実は、梅干しの有効成分は加熱することで増えるのです。ダイエット効果をもたらすバニリンという成分は熱を加えることで20%も増加、血流を改善し動脈硬化予防にも役立つムメフラールという成分は、加熱することで初めて生じるのです。【解説】來村昌紀(らいむらクリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

來村昌紀(らうむら・まさき)
らいむらクリニック院長。和歌山県出身。和歌山県立医科大学、千葉大学大学院卒業。日本赤十字社和歌山医療センター脳神経外科、独立行政法人南和歌山医療センター脳神経外科、和歌山県立医科大学附属紀北分院脳神経外科助教、千葉中央メディカルセンター脳神経外科などを経て、2014年12月千葉市若葉区にらいむらクリニックを開設、院長を務める。

焼き梅干しの原形は平安時代の薬

私は現在、千葉県でクリニックを開設し、内科医として多くの患者さんを診察しています。西洋医学と東洋医学のいいところをうまく活用し、一人ひとりの患者さんに合わせた治療を行うことがモットーです。

私が東洋医学と出合ったのは、十数年前のこと。当時、私は和歌山県にある病院で、県下初となる大学病院の頭痛外来を立ち上げ、頭痛に悩む患者さんを多く診察していました。

西洋医学的な治療で、頭痛がよくなる人はもちろん多くいたのですが、なかには、治療が効果を発揮しない人もいました。あるとき、そんな患者さんに漢方薬(このとき使ったのは五苓散)を試したところ、頭痛がピタリと治まり、その効果に驚いたことがありました。

この経験がきっかけとなって、私は、西洋医学の医師として働きながら、東洋医学についても学ぶようになったのです。

焼き梅干し」は、そんな私が、西洋医学、東洋医学の両面から着目し、来院する患者さんに勧めている物の一つです。

ふだん私は「梅干しの黒焼き」と呼んでいますが、ここでは一般的な名称の「焼き梅干し」として紹介しましょう。

そもそも、焼き梅干しの原型は、「烏梅(うばい)」という生薬です。烏梅は、青梅を燻製にした物。遣唐使が日本に持ち帰ったとされ、古くから薬用に用いられてきました。

日本最古の医学書で平安時代に書かれた『医心方』には、病に臥していた村上天皇が烏梅を食べて元気になったという記載が残っています。

江戸時代になると、一般の家庭にも鳥梅が普及してきました。江戸時代の図説百科事典である『和漢三才図会』を見ると、烏梅にはインフルエンザのような流行病を治し、熱を下げ、セキを止める作用があると紹介されています。

昔は、衛生状態が今ほどよくありませんでしたから、烏梅は、回虫の駆除や下痢止めにも用いられました。明治時代にコレラや赤痢が流行したときも、予防と治療に使われました。

この烏梅を、現代のライフスタイルに合わせ、より簡単に手作りした物が、焼き梅干しです。近年では、この焼き梅干しの健康効果について、西洋医学の面から科学的な裏付けが次々となされています

加熱すると健康効果がさらに高まる

そもそも梅干しには、食中毒の原因である「黄色ブドウ球菌」や「病原性大腸菌」などの菌の増殖を抑制する制菌作用があります。

また、クエン酸の効能も知られています。クエン酸の働きで疲労回復が進み、血流や代謝が促されるのです。ほかにも整腸作用、制菌・殺菌効果など、さまざまな効能が明らかになっています。

また、ごく近年には、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する成分があることもわかってきました。

そして、さらに梅干しを「加熱する」ということが、重要な意味を持っていることも明らかになっています。

実は、梅干しの有効成分は加熱することで増えるのです。梅干しには、脂肪燃焼を高め、ダイエット効果をもたらすバニリンという成分がありますが、バニリンは、熱を加えることで、20%も増加することがわかっています。

また、血流を改善し、動脈硬化予防にも役立つムメフラールという成分は、加熱することで初めて生じるのです。

このように加熱によって産生されたり、増加したりする成分があることからも、焼き梅干しは皆さんに勧められます。

画像: 梅干しの有効成分は加熱により増加する!

梅干しの有効成分は加熱により増加する!

私自身、焼き梅干しをよく食べています。作り方は簡単(作り方は下記参照)。一度加熱しておけば、冷めても成分に変わりはありませんから、多めに作って保存容器に入れ、冷暗所で保存しておいて、おやつがわりにしてもいいでしょう。

私は、仕事が忙しく、疲れを感じたときなどに、クリニックにあるトースターで焼き梅干しを作り、食べるようにしていますが、疲れが取れるように感じます。健康効果の高さはもとより、昼休みなどの短い時間でもすぐに作れる手軽さがよいですね。

さまざまな健康効果があり、簡単に作れる焼き梅干しを、日々の健康のために食べる習慣をつけるといいでしょう。

焼き梅干しの作り方

画像1: 焼き梅干しの作り方

【材料】
梅干し…適量

【作り方】
※梅干しが中までホカホカになったら完成。密閉容器に入れ、冷暗所で保存する。

■フライパンで作る場合

画像2: 焼き梅干しの作り方

油はひかず、フライパンに梅干しを並べる。焦がさないよう、箸で転がしながら火を通す。

■オーブントースターで作る場合

画像3: 焼き梅干しの作り方

アルミホイルを2枚、軽く丸めて全体にシワをつける。広げて2枚重ねにし、梅干しを包み、口をしっかりと閉じる。

画像4: 焼き梅干しの作り方

オーブントースターに入れて、10~15分焼く。

■電子レンジで作る場合

画像5: 焼き梅干しの作り方

器に梅干しを入れ、ラップをかける。500Wで1分ほど温める。

画像: この記事は『壮快』2020年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年8月号に掲載されています。

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