しを焼くの?」と驚いたり、「普通に食べるのと何が違うの?」と疑問に思ったりするかたが、ほとんどでしょう。

では、なぜ梅干しが体にいいのか、なぜ焼いて食べたほうがいいのか、東洋医学の観点からご説明しましょう。

そもそも梅は、古くから日本人になじみがあるうえ、健康にもよい優れた食材です。その優秀さを示すかのように、「医者殺し」「その日の難逃れ」「三毒(血の毒、水の毒、食べ物の毒)を絶つ」など、梅にまつわるいい伝えもたくさん存在します。

漢方の世界でも、青梅を燻製にした「烏梅(うばい)」という生薬があります。生薬とは、漢方薬の原材料のことです。

烏梅は、日本では、あまりなじみがありませんが、中国では、おやつ感覚で食べられています。その薬効は、鎮痛や解毒作用。さらに、セキ止めや下痢止め、止血、体を潤すなどの働きがあるとされています。


これらの作用は、梅干しにも共通するものです。実際、東洋医学に基づいた食事である薬膳の世界でも、梅干しはさまざまな効能を秘めた、優れた食品とされています。

梅干しといえば、酸っぱさが特徴です。薬膳では、酸味には、唾液の分泌を促して体を潤す作用体を引き締める収れん作用などがあるとされています。汗がダラダラと出たとき、ゾクゾクするようなカゼをひいたとき、体を冷やしてひどい下痢をしてしまったときには、梅干しは特にお勧めです。

一方、薬膳では、青梅自体は、体を冷やす食材とされています。しかし、天日に干したり、煙でいぶしたりすることで、体を温める作用が強まります。

つまり、梅干しを焼くことで、体を潤す作用や収れん作用に体を温める作用が加わり、より一層健康効果が高まるのです。東洋医学でいう「気」と「血」の循環が高まり、疲労回復や冷え症の改善、新陳代謝がアップすることによるデトックス効果も期待できます。

作り方が簡単なのも、焼き梅干しのよいところです。(作り方は下記参照)。とにかく、梅干しを加熱するだけでOK。なお、用意する梅干しは、ハチミツ漬けでも減塩梅干しでも、なんでもかまいません。

加熱には、フライパンやトースター、オーブンなど、自宅にある物を使ってください。トースターなら、10〜15分くらいでしょうか。梅干しを焦がさない程度に加熱してください。

焼き梅干しは、保存がきくので、作りおきもお勧めします。食べる量は、1日1〜2個が目安です。ただし、塩分が多いので、高血圧の人は多量摂取を控えてください。

焼き梅干しの作り方

画像1: 焼き梅干しの作り方

【材料】
梅干し…適量

【作り方】
※梅干しが中までホカホカになったら完成。密閉容器に入れ、冷暗所で保存する。

■フライパンで作る場合

画像2: 焼き梅干しの作り方

油はひかず、フライパンに梅干しを並べる。焦がさないよう、箸で転がしながら火を通す。

■オーブントースターで作る場合

画像3: 焼き梅干しの作り方

アルミホイルを2枚、軽く丸めて全体にシワをつける。広げて2枚重ねにし、梅干しを包み、口をしっかりと閉じる。

画像4: 焼き梅干しの作り方

オーブントースターに入れて、10~15分焼く。

■電子レンジで作る場合

画像5: 焼き梅干しの作り方

器に梅干しを入れ、ラップをかける。500Wで1分ほど温める。

そのまま食べても料理に使っても◎

画像: 焼き梅干しをお茶漬けにのせ、ワサビを加え食べるのもお勧め

焼き梅干しをお茶漬けにのせ、ワサビを加え食べるのもお勧め

食べ方は、そのまま口にしても、料理に使ってもいいでしょう。私のお気に入りは、お茶漬けに焼き梅干しとワサビをのせて食べること。食べ始めると、すぐに体がポカポカと温まります。

焼き梅干しは、薬局に相談に訪れるお客様にも勧めています。なかには、こんな事例もあります。

Aさん(75歳・女性)は、空セキが止まらないというご相談で来店。もともと乾燥に弱く、毎年冬になると、空セキが続いていたそうです。Aさんは、食も細く、やせ型でした。

そこで私は、漢方薬といっしょに、焼き梅干しをお勧めしました。Aさんは、朝と晩の1日2回、焼き梅干しを白湯に入れて食べたそうです。

すると2週間後には、寝る前に多少セキが出る程度に改善。1ヵ月経つころには、セキはほとんど出なくなり、食欲も出てきたそうです。

ほかにも、「口の渇きが改善した」「疲れがスッキリ取れた」「子供のカゼが翌日に治った」など、たくさんの喜びの声があります。皆さんも、健康維持の一助として、焼き梅干しをお試しください。

画像: この記事は『壮快』2020年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年8月号に掲載されています。

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